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第27話 海と友基のストーリー

シリアスな感じになっていきます(汗

ジリリリリッ


耳障りな目覚まし時計の音で、俺の意識が徐々に覚めてくる。


それでもベットの上でうなだれていたが、段々とその音に腹が立って来た。


「…………うるせぇぇぇ!!」


俺は怒声と共に、目覚まし時計に向かって暴力と言う名の制裁を与えた。


バキッパリン


……ん?


俺は嫌な音がした、目覚まし時計に視線を向ける。


「……アァァァァ!!」


目覚まし時計の時刻を知らせる部分が、無惨に破壊されていた。

プラスチックは割れ、短針と長針は折れ曲がり、秒針に至ってはどこかにぶっ飛んでいた。


……あれ?秒針は最初からなかったんだっけ?……って、そんなことはいい。


壊れたんかい?


俺は、見るも無惨な目覚まし時計を拾った。


「……おい、うそだろ…?目を覚ませよ。おまえが寝てどうすんだよ。……おまえがいなくなったら……俺は……俺は…!」


俺は両手で持っている目覚まし時計を強く握り締めた。


「オマァァァァァンッ!!オマーン!?」


はっ…。


あ、どうも皆さん。

僕の名前は斎藤政人です。

ぷりっぷりの高校二年生!よろしくな!さっ今日も一日ガンバルゾ☆


俺はベットから降りて、リビングへと歩く。


そういえば、昨日は夕飯食ってないんだっけ。どうりで腹がへるわけだ……。


朝食は何にするかを考えながら、リビングのドアを開ける。


「ンガガガッすぴー……」


……そうだ。こいつ居るんだった…。


リビングのソファで爆音を奏でている友基の姿に、思わず溜め息をついてしまう。


昨日、結局こいつは俺の家に泊まった。

引っ越したばかりなので、部屋の中がダンボールだらけで寝れないとかほざき始めたこいつを、なんとかお帰り頂こうとしたが、結局無理だった。


うざいよね。


「ま、いいや」


俺は過去を振り返らないのさ。


起きる様子の無い友基を無視して、俺は朝食を作ることにした。



―――――。



こいつ、いつまでも寝てんな。


朝食を作り終えた俺は、友基の幸せそうな寝顔を覗いていた。


「んがーちゅちゅ」


どんなイビキだよ……。


「んがーちゅちゅちゅちゅちゅちゅ……スポーン!」


何かが抜けた!?


「すぴー…すぴ?スピ……スピ……」


ん?苦しみだしたぞ?


「スピリチュアル!!」


友基はそう言うと、ソファの上で突然立ち上がり、『白鳥の舞い』のような、両足を爪先立ちしながら揃え、両手を上げたポーズを取った。


「フィニッシュ!」


「何がだよ!」


俺がつっこむと、友基は我に返り、リビングを素早く見回した。

そして視界を俺に留めると、物凄く驚いていた。


「まっ政人!なんでおまえがいんだよ!人ン家に勝手に上がり込んで!キモッ!」


俺がしばらく黙っていると、友基はそれに気付き、もう一度リビングを見回した。


「ここは……どこ…?」


俺は早くも今日二度目の溜め息をついた。



―――――。



「はぐっはぐぐっ!ほへふはひは〜」


「昨日と全く同じセリフだな」


俺と友基はリビングテーブルを挟み、向かい合って朝食を食べている。

ちなみに昨日の牛肉が食費に響いたので、今日はパンとハムだけだ。


「お?まだ飼ってたんかよ?この亀」


友基は亀吉さんの水槽に、パンを片手に近づいていった。


「ああ。俺と亀吉さんは切っても切れない仲だからな」


ふーん、と興味なさ気な声を出しながら、友基は水槽にハムを落として、亀吉さんを観察していた。

亀吉さんは目にも留まらぬ速さで首を突き出し、ハムにがっついた。


「おお〜!はえーな!まぁでも俺のチョーパンよりはおせーけど!」


「ア?若造ガ。ベコベコニシテヤロウカ」


「んー、なんか食い足りないなぁ。あ、政人。パンもう一枚いい?」


「うんうん、じゃんじゃん食えよ!」


「あっでも俺今日からもう登校しなきゃだから制服家からとってくるわ学校でまた会おうぜじゃーな!」


「へぇー転校すんの速いんだな遅刻しないようにしろよへぇー速いんだな、あっ、二回言っちゃった」


友基は決して水槽を見ずに、玄関から出ていった。


「さっ、俺も用意すっかな〜」


俺は何事もなかったかの様に着替えを済ませ、亀吉さんに魚肉ソーセージをあげて、アパートを後にした。



―――――。



「だぁーっ!もうダメっ」


まだ3限が終わった頃なのに、俺はなんかもうすごいダメだった。


俺は机に突っ伏す事で、それを体で表現する。

その体勢のまま首だけ右に向けると、海も同じ様にしていた。


「へっ、海。テメーはもうくたばったのか?」


俺がそう言うと、海も同じ様に首だけこっちに向けた。


「……アンタも同じじゃねーか」


俺と海は突っ伏したまま睨み合う。


「おーい、政人!あははっ!俺、滑舌わりぃから自己紹介の時かみかみでぐだぐだで女子にも引かれてなんかもうすごいダメだ死にたい」


挨拶も無しにいきなり現れた友基は、俺に近付きながら喋った。

セリフに反してもの凄く笑顔だ。


友基は海の後ろ姿をふいと見ると、不思議そうな顔をする。

その時、海が机に突っ伏すのやめた。海は友基の視線を感じたのか、友基の方を向いた。


二人は見つめ合ったまま動かなくなった。


「ッッッアァァァァッ!!テメーは氷室!」


友基は海を指差して、大げさな程に叫んだ。


「……ああ、内田か」


海はようやく友基を思い出したようだ。


友基の大声で、クラスの奴等は何事かと二人に注目している。

教室は、異様なまでの静けさにつつまれた。


「なんでテメーがクロスの地元にいんだよ、オイ?」


友基はそう言いながら、両手で海の胸ぐらを掴み、無理矢理海を立たせた。


……あっ、そうか!友基は海が来た理由を知らないのか。

知らなかったらそりゃケンカになるよね。俺と友基のいたチームと、海のいたチームは仲わりぃんだからな。


「……アンタに言う義理はねぇな」


胸ぐらを掴まれた事が気に入らないのか、海は友基を睨みながら答えた。


「……は?」


友基は眉をしかめたまま、目を見開いてニヤリと笑った。


ゴッ


「ーーーたぁッッ!」


俺の振り下ろした拳が、友基の頭頂部に当り、その音が教室に響き渡る。

友基は頭を押さえながら、ゴロゴロと転がりもんどうりうっている。


海は今の状況を飲み込めず、拳を構えたまま驚いていた。


「まっ政人!テメッいてーよ!」


やっと立ち上がった友基は、涙目になりながら俺に抗議をした。


「ハイハイ、喧嘩なら外でやってください。大気圏外でやってください」


「俺、息できない!」


「大丈夫。俺が見ててやるから」


「状況は変わんねーよ!なんだテメー!息子が初めて自転車に乗る時に、優しく大らかな瞳で見守るお父さんのつもり!?」


「いやちげぇ。息子が初めて自転車に乗る時に、『ちゃんと後ろ掴んでてよ!?』って言われて『大丈夫。絶対離さないから』って言うんだけと、スキを見て離して息子が『ねぇ、ちゃんと掴んでる!?』って言って、掴んでないのに『ああ、掴んでるよ』とか言って、でも息子はその声が遠い事に気付いて後ろを振り返った時にはもう遅い!」


「なんの話だよ!もう優しく大らかな瞳とかねーじゃん!しかも話のしめ方おかしいよ!?でもそれボクやられました。」


俺と友基のやりとりをクラスが聞いているウチに、教室内はいつもの雰囲気に戻り始めた。


ふぅ……ったく、こんな所でキレんなっつの。


友基は教室の喧騒で我に返った。


「ほらー、授業だ生徒達ー。座れ座れー!」


4限の教師が入ってきて、教室内の生徒を促す。


生徒達が席に着き始めた時に、4限のチャイムがなった。


「……ふんっ」


友基はしばしその状況を見つめた後、子供の様な怒り方をして教室から出ていった。


「……チッ」


海は友基が教室から出ていく様を見つめた後、不機嫌そうに自分の席についた。


うーん、こんなに仲が悪かったのか……。ま、俺も海が転校してきたばっかの頃はこんなんだったからな。


……いや、それよりもひどいか……。


俺がまだ席に座らずに思考に耽っていると、3限が終わっていつのまにか居なくなっていた克也が、清々しい顔をして教室に戻ってきた。


「はぁ〜。すっきりした。ん?政人、何かあったのか?」


「克也、俺の様子に気付いたのはさすが親友といったところだけと、おまえは一生ダメキャラだな!うん、決定!おまえはなんかもうすごいダメなキャラ!」


「え?え?」


状況を飲み込めずにいる克也をほっといて、俺は自分の席に着いた。


海と友基。こいつらをなんとかしないとな……。



友基がさっそく波乱を起こしてくれたことに、俺はため息しかでなかった。



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