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第24話 来襲?召喚師バァ様(中編)

迷路。


それは難解なまでに入り組んだ道。ならびに場所。


俺は博士が迷路と言った建物の入り口で、博士に質問をする。


「迷路?博士、あんたそんなくだらねーことしてたの?」


「くだらない……か。男とはくだらない事ほど好きなものはない。いや、男そのものがくだらないのじゃ。」


「だよね〜。ホント男ってくだらないよ。そう、それを理解したのは中学3年生の頃からです。」


おまえその頃に何があったの!?


「そう、あれは最後の夏休み……ホワワワワァ〜ン……(回想)」


いやしないから!ていねいに効果音までつけてるけどさ!


「ほほ、私もあの頃は若かった……。恋ってなに?新発売のペプシ?みたいな。」


どんな勘違いだよ!勘違いの仕方おかしいだろ!


「そう、あれは最後の夏休み……ホワワワワァ〜ン……(海草)」


海草!?海草シーンってこと!?



………って、え?ホントにするの!?



―――――。



アレは、高校生最後の夏休みの事。



―――――。



「………終わり!?ただ同じ事2回言っただけじゃねーか!―――――。なんていらねーよ!!」


「―――――。を使ってみたかっただけだよっ(笑)」


「うぜーよ!!その(笑)うぜーよ!!」


「ご…ごめんなさい…(汗)」


「それがうぜーんだよ!おい、ハル!おまえもなんか言ってやれよ!」


ハルは空を仰ぎ、一雫の涙を流しながら目を閉じていた。


「あの時、トコロテンを右の扉に投げ付けていれば………。」


おまえの最後の夏休みに何があった!?


「……まあ、ハルはほっといて…。博士、なんか実験内容とか注意事項とかあんだろ?」


「おお、悪い悪い。そうじゃったの。(怒)」


なんで怒ってんの!?



―――――。



「…ふむ。」


俺は口に手をあてながら、少し俯く。


どうやらこの実験は、本当に何の考えも無しにやっているらしい。

前の開発で、一発当てたらしく、少し暇になった所で、この迷路を思いついた。で、どうせ資金も有り余っているし、やるなら本格的にやるべー!みたいな感じで、作ったみたいだ。

そしたら本格的に作りすぎて、迷路に入れる奴が限られてしまった。バカだな。

作ったのに中に入れないとなっては、作った意味が無いので、実験体を探していたら、たまたま俺の喧嘩を見かけた、との事だ。


「いやぁ、幼い頃から大の迷路好きでの。自分の手で迷路を作るのは夢だったのじゃ。」


博士はかなり興奮ぎみに喋る。


「じゃあ、俺達はこの迷路のゴールを目指せばいいんだな?」


「うむ。実験データを元に、また新たな迷路を作るんじゃ!」


…ん?でも……


「別にゴールはしなくてもいいんだよな?」


「うむ。しかし、ゴールには、実験報酬とは別に、50万がある。まあ、ボーナスみたいなもんじゃな。」


ご、50万!?


「まあ、説明はそんな所じゃな。迷路の説明をしたら意味がないじゃろ?」


まあ、そうだな。


「じゃ、さっそくはいりますか!おい、ハル!行くぞ!」


「待って!行かないで!ボクのどこが悪いの!?遊び心で誕生日に100万本のトコロテンを送っただけじゃないか!」


それはダメだろ。でろーんってしてんじゃん。ってかこいつトコロテン100万本数えたの!?無駄な事をごくろうさま!


「中に入ったら、この入り口はしまるからの。」


「ああ、わかった。」


俺は回想中のハルを引っ張って、建物の両開きのドアを開け、中へと歩みを進めた。


中に入ると、明かりは壁についているたいまつのみで、薄暗い。

俺達の前には、横に5人ならべるくらいの階段が一直線に続いている。壁のたいまつもそれに習い、無数にある。


「じゃ、下りますか。」


「うんっ。パーツの為!気張っていくぜ!」


おお、はりきってんな。


「じゃ、政人。前よろしく。」


「おう!ってええ!?あんだけ張り切っておいて!?」


「あ?テメーの家、トコロテンまみれにしてやろうか?」


俺が先頭になり、階段を下りていく。


しばらく歩いていると、先に扉が見えてきた。


しかし、扉は迷路らしく、


「3つか……。」


ハルは何かに気付いたらしく、扉に近づいてゆく。


「紙が張ってあるよ。なになに……『左は地獄の部屋。右は地獄の部屋。真ん中は田中さんの部屋。お薦めはもちろん田中さんです。』」


うん。おかしいね。

地獄の部屋と田中さんの部屋は同等なの?


「お薦めされちゃあしょうがない。」


入るの!?田中さんの部屋に入るの!?絶対田中さんがいるぜ!?


「ほら、行こうよ。」


ハルはそう言いながら、俺の腕に組みつき、引っ張る。

ハルが俺の腕にぴったりと体をくっつけるもんだから………あ、ヤベ。鼻が修羅場。


ガチャ…


俺達はそのまま田中さんの部屋に入った。


「こりゃァァァ!」


部屋にはヨボヨボのお婆ちゃんが、杖を振り回しながら怒っていた。この人が田中さんと思われる。


部屋は真っ白の無機質な壁に、床は真っ白なタイル。物は何もない。

広さはかなりのもんで、次の扉がタバコの箱並に見える。横も縦も同じくらい広い。


田中さんは部屋のド真ん中にいる。


……寝そべりながら。


「こりゃあー!もっとこっちにこんかー!」


ああ、めんどくさいんだ。


俺達はお婆ちゃんの近くに行くと、お婆ちゃんはいきなり持っていた杖を投げ付けた。


あぶ…っ!


ハルが驚いて手を放してくれたので、俺はすんでの所でそれを横っ飛びにかわした。


「何すんだテメー!」


「そうだ!危ないよ!杖からは電気や炎や、ましてや召喚獣だって出るんだぞ!てゆうか出せよ!」


「ハルちゃんお婆ちゃんに無理言っちゃいけない!出来る事と出来ない事があるんだよ?」


「シャバ増!なめるなよ!ワシにかかればそんなのおちゃのこさいさいだよね?」


え?なんで俺に聞いた?


田中さんはそう言うと、投げた杖を拾った。てか、投げた意味あったの?


「出してやろう……禁断にして最強の召喚獣を…。」


な、何を出す気だよ…?


「死んだジィ様!」


やめとけよ!


田中さんは杖を強く握り締めると、目を瞑り、呪文らしき言葉を呟きだした。


「ナムアミダブツナムアミダブツ……」


おい!そんなの唱えたらジィ様出てきた瞬間に成仏しちまうよ!


ん?ていうか無理だろ!どーせ屁でもこいて、召喚成功じゃあ!とか言うのがオチだろ?


「んん〜〜〜〜……!ハァァァァ!」



プゥ〜



やっぱりな!


「召喚…成功じゃ……」


田中さんが呟いた瞬間、田中さんの着物が揺れだした。そして、中から何かがもぞもぞと出てきた。


「…よ…よば…呼ばれて飛びで…飛び出て……フウ…」


ジィ様変なとこから出てきたよ!!しかも飛び出てねーじゃん!物凄く苦しそうに出てきたじゃん!


「…ば…バァ様や…あんまり呼ばんといてくれ……疲れるんじゃよ………。」


「あ?なめたクチ聞くんじゃないよ!」


「ひどいな…。ていうかジジィ酷使してもあんまり意味無くねーか?」


「なに!?うちのジィ様なめるんじゃないよ!ねっ、ジィ様?」


「うーん……!!」


元気よく曖昧に答えたよ!


「ジィ様しっかりせんかい!…よし、それならタッグマッチ勝負じゃ!」


今、ジィ様が、えっマジで?って顔してたけど?


「それおもしろそう!政人、やろうよ!」


「いや、やんねぇよ。それよりも早いとこ次の部屋に行こうぜ?」


俺がそう言うと、バァ様は何故か笑いだした。


「クックック…次の部屋への扉には鍵が掛かっておる。その鍵はもちろん……」


バァ様が持ってるってワケか……。


「フン…やるしかねぇみてーだな。」



―――――。



俺はジィ様と、ハルはバァ様と対峙している。


ジィ様もやっとやる気になったようだ。


「かかってこいよぉ!もういいよぉ!どうせワシの人生は夢も希望も良い嫁さんもないさ!」


というか、もう自暴自棄だ。


「若造!上等だよ!行くぞォォォ!!でも痛くしないでね。」


ワケわかんねぇよこのジジィ!


ジィ様は奇声を上げながら、物凄い形相で向かってきた。


「ヌヒョォォォあっ。」


あ、つまづいた。


「ブヌッ」


あ、顔からイッた。


ジィ様はその態勢のままピクピクと痙攣している。

バァ様がそれに気付き、ジィ様に駆け寄っていく。


「ジィ様ァァァ!」


バァ様は走った勢いのまま、ジィ様のみぞおちに爪先を綺麗にお見舞いした。

って、ええ!?こいつ何しに来たの!?トドメさしに来たの!?


ジィ様はピクリとも動かなくなった。


「………よし。」


「よし。じゃねーよ!ババァテメーの一撃で戦闘不能だよ!ジィ様呼んだ意味ねーじゃん!」


「敵味方どちらであろうと、動けそうにない奴にはトドメを刺す。これがワシにできる唯一の慈悲じゃ。」


ここって戦場!?田中さんの部屋は戦場だったの!?


「隙ありぃ!」


その声と共に、ハルがバァ様に向かって飛び蹴りをくり出した。

バァ様は咄嗟のことに避けれず、腕で防御をしたものの、蹴りの威力に堪え切れずに後ろに吹っ飛んだ。


ハルは見事にジィ様の上に着地して、よろめくバァ様を指差した。


「ババァ、テメーここをどこだと思っている?田中さんの部屋だぞ!!」


いや、なんか田中さんの部屋イコール戦場みたいになってるけど。


「クッ……忘れておった…。ここは田中さんの部屋……。そう、戦場じゃ。」


あ、やっぱり戦場なんだ。


「仕方がない……。ワシも繰り出してやろう。…………飛び下痢を!!」


繰り出すな!絶対に繰り出すなよ!てか飛ばすなよ!


「飛行能力のある下痢……。そんな技を出されたら、ボクはもう終わりだ…。」


ホントだよ!人生おしまいにしたくなるから!


「…と…いいたい…所だが…。」


バァ様はそう言うと、力無く地面になだれるように倒れた。

ってそれはいいけどさ。ハル、おまえいつまでジィ様の上に乗ってるつもり?


「バァ様!」


あ、やっと退いた。


ハルはバァ様に駆け寄っていった。

そしてバァ様の上半身を抱え込む。


「どうやら…小娘、貴様の勝ちのようじゃな……」


「バ、バァ様……。」


なんか、どもると尊敬してんのかけなしてんのかわかんねぇや。


俺もバァ様の所に歩み寄る。


「ババァ様、約束だぜ?ほれ。」


俺はそう言いながら、バァ様に手の平を差し出す。


「…そうじゃったの……」

バァ様は俺に杖を渡した。


「これが…次の部屋への鍵じゃ……。」


ふーん、杖が鍵だったのか……。


「うし、ハル、行こうぜ。ババァ様、博士に医者呼んでもらえよ。」


「うん…。バァ様、元気でね…。ボク、バァ様のこと忘れないから……。」


「…小娘も元気での…ワシ等はもう戦友じゃ…。」


え?戦友ってなんの?おまえ等は何と戦ってんの?


俺とハルは次の部屋への扉に行き、大きな鍵穴に杖を差し込むと、鍵の開く音がした。


「開けんぞ。」


「…うん。」



この迷路はいつまで続くのやら……。



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