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第8話 ちゅーしたん!?おみゃーちゅーしたん!?(中々編?)

「…なんでいるんだ…?」


祭りの喧騒が聞こえる。


海は今、駅前の商店街の入り口にいた。


海は昨日、緊張しすぎて寝不足気味だ。

そして不機嫌でもある。


「えへっ」


この男、耕一がいるからだ。


「えへっじゃねぇ!」



10分前。

海は待ち合わせに少し遅れて到着した。

すると、集合場所に綾、綾の女友達、女友達の男友達、そして耕一が楽しそうに談笑していたのだ。(“ちょっとうんこしてくる”なんて言って外に出たから、どうも怪しいと思ったらこれか……)


海は自分を含めて男女4人だったので、あわよくば、隙を見て綾と二人きりになろうと期待していたのだ。しかし耕一が来たことによって、別行動を取ったら絶対に耕一は海に付いていくだろう。


「まあまあ、海君落ち着いて?」


「そうだよ。お兄さんがいてもいいじゃない。」


「そうそう。」


「そうに決まっている!」


「兄貴が言うな!」


「まあまあ、海。どーどー」


「どーどー、じゃねーよ!」


「じゃあ何?ドゥドゥ?これで満足かこの野郎。」


「……なあ…楽しいか?」


「ううん、全く!」


「じゃあやんなよ!」


耕一がこう言うノリになると、意見を変えるのは不可能に近い。


海は諦めて、渋々耕一と行動することにした。



海達が商店街に入っていく姿を睨み付ける連中がいた。


「…チッ、なんで耕一さんがいんだよ。」


「どうします?川越さん。人数も多いし、やめますか?」


川越と呼ばれた男は、暫く不機嫌そうな顔をしていたが、思いついた様な顔をして、ニヤリと笑った。


「いや、関係ねぇ。やっちまおう。」


川越は他の連中に耳打ちをすると、不適な笑みをしながら、人混みの中に消えた。



海達は屋台で食物を買ったり、遊んだりして、祭りを楽しんでいた。

海はずっと綾を見つめていた。

それは、二人きりになるチャンスを伺っているのもあるが、7割は別の理由だ。


海は、綾の浴衣姿に見惚れていた。

淡い桜色の浴衣に白い肌が映え、艶やかな黒く長い髪を上げていた。

顔はナチュラルメイクをしているらしく、整った顔がさらに綺麗になっていた。


海が綾の事をずっと見つめていると、綾がその視線に気付き、顔を赤くさせてうつむいた。


「変…かな…?」


「いやっ…その…なんだ…」


海は頬をポリポリ掻き、不自然に横を向いた。


「…似合ってるよ。」


そう言った瞬間、綾の顔が笑顔で輝いた。


ドーンッ!


大きな音と共に夜空に光が上がった。


人々は皆、足を止めて空を見上げた。


「わあ…きれーい…」


綾も夜空を見上げ、花火を眺めていた。

海はその横顔をみて、鼓動が早くなっていく。


「…………。」


海が無言で綾と手を繋いだ。

綾は驚きながら、海の方に振り向いた。

綾の友達や耕一は、花火に見惚れ、二人の状況に気付いていない。


海がゆっくりと口を開く。


「……もっといい場所で見ねぇ?」


「……うん。」


海と綾は手を繋いだまま、商店街を出た。



ドーンッ!


水面に花火の光が映る。


「うわぁ!良く見えるね!」


「だろ?」


海は綾を海岸に連れてきていた。

二人は砂浜に腰掛けている。


(ふう…やっと二人になれたぜ……)


海は煙草に火をつけ、達成感に浸っていた。


いつもなら、綾が煙草を注意するのだが、してこない。

海は綾の方を見た。

綾は海を見つめていた。


「……フフ。」


綾は微笑みながら、海の肩に寄り掛かる。


「…俺…言いたい事があるんだ…」


海はこれまでに無い程、緊張していた。


「……何?」


綾は海の“言いたい事”がわかるらしく、海と同様に緊張していた。


「…俺、あんたの事が……」


海が綾の耳元まで近づく。花火はフィナーレらしく、夜空は光で包まれていた。


「俺、綾の事が…」



好きだ……


ドーンッ!



綾は赤くなりながら頷いた。


海が綾の肩に手をまわし、二人は見つめあった。


海が綾の顔に近づく。

綾は静かに目を閉じた。



ブルルッブルルッ


「…携帯、鳴ってるよ?」


「…………。」


(…本当にベタなパターンだな…)


海は携帯を取出し、画面を睨み付ける。

着信は耕一からだった。


ため息を吐きながら、通話ボタンを押して、耳に当てた。


「なんだよ?」


『海か!?大変なんだ!』


電話の耕一の声は焦っていた。

海は只ならぬ雰囲気を感じた。


「…どうした?」


「とにかくすぐ商店街の入り口に来てくれ!!」


耕一は半ば叫ぶように言うと、通話が切れた。


「ッ!…なんだってんだ…?」


「お兄さんから?」


「ああ。すぐ来てくれだってよ。なんだかヤバそうだ。行こう」


海が立ち上がり、綾を促すと、綾は残念そうな顔をしながら立ち上がった。


「続きなら後でしてやるよ。」


「なっ……ちがーう!!」


綾は海を追い掛けながら、海岸を後にした。



「………っ」


二人はこの状況に言葉を失った。


綾の友達、正確に言うと、綾の友達の男友達の顔面が異様に腫れていた。

顔の左側が大きく腫れ、所々出血やら内出血やらをしていた。

そして、腹も殴られたらしく、男は腹をおさえながらうずくまっていた。


「これは…」


「数人に拉致られて、やられたらしい。」


満身創痍の男にかわって、耕一が説明した。


「数人って、一体誰だよ?」


「そいつ等は…」


耕一は少しためらったが、海に促され、ため息を一つ吐いて、再び喋りだした。


「…そいつ等の中に川越って名乗る奴がいたそうだ。」



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