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第46話 シューマイの素晴らしさが分かるとてもいいお話

……で。美子と一緒に、友基の悲鳴が聞こえた場所を探しているわけだが……。


「多分上の階から聞こえたよな」


廊下を歩きながら、横に並ぶ美子に問いかける。え?急いだほうが良いって?大丈夫。あいつ豆乳飲んでるから問題ない。そんな気がする。


美子は一旦立ち止まり、目を瞑った。しばらくそうしてから、ゆっくりと目を開いた。


「3階の、2のAの教室」


「へえ、今のは幽霊の気配を探ってたのか」


「いや、目にゴミが」


「紛らわしいんだよ!なんか幽霊の気配とか言っちゃった俺恥ずかしい!」


とりあえず、3階の教室に向かうか……。



―――――。



「……誰も居なくね?なんでここって言ったの?」


「当て勘」


「しねぇぇぇ!!」


ギャアアアア――。


今度は下から悲鳴が。どうやら2階のようだな。


教室を出て階段を下りる。2階に着くと悲鳴は消え、静寂が辺りを満たしていた。


教室の数は10くらい。手当たり次第……はめんどくせーな。別に急ぎじゃないし。


「どうだ美子。今度はわかるか?」


「うん。まかせて」


そういうと、再び目を閉じる美子。


…………。


…………。


…………。


――ギャアアアア……


「あそこ」


「うんお前に頼んだ俺がバカだったね!」


悲鳴の聞こえた場所は、目の前の教室だった。


美子はもう無視して、教室の扉を開く。そこには……。


「ぎゃああああ!!」


教室の真ん中で、友基が宙に浮いていた。と思うと、すぐに地面に叩き付けられてる。今度は壁に、そして天井にと、何か見えない力に振り回されているようだった。


「あれ!?政人!グハッ!すごいよ!俺空を飛んでるよ!グフッ」


お前の頭も飛んでるよ。


「美子、どうなってんだこれ?」


美子は俺の手を握ると、教室の真ん中を指差す。すると、今まで見えなかったモノが、ぼんやりと姿を現わした。


黒い髪の、血に塗れた女生徒。


「こ、こいつって……」


「もともと保管室にいた幽霊。さっきわたしが逃がしちゃった」


段々はっきり見えてきた。すると、今度は声まで聞こえてくる。


「おほほほほ!これが私の力なのかあぁぁぁ!!」


こいつ絶対優等生じゃないよね!?


「……ぬん?誰だ貴様ら!」


あ、気付かれたみたいだ。


「貴様も……こうなれぇぇぇぇ!!」


女生徒はそう言うと、人差し指をこちらにビシッと向けてきた。


ってあれ?俺浮いてね……?


「って浮いてる浮いてる!!おい美子!助け……」


振り返ると、俺と同じように美子がふわふわ浮いていた。……ちょっぴり嬉しそうに。


「……わたし・いん・ざ・すかーい。ふふ」


「もうぜってー霊媒師じゃねーよお前!お前の特技なんてシューマイ蓋につけるくらいじゃねーか!」


「政人はギョーザ嫌い?なんで?」


「いつギョーザの話になった!?シューマイでもねーのかよ!」


「シューマイは私たちには勿体無いくらい崇高な物なの蒸した皮の中に詰まった溢れんばかりの肉汁にプリプリとした食感は他の食べ物例えばギョーザなどとは比較にならないいや比較する事さえもおこがましいほど……」


「滑舌の悪いおまえはどこいった!?しかもドサクサに紛れてギョーザけなしてるよ!?」


「……というようにシューマイの美点を挙げればきりがない。そんなシューマイを私は誰よりも愛している。そう、わたしはシューマイ大好きミコミコ霊媒師、みかみみゅっ」


「そこで噛んじゃったよ!シューマイの話はペラペラなのに自分の名前はグダグダかよ!」


「みかっみみかゅっ……みみかみみみみかみみみかかみみみかみみみかみ……」


クソッ。こうなったら自分で何とかするしかないのか……。


「おほほほ!叩きつけてくれるわあァァァ!!」


「まっまて!お前、こういうの探してなかったか!?」


「え!?それは……!」


手に取り出したのは、保管室で拝借しておいた、昔の教科書。女生徒が何年度かはわからなかったのだが、反応を見ると、どうやらドンピシャのようだ。


教科書に気をとられたのか、俺の足は地面に着いた。


その瞬間、一気に地面を蹴って、女生徒へと走り出す。


「うおおおお!」


「……え!?」


女生徒は猪突猛進する俺に気付いたがもう遅い!


その勢いのまま、俺は女生徒の腰めがけて、タックルをかました。


キリモミ状に一緒に転げまわる。そして、最終的に俺が馬乗りになった。


「しゃあああ!これで逃がさね……え?」


俺の下には、顔を真っ赤に染め(血じゃない)、恍惚の表情で横たわる女生徒。


「そんな……。お前を逃がさない、なんて……」


「ふえ?」


「政人って意外とクサい」


「ふええ?」


と、隣に来ていた美子が、女生徒の額にさっきの呪符のような物を貼り付けた。すると、女生徒の体が光に包まれていく。


「幽霊は自分の望みが叶わないと、どう頑張っても成仏してくれない。この人はたぶん告白が望みだった」


えーと、つまり俺、告白しちゃった?


女生徒の体はもう肩から上しかない。その表情は、とても安らかだった。


そして、完全に光となって、消えた。


どこからか、声が響いてくる。


――ありがとう――。


……ま、いいか。これで一件落着なら。


――天国で、待ってます――。


よくねええええええええ!!


「まって!もう一回お兄さんと話し合おう!?そうだ、ここに居るちっこい奴は!?こいつはすごいよ!長所を挙げたら多すぎて逆に何も思いつかないくらいすごいんだよ!」


「もういっちゃったみたい」


「…………」


さ、最悪だ……。


ふと地面を見ると、友基が逆立ちで頭をめり込ませながらピクピクしてた。はあ……まあいいか。こうして友基も無事(?)だったんだし。


「政人のおかげで早く終わった。ありがとう」


美子がそう呟いて、ぺこりとお辞儀をした。最初の挨拶といい、礼儀は正しいんだな……。


そう思いながら、苦笑しつつ言葉を返す。


「別に良いよ。お前の呪符が無かったら成仏しなかったわけだろ?おあいこだよ。俺もありがとうな」


「お礼にさっきのシューマイを」


「俺のありがとうを返して!ていうかまだ持ってたの!?」


美子がシューマイの入った弁当箱を差し出す。いや全ての力を開放してお断りします。


「大丈夫。なるべくきれいな物だけを厳選しました」


「なにその極限のおいしいとこ取り!?しかもばっちり真っ黒じゃねーか!いらねーよ!お前食えよ!」


「それも大丈夫。わたしには、ほら、新しいのが」


「そっちをよこせぇぇぇぇ!!」


と、そこへ今起きたらしい友基が来た。


「いってぇ……。なんか俺夢でスーパーボールになってたわ。あれ?なにこれおはぎ?くっていいの?超うまそう!」


ああ、こいつの視力は無に等しいんだったっけ。


「ああ、友基。“よし”だ」


「うおおお!もぐもぐもぐ……ゲホッうめええっ!ゲホッこのおはぎ新しい味だね!」


「この人……すごい」



その後、友基は一晩中腹痛に悩まされたらしい。



そして結局うんこオチ。物語に統一感を求めた結果です。決してうんこネタが好きな訳ではありません。


うんこわーいわい!

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