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第40話 40記念?ってまったくグダグダじゃねぇか!



あ……暑い……。



目が覚めると、室内はあり得ない気温になっていた。


寝た体勢のまま、壁掛け時計を見ると、午前9時を少し過ぎた所。いつもの俺が起きる時間じゃない。


俺は汗で張り付く部屋着とベッドのシーツを睨みながら、体を起こした。


あっっっつー……。暑すぎてでんぐりかえってそのままの勢いで土下座するくらい暑い。いやしないけどさ。


うなだれながら、タイマーで消えていたクーラーの電源をもう一度つける。クーラーから出る風が気持ちいい。


あ〜すずし。涼しすぎてでんぐりかえってでんぐりかえってでんぐりかえって調子乗りすぎてタンスの角に鎖骨辺りを強打して死ねっ!てくらい涼しい。いややらないし死なないけどね?


室内の温度が下がり、ようやく心持ちも落ち着いてきた。


みなさんご機嫌よう。毎度おなじみの政人様だよ!えーと、今回は40話だっけ?


……ん?40話?






って40話じゃん!!





『40話記念。奴らは川からやってくる!笑いあり涙ありポロリありシッポリありパシリありなんでもありの2日間!こうこうせい御一行1泊2日バーベキュー大会!』



ミッション1『強制召集』



「あ、もしもし!友基?いまからバーベキュるんだけどさ〜」


『は?無理無理!俺は今ハルちゃんと峠を流してんだよ!じゃーな!』


プツ、ツーツー……


…………。




「あ、もしもし?海?いまからバーベキューするんだけど行かね?」


『……俺は今綾と遊園地にいる』


…………。


「しねぇぇぇっ!!」


プツ、ツーツー……




「あ、もしもし?充?いまからバーベキューするんだけど別に任意だけど行かないとか言ったらおまえの頭がパプリカみてーに面白くなるんだけど?」


『い、いきなりですね。しかも頭がパプリカってどういう状況ですか……。いや、でもすいません。僕、今満とショッ』


「しねぇぇぇっ!!」


プツ、ツーツー……


……あれ!?誰も来ねーじゃんコンチクショウ!てか充は最後になにを言おうとした!?満と……シッポリか!?シッポリかコノヤロウ!いや、でも『ショッ』って言ってたな……。




ショッポリかコノヤロウ!



ミッション2『材料収集』



今俺がいる場所はホームセンター。とりあえず品物を先に集める事にした。


必要なものをカートに入れて、レジに並ぶ。


「お次の方どうぞー」


レジのお姉さんの声。おお、俺の番か。


お姉さんはカートに入っている品物に次々とバーコードを当て、小物は袋に入れるなどテキパキと作業をこなす。


全ての品物をカートに戻すと、お姉さんは口を開いた。


「えーと、お会計1万と6000円になります」


た……足りない。少しどころか1万6000ガッツリ足りない。てか財布にツタヤカードしか入ってない俺はここになにしにきたんだろうか?


いつまでも財布を見ながら固まっている俺を、お姉さんは不思議そうな顔で見つめる。


ええい、こうなりゃ裏技じゃっ!


俺はとっさにお姉さんの手を掴み、顔を近付ける。


「お姉さん。俺が本当に欲しかったのは、こんなホームセンターなんかで買えるような品物じゃない。そう、お姉さんの輝く笑顔さ。惚れた。惚れたよ」


「え……えっ!?」


お姉さんはみるみるうちに顔が真っ赤に染まり、助けを求めるように周囲をキョロキョロと見回す。


「お姉さん、こっち向いて」


「え、あの、はい……」


困ったように、遠慮がちに俺を見上げるお姉さん。しかしその瞳は、やがてしっかりと俺の目に吸い込まれいった。


よっしゃあ!堕ちた!


「俺と……」


「……はい……」


惚けたような表情のお姉さん。


「俺と、夜のバーベキュー……しないか?」


「は?いや無理」


無表情のお姉さん。


「え……?」


「はいはい、会計1万6000になりますよ。早くしてよ、後ろ詰まってるんだから」


「え……あの……うわぁぁぁぁんっ!」


やりきれなくなった俺は品物の詰まったカートを掴み、全力で外へと走る。


「き、きゃあ!誰か!盗人よ〜っ!」


お姉さんの悲鳴にすぐさま駆けつける屈強な警備員達。


俺はあっさりとその警備員達に捕まった。


「やめろ〜!はなせ〜!俺は政人様だぞ〜!俺がお腹いっぱいだったらおまいらなんか上腕二等筋をムキッてさせるだけでたおせるんだぞ〜!いやごめんなさいごめんなさい!つれていかないで〜……――。




ミッション3『亀吉野郎』


「ひっぐ……えっぐ……」


嗚咽混じりに自宅のドアを開ける。


「ど、どうしたっ?政人」


水槽辺りから聞こえる声。この少し低い、独特のお姉さんの声は亀吉さんのものだ。最近はもう亀が喋る時代なのかな、ぐらいに思って諦めてる。


俺は水槽の前で正座して、亀吉さんに全てを話す。


「ひっぐ……あのね、お姉さんが1万6000円でね、ツタヤカードでね、夜のバーベキュー無理で警備員が上腕二等筋ムキッて殴ったぁ〜」


「そうか、風俗でお姉さんが1万6000円だったが、財布にはツタヤカードしかなく、夜のバーベキューぷれいも断られ、結局は黒服につまみ出されたのじゃな」


……まあ、あながち間違ってないかな。


「気に病むな。人生は長い。そんなこともあろう。よしよし」


優しい口調で俺をなぐさめる亀吉さん。


…………。


「亀吉さん」


「ん、どうした、頼み事か?仕様のない奴じゃ。なんでも言ってみろ」


「……俺と、夜のバーベキュー行かない?」


「は?いや無理」


俺は無言で水槽の両端を掴む。そして左右に揺らした。最初はゆっくりと。だが徐々に早く……。



……そして強く!!


「おーらオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ悟空!よろしくな!」


「にぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……――。




ファイナルミッション『最終宣告』



時刻はすでに昼過ぎ。今日バーベキューをするのならもうこの時間はギリギリ。これが最後のチャンスだろう。


俺は高鳴る鼓動を押さえ、通話ボタンを押した。


「あ、もしもし?克也?今からバーベキューするんだけど、行かね?」


『え?いや、悪い。今里奈と図書館で宿題を片付けてるんだ。ようやく里奈がやる気を出したところで』


「ところでしねぇぇぇっ!!」


プツ、ツーツー……


…………。



「あ、もしもし?一太郎?おまえ今なにやってんの?」


『え、いま家で暇してますけど』


「しねぇぇぇっ!!」


プツ、ツーツー……


誰もいないじゃねーか!てかみんな見事にカップル成立してね!?俺は亀とでも戯れてろってかコノヤロウ!!


その時、俺の携帯が震えた。同時に鳴る着信音。


誰か来てくれるのか!?


俺は歓喜のあまり携帯を落としそうになるが、焦る気持ちを押さえ付け、携帯を開く。



ディスプレイには、『一太郎』の文字。


…………。


通話ボタンを押す。


『も』

「しも死ねぇぇぇっ!!」


プツ、ツーツー……


がっくりと肩を落とし、諦めて携帯を放り投げようとした時、再び着信音がなった。


速攻で通話ボタンを押す。二の次は言わせねぇ。


「も」

「うあかん!うちもうあかんしねぇぇぇっ?え?」


電話越しに聞こえた声を違和感を覚え、耳から離してディスプレイを見ると知らない番号。しかしその声にはしっかりと聴き覚えがあった。


再びゆっくりと携帯を耳に押し当てる。


『……政人、どうしたの?……まあ、いつもの事だけどさ』


「さ……くら。か……?」


『はいはーい、私はさくらですよー』


俺は真っ白になっている頭をフル回転させて、言葉を紡ぐ。


「な、なんの用だよ。てかなんで俺の番号知ってんの?」


「番号は友基に教えて貰ったの。で、用件は〜……』


少しの間。そして、さくらの声が頭に響いた。


『政人いま暇?遊びに行かない?』





キターーーー!!


キタ!これキタ!いんじゃん!俺にはさくらがいんじゃん!


「さくら!俺とバーベキュー行かね!?」


『え?うん、別にいいけど……二人だけ?』


「もう人数なんて関係ねぇ!夜のバーベキューだよ夜の!」


『な、なんかやらしいねそれ……』


「よっし!じゃあ早速銀行いって金降ろしてもう一回ホームセンターいって〜♪」


『あ』


「ん、どうした?……ああ、金なら気にすんなよ!全部俺にまかせ」


『雨降ってきた』





…………。





「しねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」



プツ、ツーツー……


毎度どうも。最近『あちー』と『ねみー』と『投資信託』が口癖のMCおもむろです。あ、次回はちゃんと40話記念なのでご安心を。早速プロフィールいきましょ。赤木一太郎。身長160。体重48。チャームポイントは分厚いビン底メガネ。克也は目の敵。こんぐらいですかねー。最初は克也をライバル視しているガリベン君ってだけだったのに、最近では濃っいーイジられキャラになってますね。毎回酷い思いをします。たぶん政人よりも酷いです。そんな可哀想な奴なのに、無性にムカつくのは僕だけでしょうか。なんか書いててイラッときます。というかぼーっと執筆してると、必ず一太郎が登場してます。あれ?俺、まさか……一太郎が、好……き……?

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