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第36話 ナンパ大作戦

「うみだな!政人!」


「そうだな!友基!」


「ところでなんで俺達は海にいるんだい!?」


「わかんね!」


っちゅうワケで、今回、俺達は海にいる。

理由なんていらない。男が海に行くのに、理由なんていらねぇんだ。


……まっ、実際は暇だから来たんだけどね。他の奴らは忙しかったりデートだったりかったるかったりで来なかった。


季節は夏。学生は夏休み。海は人だらけ。


俺達はすでに水着に着替えている。膝下まである一般的な男性用水着だ。


「おい友基!海って言ったらやっぱり……」


俺と友基は目を合わせ、互いに笑う。


「ナンパだろ!」

「水着のお姉さんだろ!」



「「えっ!?あっいや、それもアリだな……」」


今回はなんだか妙に気の合う俺達は、水着のお姉さんをナンパする事にした。


俺達は海岸を見渡す。


……おっ。


「友基、あのお姉さんなんかよくね?」


「おう、そうだな!俺なんも見えないけど!」


だから眼鏡をしろ!


「おっしゃ!まずはこの俺様が実力を見せてやんよ!」


おっ、なんか自信ありげだな。よし、こいつにまかせてみるか。


俺は自信満々の友基を、少し離れた所から見守る事にした。



『友基の場合』



友基がお姉さんに話し掛ける。


「ねぇねぇお姉さん。あっちでスイカってあだ名の俺のダチが待ってんだけどさ。そいつを一緒に割らねぇ?」


こいつどんだけ俺をけなしてんの!?俺はスイカ役かよ!


「私、スイカよりドリアン派だから」


ドリアン派!?そんな派閥ねーよ!


くそ、失敗か……。よし、次は俺がいってやる!



『上から読んでも下から読んでも政人様の場合』



俺は歩いてくるビキニのお姉さんに話し掛ける。


「ねぇねぇお姉さん。向こうの海の家でメシ食わね?俺が奢るよ」


うんうん。我ながら中々のセリフだ。


「私、海の家より牛の家のほうが好きだから」


どこの家!?


「あ、牛肉の食える所?そんならいいとこ知ってるよ」


「違います。生きた牛のいる家です」


だからどこの家だよ!?そんな家ねーよ!


お姉さんは毅然とした態度で立ち去っていった。


はぁ、ダメか……。


「おい政人、おまえダメ!なってない!」


「何がなってないだよ!おまえなんてドリアン派って理由で断られたくせによ!」


「うるせー!もっかい俺にやらせろ!」


はぁ、しょうがねぇな。



『ドリアン派にナンパを断られた友基の場合』



「ねえねえお姉さん。あっちでドリアンってあだ名の体も言葉もくっせぇ奴がいんだけどさ。そいつを一緒に割らねぇ?」


そのセリフ失敗だよ!?さっきの出来事は教訓にならないよ!?しかも最後は結局割ってるし!


「私、向こうで硫黄のように臭い彼氏が待ってますから」


彼氏の方がすごかった!


「おいおいすげーな!それホントかよ!」


「はい、ホントに硫黄のように臭いんです。卵の腐った臭いがして、黄色と白が混ざった感じの色で、液体状なんです」


それもう硫黄のようにの『ように』いらねーよ!純度100%の硫黄だよ!


「まじかよ!それって人間?彼氏の名前は?」


「硫黄です」


硫黄なんじゃん!彼氏でもなんでもねーじゃん!



……ダメじゃん!


こうなったら二人で行くか……。



俺は二人組のお姉さんを見付け、話し掛けた。


「お姉さん、ナンパされてみない?」


二人組は俺達を見定め、笑顔でうなずいた。


「うん、いいよ。お兄さん達カッコいいし」


……よっしゃァァァ!


「じゃあ、海の家でなんか食って、それから遊びますか!」


「「うんっ!」」


「まてまてまてーぃ!」


お姉さん二人組の後ろから掛かる声。そこには男二人組がいた。俺達と同い年くらいだ。


「このお姉さん達は俺等が最初に見つけたんだ。だから俺等と遊ぶんだよ!」


その言葉に友基がすぐさま反応した。


「あ?テメー等はお呼びじゃねぇ!」


向こうの喧嘩っ早そうな一人の表情が変わる。


「なんだテメー!やんのかオイ?」


「上等だオラ!ベッコベコにしてやんよ!」


二人が睨み合う中、俺と向こうの一人のため息が重なった。


そいつと目が合う。そいつは呆れた表情で肩をすくめていた。なんだかこいつとは気が合いそうだ。


「ねぇ、私達はどっちでもいいんだけど。どっちにするの?」


「待っててお姉さん!いま俺様がこのザコをやっちゃうから」


「ア!?やられんのはテメーだろうがボケ!」


ゴゴンッ


俺と向こうの奴が、睨み合う二人の後頭部を殴り、それによって前のめりになった二人は互いに額をぶつけ合った。


「あっはぁぁぁぁ……」


「ふぉっほぉぉぉい……」


殴られた二人は頭を押さえながら屈み、肩を震わせる。


「友基、れでぃの前で暴力はよろしくないな」


「そうそう、ここはさわやかにスポーツでケリをつけよう」


スポーツか……まぁ、それでいいか……。


「ふっふっふっ……政人、こんな奴ぐちょんぐちょんのにっちゃにちゃにしてやろうぜ」


おまえなんか生々しいからやめて。


「はっはっはっ……桂吾、こんな奴目をつぶってても勝てんよな?」


「いや、さすがに目を瞑ってたら勝てないんじゃない?」


向こうの二人も俺達と同じようなやりとりをしている。


あ、そういやまだ名前聞いてなかったな。


「おまえ等、名前は?俺は政人だ」


「……俺は友基」


友基は喧嘩ができなくてふてってしまっている。


「あ、俺は正樹まさきってんだ。政人だっけ?おまえは良い奴そうだな。このチビと違って」


短髪で活発そうな正樹の発言で、再び友基と睨み合う。


……もういいや。ほっとこ。


「俺は桂吾けいご。よろしく」


桂吾はさわやかに笑いながら俺に握手を求めてきた。


「え?あ、はい」


なんだかわからないまま、俺は差し出された手を握ってしまった。なんだか独特のペースを持った奴だ。


「じゃあ、私達はあっちの海の家で待ってるから。終わったら呼んでね」


お姉さん達はそう言い残して、海の家へと歩いていった。


なんだか面倒な事になったけど……勝ったらお姉さんなんだ。やるしかないな。


「じゃあ、何のスポーツをやろうか?」


桂吾が周りを見ながら聞く。まだこいつも種目までは決めてなかったみたいだ。


友基はすぐさま手をあげた。


「アレだ、アレにしよう!ほら、相手の顔面殴ったり、蹴ったりするやつ!」


喧嘩じゃねーか!


「ボールとか無いし、ビーチフラッグとかでいいんじゃないの?」


俺が適当に提案すると、みんながうなずいた。


「ああ、いいな、それ」


「うん、じゃあそれで決定だね」


「政人、ビーチフラッグってあれだよな?なんか相手の顔面殴ったり蹴ったりするやつだよな!」


一人勘違いしてる奴がいるけど無視しとこう。



―――――。



俺達4人は旗代わりの木の棒に足を向け、寝そべっている。その木の棒は30メートル先に置いた。


審判は道行く若者に頼んだ。そいつが手を上げる。


「行きますよ〜、レディー…………




ゴー!」


その声が聞こえた瞬間、俺は全身に力を込めて飛び上がった。


「よっしゃあ!やってやんぜ!オラァッ!」


バキッ


「いてぇ!テメーなにしやがんだ!」


勘違いで正樹を殴った友基達の喧騒を背中で聞きながら、俺は更に加速していく。


横をみると、桂吾は俺の真横を走っていた。

木の棒までは10メートルくらい。これはとり方できまるな……。


3メートルまでに近づいた所で、俺は態勢を前にして、頭から突っ込んだ。


「うおおっ!」




浜辺の砂が舞う中。



……俺の手には木の棒。


「よっしゃあ!」


俺は思わずガッツポーズをする。


「速いなぁ。負けちゃったよ」


桂吾は腰に手を当てながら、残念そうな顔をする。しかし、あまり悔しそうじゃない。たぶんナンパも正樹が勝手にやったんだろう。


後ろをみると、友基達はまだ揉め合っている。


「ハァ、何やってんだあいつら……もういいや。桂吾、俺達でお姉さんと遊ぼうぜ」


桂吾はきょとんとしている。


「え……?でも、いいの?」


「いいのいいの。あいつらはお姉さん達よりも喧嘩が好きな硬派な人なんだよ」


「ははは、きっとそうだね、じゃあ俺達で行こうか」


この適当な感じ。ホントに気が合いそうだな。


俺達は意気投合しながら、お姉さん達の待つ海の家に向かった。




「はっはっはぁっ!」


海の家の前まで着くと、中から男の高笑いが聞こえる。

不審に思いながら中に入ると、そこには……


「あぁ!一太郎!」


高笑いの主は一太郎だった。さっきのお姉さん二人を両手に従えて、成金並の邪悪な笑みを浮かべている。


「おや、これはこれは……政人さん。海というのは最高の一言に尽きますねぇ」


一太郎は両側のお姉さん達の頬にキスをする。


「きゃっ!もう、一太郎様ったら」


「はっはっはぁっ!ドンペリじゃあ!ドンペリを持って来い!」


なんかこいつやりたい放題だな……。


「一太郎様、ドンペリですか!?そんなにお金あるんですか?」


「よくぞ聞いてくれた!私は金も女も手に入れた!その訳はこれ!トルマリンパワー眼鏡!これをつけたその日から、もう人生の勝ち組ですわ!いまならトルマリンパワーレンズもついてて……ん?どうしたんですか?」


俺と桂吾は一太郎の前に仁王立ちする。


「一太郎様ぁ……そんなのはどうでもいいんだけどさぁ、そのお姉さん、俺達と約束してたんだぜ?」


「横取りはいけないよ?一太郎様?」


「え……?なんで二人とも拳を振り上げてるんですか……?ちょっとま……ぎゃあぁぁぁぁぁ……」


その日、ビーチに一太郎の悲鳴がこだました。



その後、未だに喧嘩している二人を放っておいて、俺と桂吾は海を満喫した。




――夜の浜辺。




「ハァッ……ハァッ……くそ……」


バタン……


「……よっしゃあぁぁぁ!ビーチフラッグ勝利ぃぃぃ!オイ政人!俺達の勝利だぞ!……政人……?あれ?政人?あれ?お姉さん?……あれぇぇぇぇぇ!?」



おしまい☆

水島ハル。身長163。体重45。走り屋のバイクマニア。ショートカットの黒髪で、ファッションにはあまり気を遣わない。サバサバした性格。呼称はボク。愛車はネイキッドの400。……ボクっ娘ですね、はい。しっかりしたキャラを持ってるのはハルくらいなんじゃないでしょうか。今度ハルのバイクを公開しようかな。……いや、マニュアルだからめんどくせぇな。……ではでは!

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