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第50話 人物紹介という名のネタ繋ぎ

斎藤政人ですはいどうも。


早速だが、今の状況について説明したいと思う。今俺は真っ白な部屋の真ん中にいる。壁も床も天井も真っ白。


自分はなぜか制服姿で、下は濃紺のズボン、上は白い長袖シャツを腕半ばまで折り込んで、裾はズボンの中という、いつものザ・俺だ。


なぜそんなところにいるのか?里奈に拉致られた?ざまぁ死んだ!


答えは否だ。


俺は本編に登場する斎藤政人ではない。さらに神に近付いた存在、斎藤・ネオ・政人だ。それだと長いからサイバーネオスティンガーマサトジェネリックって呼んでくれ!もしくはジェネリックでもいいぞ!


つまり今回は本編じゃないから、アウトどころかチェンジな事言っても全然オッケー!誰も止まらないよ!って感じのコンセプト。


今話はメインの登場人物にそれぞれ会って、会話しながら紹介したり、裏設定暴露したりと言った流れ。まあ大体おさらいみたいなモンだから、読み飛ばしてもらっても大丈夫だ。





いいかい?じゃあスタート!


と、いつの間にか足元に紙が。白いタイルに落ちているそれを拾い上げる。


ああ、まずは俺からか。なになに……。


斎藤政人。


本編の主人公。高校二年生。身長177センチの、体重68キロ。

目にかかる茶髪を適当に横にあしらった無造作ヘアー。二重まぶたの瞳からは生気が感じられず、いつもヤル気なく垂れ下がっている。左耳にシルバーの2連ピアス。昔は3連だった。

顔立ちは端正だが、なぜかモテない。同級生の女生徒いわく『彼は遠目から眺めていたいタイプ』らしい。

性格は非常に物臭。いつも楽な方へと進んでゆくダメ人間。だがシリアスシーンでは熱い場面もしばしば。

万年遅刻魔で、起きないときは何をされても起きない。克也は毎日電話しているが、里奈はとっくに諦めている。

さくらが好き。過去に告白しているが、返事はまだもらえていない。

口癖は「まあいいや」


ははっ、誰だよこのウンコ野郎!俺か!そっか!


しかし、改めて文にされるとひどいな……。ホントに主人公なのコレ?


まあい……別によろしいんじゃなくて!?次行こ……。


俺の目の前の壁から、白い扉が現れる。どうやら、もうここに用は無いみたいだ。


その扉のノブを持とうとした時、


「政人っ!ペットを忘れるなペットを!」


後ろから、今ではもう聞きなれた声が掛かった。


俺は振り返る。


そう、この小説中一番謎の生き物、カメの亀吉さんだ。


……なぜか、目線が俺と同じだった。


「って飛んでる!?」


白い天使のような羽をパタパタと動かしている。


「うむ、なんか念じたら生えた」


早速何でもありか……。


「というか、亀吉さんも付いて来ちゃっていいの?」


俺の頭の周りをパタパタ回り続ける亀吉さんに問いかける。つーかそれやめろうぜぇ。


「今回は本編ではないからな。みんな私の存在も知っているし、言葉を話しても平気じゃ。今回は政人のサポート役らしいからな」


そういうことなら平気か。じゃあ一応亀吉さんの紹介もしておこう。



亀吉さん。


メス。体長タバコの箱くらい。体重小石くらい。

俺が幼い頃から居た亀だ。昔過ぎて、どういう経路で亀吉さんと出会ったのかは全く思い出せないが、俺の記憶する頃からこの大きさだった気がする。俺が世話していたから、実家を出たときに一緒に連れてきたのだが……。

どういうわけか最近喋りだした。最初に発した言葉は「へけっ」。あの時は水槽と亀吉さんをくまなく調べたっけな……。

今では立派に会話をしている。声だけ聞いていると、妖艶な大人の女性だ。うっとりして目を開けるとカメ。このギャップがたまらない。がっかり感がたまらない。


「最後は褒められているんだかわからんな……」


「まあこんなもんだろう。そういえば一回亀吉さん視点の話があったよな」


「うむ。あの話で私の性格が知れたわけじゃが……あの話は今思い返しても最悪じゃ」


……なんだか、亀吉さんに睨まれている気が……。


「……いやあれは猫が「カタパルトスプラッシュ!」ぐはあっ!!」


こ、このカメ……みぞおちに突っ込んできやがった……。


「ふう……。まあ、機会があればまた私視点もいいかも知れんな」


「そ、そうですね……」


「さて、私の紹介も終わった事だし、そろそろ次の扉へ行こうではないか」


亀吉さんに促され、ドアへ近付いて、ノブを回した。


そこは、長い一本道の廊下だった。ここも全部真っ白。向こうには次の扉が小さく見えた。


「向こうまで歩くぞ」


少し前を行く亀吉さんを追いながら扉へと向かってゆく。


「ここは次に登場するキャラクターの名台詞が聞こえてくる廊下じゃ」


「別に俺等、名台詞なんてなくね?」


「……そこにツッコんでくれるな」


と、どこからか声が響いてきた。



――政人?フッ、次の犠牲者は貴様か……。


はぁ〜。すっきりした。ん?政人、何かあったのか?


過去の人とボンクラ。いいじゃないか。共にいこう。


ヒーロー参上!……てか?――。



ああ、空気マンか。思いながら、扉を開けた。


ドアの向こうには……克也が居た。さっきと代わり映えしない部屋の真ん中には白い椅子が二つ。向かい合わせに置いてあって、片方は克也が座っている。ふと気付いたように、俯かせた視線をこちらに向けてきた。


「かっ、かっ……カメが飛んでる……っ!?」


って知らされてねえええ!


「オイこのヤロウ亀吉さん?彼、全然分かっていない様子ですけど?」


「そのようじゃな」


「……しゃべった」


克也はそう言ったっきり、フリーズしてしまった。


……今のうちに克也の制服姿でも描写しとくか。


耳に掛からない程度の黒髪に、フレームの無い銀の眼鏡。その眼鏡の奥は少し切れ長の二重瞼。鋭いというよりは精悍。精悍というよりは聡明。……今はぽかんと口が開いていて、とても聡明とは言えないが。

夏用の、ズボンと同色のブレザーのボタンはきちんと閉められ、これまた襟元まできちんと閉められたシャツに、歪みない赤いチェックのネクタイ。ズボンはもちろん正規のストレート。それに黒い皮ベルトを締めて。正に絵に描いたような模範生だな。


「……はっ」


と、ちょうど良く意識が戻ったようだ。


俺は空いている椅子に腰を下ろす。


「ああ、政人。俺は今、何か変な夢を見てしまった」


「夢ではない。現実を見るのじゃ。この見目麗しい甲羅をな!ババ~ン!!」


頭を抱える克也。わかる、わかるよ。


「まあ、ここ自体夢みたいなもんだし。今は諦めろ」


「そうか……そうだな」


理解が早くて助かる。こんな駄キャラに時間割いてらんねーしな!


んじゃ人物紹介。


柏木克也。


身長173、体重63。

少し痩せ気味。

表情はいつも優しい。

性格は温厚で真面目な優等生。秀才なのに俺達と同じ高校。他キャラのぶっ飛びっぷりに全くついていけてない。

読書が趣味で、隙あらば本を読んでいる。

俺とは小学校からの幼馴染で親友。里奈とは中学から。中学二年の時、一度引っ越すが、三年に戻ってくる。



……後は特になし。


「おいっ!?それはちょっと短すぎないか!?」


「特徴が無いことが特徴ってことだな。ていうか一太郎と被ってんだよ、メガネが」


「いいじゃないかメガネが二人居たって!二人ぐらいでちょうどいいじゃないか!え!?」


「あと俺がツッコミ役じゃん?いらないんだよねー、二人も」


「いいじゃないか二人で突っ込めば!二人で突っ込み合えばいいじゃないか!え!?」


おまえ必死だな!


「まあ、いらないキャラってのも個性なんじゃない?」


俺の言葉に大きくうなずく亀吉さん。そしてガックリうな垂れる克也。


「もう一思いに居なくなりたい……」


俺はそんな克也の鼻っ面に拳を叩き込んだ。


「ふがあっ!?」


目を白黒させて椅子から倒れる克也を叱責する。


「バッキャロウ!お前を必要としてる読者だって居るかも知れねーじゃねーか!」


まあ居ないと思うけど!


「そんなお前を想ってくれてる読者を落胆させるつもりか!?努力もしないでフェードアウトなんて許さねーぞ!」


まあ無駄だと思うけど!


「ま、政人……」


いつしか、克也の瞳にはやる気という名の炎が宿っていた。そんな克也に手を差し伸べて、体を起こす。そのまま俺達はがっちり握手し合った。俺は最後のキメ台詞を言う。


「克也の克はな、克也の克なんだよ!」


「……??……ああ、うん……」


よし!次行こう!


釈然としない様子の克也を置いて、俺は次の扉を開けた。


……また廊下だ。うわ、もしやこの繰り返し?


「めんどくさそうな顔をするな!ほれ、置いてくぞ」


再び先を行く亀吉さん。その尾を追いかける。


「政人、もう少し紹介を詳しくした方がいいんじゃないか?」


「え?でも克也のキャラは出し切ったと思うけど?」


「アレで全部……かわいそうにの……」


カメに哀れまれる男、柏木克也。と、なんか聞こえてきた。



――ゴチっすー!


やったー!綾。映画代は政人持ちだって!


ん、このパソコンもらうね。


何?いったらなんかくれんの?


あ、すいません、スペシャルパフェ一つ。政人、ゴチね。


はいはいごちそうさま。政人もごちそうさま――。



……今思えば、こいつにいくら貢いだのだろう……。


扉を開ける。先程の克也と同じように、里奈が座っていた。


里奈は扉を開けた俺にすぐ気付いて、優しく微笑みながら、緩やかに手を振ってきた。


「政人さん、御機嫌よう」


キャラ作ってやがる!でもさっきの廊下でお前の本性バッチリ晒されてるからね!


俺は黙って椅子に座る。俺の沈黙にも微笑みを絶やさず、小首を傾げた里奈。俺は口を開いた。


「物欲女」


バキッ


「やっぱりね!」


里奈は穢れを知らない微笑みを崩して、半眼で俺を睨んだ。


「あんたねぇ……せっかく人が高感度上げようと思ってんのに」


大丈夫!バッチバチ下がってるから安心して!


「ってあれ?里奈、お前この空飛ぶカメ見えてる?」


俺の隣でプカプカ浮かぶ亀吉さんに親指を向ける。


「見えてるし知ってるわよ。ねーカメックス」


「ねーって私カメックス!?」


じゃあ知らなかったのは克也だけか。


「ほら政人、そんなことより私の制服。説明するんでしょ?」


おっと、そうだったな。


紺色のスカートは太もも半ばまで上げられていて、膝下の紺色ソックスに、こげ茶色のローファー。上は薄いピンクの長袖シャツ。俺と同じように腕まくりして、裾はスカートの中。ワイシャツのボタンはいつも二個空いていて、そこに蝶ネクタイが緩くぶら下がっていた。


「ウチの制服可愛くないのよねー」


「まあその分校則が緩いから、改造し放題だけどな」


[海ッチなんて銀髪ツイストパーマだもんね」


あれはやりすぎだと思うが……。主に頭皮に対して。


よし、じゃあ次は人物紹介だな。


渡辺里奈。


慎重155。体重43。スリーサイズは……。


「……なによ」


……まあそれなりに。スレンダーな方だと言っておこう。


胸に掛かるくらいの茶髪をいつもヘアピンやらダッカールやらで上げている。前髪とサイドの髪だけは下げている。なんでも小顔効果があるとか。

顔はパッチリした猫目で中々整っているが、無表情だとなんだか怒っているみたいで、男子はあまり近寄らない。愛想がないんだな。

性格は少しルーズで、価値観は俺と結構似ている。人に命令されるのが大嫌い。

物欲が何より強い。何か見返りが無いと腰が重いが、代わりに見返りがあると何でもこなす。橋河ライダースと戦った話ではピチピチナース服も着た。でも、そんな性格も女友達には例外のようだ。

中学二年の時、俺とギャングの事で大喧嘩。克也が帰ってきて仲介するまで口も聞かなかった。


「ん、こんぐらいか」


「政人と喧嘩したときは大変だったわ、ホント……」


……主に俺がな。里奈の家に呼ばれて喧嘩したのだが、里奈がわんわん泣きながら家の物手当たり次第投げてくるわ、里奈の泣き声聞いて両親が血相変えて乗り込んでくるわ……。俺は血塗れになりながら帰ったっけな。


里奈を半眼で睨むと、いつもは飄々とするのに、珍しく気まずそうに目を逸らした。


「だって……政人が『俺にもう関わるな』とか言うんだもん……」


う……。あの時はかなりヤバイ事ばっかやってたから、俺なりに里奈を心配したのだが……いや、言い訳はよそう。


「まあ、今は仲良しこよしって事だな!」


「いや私は嫌いだけどね」


これですよ!なにこれ!?ツンデツン属性!?いらねーよそんなぬか喜び!


「……綾ちゃんとは高一から友達だったそうな」


「うん、そう。なんか試験日の前日に街でナンパされてたのを助けたのよ。そしたら試験日に会ってさ。そこからの付き合いね」


なんかベタベタなラブコメの出会い方だな。


「あと、妹が一人居るよな」


「奈菜ね。今中学二年生よ。……ねえ、私自身に対する質問は無いの?」


憮然としながら俺を睨んでくる。ここで「ねーよばーかわーい!」なんていったら確実に殴られるな。俺は学習したぜ!


「そういえば里奈って料理上手だよな、意外に」


バキッ


とまあ結局こうなるんですけどね!


「まあね。子供の頃からやってるし。弁当も自分で作ってるしね」


意外だろ?里奈はこういうのめんどくさがると思ってたのに。


「今度里奈の家でメシ食わしてもらおっかな。奈菜ちゃんともしばらく会ってないし……ん?」


里奈が微笑みながら、俺に手のひらを差し出している。


「食材費二万円」


「たかっ!何買うつもりだよ!?」


「最近デジカメが欲しくてさー」


せめて食材を買って!?完全に無機物だからね!


「政人、そろそろじゃな」


頭から声が降ってくる。ってあれ!?このカメいつの間に頭に居たの!?


まあい……別によろしくてよ!?


「じゃ、また本編でね」


最後は含みの無い笑顔で、里奈は次のドアへ向かう俺に手を振って来た。いつもそうしてりゃモテんのに……。


ドアを開ける。……あれ、廊下じゃない。


先程と同じような四角い部屋には誰も居なかった。その代わりに、部屋の真ん中には俺の腰ぐらいの四角い灰皿が置いてあった。


「今回はここまでじゃな」


「あ、そうなの?続いちゃうんだ……」


「うむ、これからは十話ごとにこの続きじゃ」


「ああ、記念話のネタが切れたってやつか」


「……番外編でも、言って良い事と悪い事がある」


知ったこっちゃねーや!


俺はポケットからマイルドセブンのソフトを出す。そこから一本取り出して、愛用の銀色のジッポで火を付けた。


「じゃが、全員登場するまでこうこうせいが続くかどうか……」


……咳き込んでしまった。テメーの方が言っちゃいけない事言ってるからね!


「まあとにかく、今回はこの辺で。亀吉さん、次は?」


「うむ、綾と一太郎と海じゃ」


うわ、俺の嫌いな奴が二人も居やがる。でも綾ちゃん居るからいっか!


じゃあ皆、再びこの俺ジェネリックに会えるのを楽しみにしててくれ!


「亀吉さん。俺トイレ行きたい」


「ない」



つづく☆




べ、べつにネタが切れたわけじゃないんだからねっ!


というか、ホントに克也の紹介が少なすぎる……。まっいっか!

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