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第28話 海と友基のストーリー(2)

克也と食堂で昼食を済ませた後、タバコを吸うために俺は屋上に向かった。…が、屋上へのドアの前で、家にタバコを置き忘れてしまった事に気付く。


最悪……ま、いいや。寝るべ。


そんな事を考えながらドアを開けると、フェンスに背を向けて寄り掛かり、タバコをふかしている奴が見えた。


俺はその先客に近づく。


「ヘイブラザー!タバコプリーズ!早くよこせ」


先客、海はゆっくりこちらに振り向き、俺の顔を見つめ、タバコを吸い、そしてうまそうに吐きながら答えた。


「悪いな、禁煙中だ」


「はいうざいね!」


海はポケットを乱暴にまさぐり、まさぐりまさぐりまさぐり、ぐへへ、ほれっここはどうじゃっ!いやっ!そんな乱暴にしないで!大丈夫、痛いのは最初だけだか

「ほら」


……はい、情景描写ね情景描写。

えーと、海は手をポケットに乱暴に突っ込んでピースのソフトを掴み、一本だけ上手に出して、そのまま俺につきだした。はい、これで満足?満足した?満足したの?ねえ、答えてよ!返事をしてっ……つーか……


「ピースかよ……」


「貰う奴が文句言ってんな」


俺は渋々差し出された一本を取り、その後海が投げてきたデュポンで火を付けて、軽くふかした。

俺はタバコを口にくわえたまま、両手でデュポンを眺めた。


「おまえデュポンかよ。いいご身分ですねぇ」


「パチモンだ」


からかった俺に、海は空を見上げながら答えた。

俺は海にデュポンを放り、海がそれを見ずに手で取ったのを確認した後、フェンスに寄り掛かり、海と同じ様に空を仰ぐ。

空は中々の快晴だった。


俺と海は、沈黙のまま空を眺めていた。


「……なあ」


俺は沈黙を破り海に問い掛ける。


「あいつの事、あんまし邪険にしないでくれよ」


海は答えない。俺はさらに言葉を紡ぐ。


「ほら、あいつもこっち戻ってきたばっかでさ。事情をまだ知らねぇんだよ。クロスもSSもバリバリ活動中だ思ってるからさ。俺から言っとくから」


「関係ねぇよ」


俺は海の方へ向いた。

海は未だ空を見上げている。


「俺はチーム抜けてクロスの地元に来たんだから、そういうのは関係ねぇと思ってる。…けどな」


海はこちらを向き、言葉を続けた。


「俺はあいつ個人が気に入らねぇんだよ」


……シリアス!シリアスだよあんた!あんたにコメディーは到底むり!こういうシリアスな場面にもギャグをちりばめるという心意気がなってな

「オイ…俺けっこう真剣に話してんだけど」


「え?ああ、聞いてる聞いてる。で?じゃあどうすんの?喧嘩で決着つけんのか?」


海は再び空を見上げた。


……こいつ空から金でも降ってくると思ってんのか?


「さあな」


……結局、俺が説得しても話は進まないって事か……


「でも!なるべく喧嘩はすんなよな!」


無駄かも知れないが、俺は一応釘を刺しておく。


「フッ……アンタの言うセリフか?」


「うっせー。俺は面倒事にしたくねーだけだ」


「……でも、俺はそんなに暴れはしねぇよ」


「はっ、おまえだってずいぶんとアレじゃねぇか!うん!アレだ!」


「…………」


「……こほん。うん、前のおまえじゃ考えらんねー言葉だな。なんでだよ?」


「前とは違うんだよ」


海はそう言って、空に向かって笑った。


「あんまり暴れると、説教する奴ができたからな」


海がそう言った瞬間、海の顔が水浸しになった。状況を理解できずに、前を向くと、綾ちゃんがバケツを持って立っていた。


「こんな所でタバコ吸って!中学と何も変わってないじゃない!海君!それに政人さんも!」


「……な?」


俺は唖然としたまま海の方を向いた。

海は、体中水浸しになってたが、タバコの火は消えてなく、煙をはいてから、嬉しそうに笑った。


綾ちゃんはそれに気付いて、バケツに残った水を放った。



―――――。



真夜中の俺のアパート。

友基はまたしても押し掛けていた。


「そんでそいつがあんまりうっせーからよ。『テメーの家にあるもん全部ひっくり返してやろうか』って脅しかけたらよ、そいつが『やめて!プリンが逆さまになっちゃう!カラメルソースが下になきゃダメなんだ』とか言っちゃってよ!ギャハハ!!でもやっぱりプリンはカラメルソースが上だよな。おまえはどっち派?」


「俺はゼリー党だ」


「うっわ、おまえあんなもん食うのかよ!あっ、それよりさ。聞いてくれよ。俺、昨日運命の女の子に出会っちゃったよ〜!もうたまらん!うひゃっ」


「ちょっと、俺の話を聞けよ。2分だけでもいい〜」


「歌うなよ音痴。で、何の話?俺様を飽きさせない話だろうな?」


……なんか、話す気が失せてきた……。ああ、ぶん殴りたい。ぶん殴りたいぶん殴りたいぶん殴りたい……。


「おい、死んだ目してないで早く話せよ」



―――――。



「…………」


俺の話を聞き終えた友基は、ソファに座り込んだまま俯き、黙っている。

頭に大きなタンコブがあるが、それが理由じゃないと思う。


海は話そうとしなかったが、俺は、友基がいなくなってからの出来事をすべて話した。

俺のチームの事と、あと海の事も。


俺が話していく内に、友基は段々と口数が減り、そして話し終えた頃にはこの状況だ。


「だから、」


「だから?」


俺が言った言葉を、友基は疑問符を付けて返してくる。


「関係ないね、あいつの事情なんて。俺はあいつ自身がウゼーんだよ」


静かに淡々と話すという、友基にしてはかなり珍しい行動に、俺は何も言い返せなかった。


こいつ、そんなに海の事が……。


「大体、あいつはなんなんだよ!『俺は助っ人だ。……フッ……』とか抜かして俺等のチーム荒らすだけ荒らして、その後はそ知らぬ顔して俺等の前に姿現しやがって!俺はなぁ!あいつと喧嘩して財布を落とした日から、あいつの事が大っ嫌いなんだよ!あの財布の中には一ヵ月の豆乳代が入ってたのに!ああっくそ!思い出したら豆乳飲みたくなってきた!」


こいつ、そんなに豆乳の事が……。



……って違う違う。

まあ、海と友基が素直に言うことを聞くとは、ハナから思ってなかったし。

こうなったら……


「ともちゃ〜ん」


「あんだよ!俺ァ、豆乳が飲みたくてイライラしてんだ!静かにしないと容赦しないよっ!」


テメーが静かにしろよ……。


俺はそう言いたいのを我慢して、笑顔でキッチンから手招きした。友基は不思議がりながらも、キッチンに向かってくる。


「あんだよ?」


「ふふんっ。これを見ろ!」


俺はキッチンの冷蔵庫を、じゃじゃーん!という効果音付きで開けた。


友基は目を見開き、その光景に釘付けになった。


そこには豆乳1リットルサイズが所狭しと並んでいた。


……まあ、食材とかもあるから実際には前に数本並べただけだけど。


「おっ、おみゃーこれ全部飲んでいいけ!?けけけのけ!?」


「ああ、いいぜ。ただし!」


俺の言葉の最初で、友基は豆乳にがっつこうとした。俺はそれを、友基の頭を掴む事によって阻止する。


「なに!?オジサンなんでも言うこと聞いちゃうよ!?言ってごらん!」


「じゃあ、オジサン。海君と仲良くしてくんない?」


「ぐっ……」


その言葉に、友基の勢いが弱くなる。


「海君と仲良くしてくんなかったらぁ、オジサンは豆乳と仲良くできないよ〜?どぉするぅ?」


友基は豆乳と俺を交互に素早く見つめる。


「ぐっ……うぅ……」



しかし、やがては豆乳に見入ってしまったのだった。


―――――。



「氷室!昨日はわりぃな!」


朝の教室。友基は笑顔で海と握手を交わしていた。


「…………」


海は何が起きたのかわからず、しばらくほうけていたが、やがて何かに気付くとニヤリとした。そしてそれが、全くの笑顔になる。


「ああ、俺も悪かった。ごめんな」


お互い笑い合っている。……笑い合っているはずなのに。なぜか二人はオーラを纏っていた。そして握り合っている手が真っ白になっている。


「ま、いいか……」


いつもの口癖を出してみたが、この状況は全くよくない。

この握手のせいで、二人の仲が、さらに悪くなったかもしれない…。



……後で友基の腹を殴り、昨日の豆乳をすべて吐き出させようと思う。


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