第33話 すっごい中途半端だけどね〜30話記念〜
読者の皆さん!この作品も30到達!長かった……。そこで、サブタイトル通りかなり中途半端ですが、30話記念パーティーです!豪華3本立て!それではどうぞ!
「うわっ!すっご!」
「大きいね……」
「ボク旅館に泊まるの初めてなんだ〜っ!」
「でか〜……」
旅館に一足早く着いた里奈、綾ちゃん、ハル、さくらが、それぞれ驚嘆の声を上げる。
地方ならではの雑踏の聞こえない静かな雰囲気。森が近くて心なしか空気もうまい。夕暮れ時だからか、なんだか懐かしい気持ちにもなる。
旅館の外見は純日本。内装も清潔にされているだろう。
場所、建物、文句の付け所が無い。すごい、すごいよ。
すごいけどさ……
「君たちの荷物もすごいよね……」
「同感だ……」
「づ、づぶれでじまう」
横一直線に並ぶのは、漫画並にバカでかいバックを背負う、海と友基、そしてこの俺イケ面高校生、政人様。
上から読んでも、下から読んでも政人様だ。
「だ、大丈夫ですか……?」
「僕も少し持ちますよ」
後ろから心配そうに俺達を見つめるデンジャラスロリボーイ・アンド・ガール。充と満。
「い、いや……だいじょ……」
「ミツ〜!ミチ〜!中もすごいよ〜!」
「ホントですか!?」
「わ〜いっ」
里奈に手招きされ、充と満は満面の笑みで駆け出していった。
あ、あいつら……
俺はもう誰も信じない。俺の足だけを信じて、一歩一歩進み、自分の力のみで
「お疲れ。……大丈夫か?」
そこには涼しい顔の克也。
こいつはたしか、この一泊二日のプロデュースを全て任されていたんだっけ。
みんなより一足先に旅館に着いていたらしい。
「「「…………」」」
「え、どうしたんだ……?みんな黙って俺を見つめて」
「……頼んだ、男前」
海が、自分と綾ちゃんの荷物を渡し、旅館へと歩いていく。
「うっ、えっ?」
「おおっ、君眼鏡が似合うねぇ〜!かっこいいよ!だからハイ」
友基が、自分とハルの荷物を渡し、海に続く。
「ぐっ、まっ……!」
「おお、おまえの小指の第一関節スゲーかっこいいじゃん!はい」
俺は自分とさくら、里奈の荷物を渡す。
「びっ、びみょおおおおおおおお……!」
「……ん?……あ」
そう、こいつもいるんだった。
自分の荷物だけでいっぱいいっぱいの一太郎。
肩で息をして、虚ろな目に顔は青白い。
「ひっひっふぅ……ひっひっふぅ……」
なぜかラマーズ呼吸だ。
「ハァ……先行くぜ。眼鏡同士、仲良くしてな」
俺は軽い足取りで旅館へと歩きだす。
「おおおおおおお……!」
「ひっひっふぅ……ひっひっふぅ……」
後ろから二つの奇声が聞こえるが、振り返ったら悲しい現実を見てしまいそうなので、決して振り返りませんよ、アタシは。
旅館の建物の入り口をくぐるとみんないた。もうわらわらと。
目の前には、若女将っぽいのがお辞儀をしている。藤色の大人びた着物を完璧に着こなし、それに色白の肌が映えている。
……いい!美人の若女将!たまらんな、うなじが素晴らしい。
殺気を感じ、その方を見るとさくらが睨み付けていた。もう何も言われてないけど土下座したくなってきちゃう♪
「『こうこうせい御一行』様ですね、お待ちしておりました。……おや、これで皆様お揃いでしょうか?」
……あー、あいつらはいいか。
「あーっと、あと眼鏡と荷物が来ますけど。まあ、そんなんはどうでもいいんで、先に案内お願いします」
「はあ、わかりました……。では、こちらへどうぞ」
俺達は靴を脱ぎ、女将についていった。
―――――。
「おお〜!広い広い!」
「「すごーい!」」
先に部屋に入ったハルとロリ二人が、15畳程の和室を走り回る。
部屋の中央には大きな茶色のテーブル。外には縁側があり、そこからは壮大な森が拝める。
里奈とさくらは目を輝かせ、いつもは大人しい綾ちゃんでさえテンションが上がっている。
旅館で同じ部屋に泊まる男女……。そのシチュエーションで何も無いわけがない!……うふ、うふふふふふ……!
俺は偉大なる期待に胸を膨らませながら、部屋に足を一歩踏み入れる。
目の前には手のひら。
里奈が俺の眼前に手のひらを出し、首を横に振っている。
「……なんだよ?」
「ここは、れでぃの部屋ですけど?」
「へ?」
俺の後ろにいた友基は、さも不思議そうな顔だ。その横の海も同じ表情。
「君たちの部屋は違う所」
…………。
「「「……へ?」」」
―――――。
日当たりの無い部屋。6畳の和室の真ん中には、申し訳程度に小さなちゃぶ台が置かれている。湿気た匂いに、なんだか気が滅入る。
ここが男達の部屋らしい。
……おかしくない?この落差おかしくない?ついでにロリボーイは女の部屋っておかしくない?
「ちくしょうっ!せめてあと1畳広ければ最高だったのにな」
おかしくない?おまえのそのポジティブな発想おかしくない?
「……フッ……」
おかしくない?この状況で鼻で笑えるおまえの強い心がおかしくない?
俺は全身の力を抜くように四つんばいになった。
「旅館に来てまで、何が悲しくて男と同じ部屋なんだよ……?」
「まっ、これがコメディーの運命だな」
「同感だ」
「同感できねーよ!そんな運命なんて俺が変えてやる!運命も俺のキャラ設定もメチャクチャにしてやる!うひゃひゃー!パンツがお股に食い込んでいい感じ♪……あれ?いつもと変わんないかも」
「無理な事してねーで現実を見ろよ?俺達にはまだ希望が残されているじゃないか」
友基は目を少女まんが並に輝かせて言う。
……そうか!
「「温泉!」」
海のため息が聞こえたが、俺はそんな事を気にしない程にテンションが上がっていった。
―――――。
チャポーン……
そんな擬音が似合う場所、温泉。
俺と友基と一太郎は、女組より先回りして混浴の露天風呂の岩陰で身をひそめている。
他の男共は先に出ていった。
まっ、海は気取っちゃってるし、充は女の体とか興味なさそうだし、克也は眼鏡だしね。
「女体の神秘を観察とは。なかなか興味深いですね」
横で一太郎がニヤリと笑う。こいつの曇った眼鏡の奥には野獣の瞳が隠れているのだろう。
「オパーイ!オパーイ!」
友基はさっきからこんな感じだ。
俺はというと、来たるべき夢の世界に備え、精神統一をしている。
そう、これは遊びじゃない。殺るか殺られるかだ。
「……あっ、向こう露天風呂みたいですよ……」
俺は聞き逃さなかった。
遠くから聞こえる満の声を。そして他の女の子達も。
「露天風呂!?いくっきゃないでしょ!」
そうだ里奈。みんなを引っ張れ。
「でも……混浴みたいだけど……」
綾ちゃん!大丈夫さ!混浴への扉を開けてごらん?
「でも、露天風呂入ってみたいな〜」
そうださくら!綾ちゃんを説得してくれ!
「いっちばーんっ!」
ハルの声と一緒に、カラカラと横開きの扉の開く音。
き、キターーーー!!
ぞろぞろとハルに続いて、みんな入ってくるのはわかるが、湯煙でシルエットしか見えない。
「うおぉぉぉぉ!スゲー!」
友基はかなり興奮気味だ。
「目悪いからなんも見えねー!」
じゃあ君は何に興奮したの!?
「女の体というものは不思議なものです。無性に男の本能をくすぐる。そもそも……」
「うるせー眼鏡!ごたくはいいんだよボケ!」
友基と一太郎がモメだしたかと思うと、友基が一太郎にビンタを食らわし、一太郎の眼鏡が吹っ飛んだ。
吹っ飛んだ眼鏡はお湯に沈んでいく。
「おまえ内輪揉めしてどうすんだよ!?バレたら俺の人生もこの小説も終わりなんだぞ!」
「そっ、そうだった!おい一太郎、大丈夫かよ!?」
「ナニモミエナイ、ナニモミエナイ」
……え?
一太郎は両手をゾンビの様に前に突き出し、岩陰から飛び出した。
「おっ、おい!」
「ナニモミエナイ、ナニモミエナイ……」
一太郎は向かっていった。
女達のいる場所へと。
俺と友基は岩陰に完全に隠れ、一太郎の健闘を祈る事しかできなかった。
俺は耳を澄ませ、状況を確認する。
「ナニモミエナイ、ナニモミエナイ」
「ん……?なにか聞こえない……?」
「あ、ホントだ……って綾、後ろ!!」
「え……きゃあぁぁぁ!」
「ナニモミエナイ、ナニモミエナイ」
「どーしたの!?きゃっ!変質者っ!?」
「変質者だと!?変質者め、女をなめるな!」
バキッ
「わっ、私、従業員さん呼んできます!」
……従業員!?
「おい友基!ここは退却だ!」
「ああ!でも一太郎はどうすんだよ?」
「いや、眼中にないでしょ」
「うん、だよね」
そうして俺と友基は、湯煙に混じる女の子のかほりを名残惜しみながらも、無事男湯に戻れた。
後ろでさくらが
「この椅子鉄だよっ!」
と末恐ろしい事を言っていたが、聞かない事にした。
氷室海。身長176、体重67。銀髪のツイストパーマ。髪の長さは政人と同じくらい。かなりのイケ面。クール。……こんな感じですね。ハルと峠で勝負した時はクールとはかけ離れたものでしたが(笑)ちなみに服装はストリートBです。ちなみに好きな食物は綾の弁当です。ちなみに次は村上綾です。