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第41話 40話記念!一泊二日バーベキュー!……できるのか?

川辺に腰を下ろして、見上げる夜空。雲一つない夜空には、無数の光が散りばめられ、その中でも一際大きな光――満月に俺は吸い込まれてしまいそうな錯覚をおぼえる。


耳からは川のせせらぎ、鈴虫の羽音、森の葉が擦れあうざわめき。まさに自然の音楽だ。

時折流れてくるそよ風は体を程良く冷やし、この気持ちよさにこのまま眠ってしまいそうだ。


星空のキャンパス。

自然の音楽。

そよ風のクーラー。

そして隣には――愛しのマイハニー一太郎たん。


「ああ、一太郎たん……こんな星空のキャンパスで、君という可憐な美少年と過ごせるなんて夢のようだ」


「ええ……私もよ。愛しの政人たん」


俺のマイハニーは憂いを帯びた表情で見つめてくる。そのメガネの向こうでは、きっと輝いた瞳があるに違いない。


俺は一太郎たんに顔を近づけ、ささやく様に語りかけた。


「一太郎たん。君の輝く瞳が見たいんだ。その宝箱という名のメガネを外して、俺に宝石という名の瞳を見せてくれないか……?」


マイハニーは少し間を置くと、微笑みながらこくんと頷いた。


俺はマイハニーの透き通る肌を傷付けないように、優しくメガネを外す。



そこには……本当に輝くような瞳があった。


息を飲む。綺麗だった。本当に綺麗だった。


「政人たん……」


マイハニーはその輝く瞳を瞼で隠して、唇を少し尖らせた。


言わずもがな、何を求めているのかくらい分かる。


俺は一太郎たんにゆっくりと顔を近付けた。そしてゆっくりと瞳を閉じる。


ゆっくりと。そう、ゆっくりと……。



そして俺達は……熱いキッ

「うわあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!……あ?」




目の前に広がるのは星空……じゃなくて白い天井。紛れもなく俺の家の天井。


「ゆ……夢……か」


言葉にして、ようやく認識する。いままで見た中で上位に食い込む程の悪夢だ。

鼓動も抑まり始め、体を動かそうとした時、思うように動かない事に気づく。


そういえば昨日、友基が『絶対朝起きれないから、俺を家に泊めて、俺を起こせばそれでいいんじゃない?』とか上から目線の言動で無理矢理泊まって来たな。寝相の悪い友基の事だ。多分寝ぼけて俺のベッドに入ったに違いない。


絶対コイツのせいで悪夢を見たんだ。


俺は視線を下に落として口を開く。


「てめぇ友基コノヤロ……う……」


俺の胸でスヤスヤと寝息を立てる、赤みがかった髪の少女。

華奢な肩を縮みこませ、手を口辺りに持って行き、うつ伏せになっている。


「ん……」


体勢が気に食わないのかもぞもぞと彼女は少し動く。

さすが女性と思わせる柔らかい感触。そして俺の腹辺りに感じる更に柔らかい……――。



俺は早速、今日二度目の悲鳴を上げるのだった。



―――――。



「ったく……。なんで俺のベッドでさくらが寝てんだよ」


「なによ〜、起こしてあげようとしたんでしょーっ?」


「じゃあなんでおまえも寝るんだよ!?」


「だって政人があまりにも気持ちよさそうに寝てたから……。ムカつくから私も寝るっ!みたいな?」


「なんでそこでムカつくの!?起こしちゃ悪いとかじゃないの!?」


リビングで言い合う俺達。さくらはソファでコーヒーを飲みながら、俺はせわしなく出かける用意をしながら。


えっと、次は歯磨きだな。


俺は台所へ向かい、マイ歯ブラシを取り出して歯磨き粉をそこにウニッと出した。それを口に運ぶ。


あっそうそう。今日こそは40話記念でバーベキューですから。


「はくらー、おまへ友基ひってるー?」


背中のリビングのソファにいるだろうさくらに向けて、少し大きめの声で話す。


「ああ、友基はなんか『待ち合わせに遅れちまうぜ〜!俺様としたことが〜!』とかいって私に政人をまかせて行っちゃったよ?」


おまえ友基のマネ似てるね。……ん?おくれちまう?


「俺は歯ブラシをくわえたままふと振り返り、リビングの壁掛け時計を見た」


「なんで口に出してんの?というか歯ブラシくわえたままなのに滑舌すごくいいね」


「というか遅刻じゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!」


「というか……えっ!?ホントだ!」


というか気付け!


待ち合わせは9時に地元の駅。ただいま時刻9時ピッタリ。駅まで歩いて10分。俺今パンツ一丁。


「やべぇ!荷物は用意できてるから出るぞ!」


「えっ!?服着ろバカッ!」


「バッカ、服着てんじゃん。この世にも珍しい透明の服をよ。王様の耳はロバの耳」


「なんか話ごっちゃになってるよ!いいから早くして!」


俺は俊足で服を着て、あっ、このコーデはちと微妙だな〜。こっちはどうだろう。うーん、これじゃ山道歩きにくそう。あっ、じゃあ



メキャッ



「早くしてね」


「はい」


ようやく用意の出来た俺達は、バタバタとアパートの階段を降りる。


あっ、そういえばこの前やっと原付直ったんだった!


「さくら!原付で行くぞ!」


「えっ、やだよ。私今日スカートだし」


「大丈夫大丈夫。誰もおまえのパンツなんて見ないし」



メキュッ



「ああ。みんなおまえのパンツに釘付けさ」


俺達は駅へと走って向かっていった。



―――――。



「政人さん遅いですねぇ……」


「そうだね……」


心配そうな表情で、ホームへの階段を見やる充と満。


こうこうせい御一行は駅で政人達を待っていた。時刻は9時を20分ほど回った所。そろそろ皆も痺れが切れてくる頃。


特に里奈。


「もうおっっっそいっつーのっ!!」


里奈は両手両足をジタバタさせ、体全体で感情を表した。側にいた克也はそれを慌てて止める。


「どうしたんだろう……政人さんはともかく、さくらさんがついてるのに……」


何気なく政人をけなす綾と、鼻で笑うだけの海。


「政人は電話出ねぇし、さくらにもしてみっか」


友基は携帯を耳に当てがい、そこから聞こえるコール音に耳を澄ます。



――その頃。



「あれっ?」


なにかに気付いたのか、俺の横を走りながらバックをまさぐるさくら。てかこいつ器用だな……。前見ろよ。


「あっ、政人の家に携帯忘れたっぽいかも!」


「おまえバカだな〜。戻る時間なんてねぇぞ。もうすぐ駅着くし」


「ええ〜?じゃあ政人誰かに電話して謝っといてよ」


ああ、そういうことね。


俺はいつも携帯を入れている右のポケットに手を入れる。……しかし中身は空っぽだった。


「やべ、俺も忘れたくせぇ……」



――10数回目かのコールを聞き終えると、友基は諦めたように携帯を降ろし、ため息を吐いた。


「ダメだ。出ねぇ」


「ボクがバイクで迎えに行こうか?」


「ハルちゃんはそんなんしなくていいよ〜」


覇気の無いデレッとした顔で横から抱きつこうとした友基に、ハルは友基の方すら見ずに無表情でカウンターぱんちをお見舞いする。


「どうする?先に行くか?」


「でもあのバカ置いて大丈夫かなぁ〜……」


克也と里奈は先に行くか考えるらしい。


「いえ、政人さんならこのバーベキューの主催者だし、場所なども詳しく知っているはずです。先に向かっても支障はないでしょう」


そして場を仕切るのは……何故か一太郎だった。


皆は一太郎に促されて、電車へと乗り込んでゆく。


「クックック……政人さんがいなければ僕が主人公……」


一太郎の誰にも聞こえない独り言を残して、電車はホームから離れていった――。




「はぁっはぁ……やっと着いたぞ……」


ホームの階段を上りきり、膝に手を付いていた俺は爽やかに顔をあげた。


「やあみんな!遅れてすまないねって居ねーしっ!!」


後から登ってきたさくらも、その光景に唖然とする。


いない。どこを見回してもいない。


「もしかして……行っちゃった……?」


誰に言うでもなく呟くさくら。



これからどうなってしまうのか。無事にみんなと合流出来るのか。おやつにバナナは含まれないのか。今日録画予約したガキ使はきちんと録画出来るのだろうか。さっき走っていた時に柔らかい物を踏んでしまったのだが、これはもしかしたらもしかするのだろうか。



様々な憶測が交錯する中、俺達はたた呆然とするしかないのだった。





……まあ普通に電車で追いかければいいんだけどね。


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