第20話 ロリフェイスに騙されて……(前編)
今日は日曜。昨日はクソゲームをやって、夜更かししたので、今日は昼ごろ起きてしまった。
ベットの上で上半身だけ起こしながら虚無を見つめる。
だが、空腹のおかげで冴えない思考もだんだんとハッキリとしてきた。
んあ〜〜……とりあえずメシ食いに行くか……。
大きな伸びをしてから、ベットに手をかけて立ち上がろうとした時。
むにゅっ
……ん?なんだこのなめらかな指通りは!
……じゃなくて、なんだ?この、軟体動物を無慈悲に圧殺したような効果音は。
俺はその態勢のまま、効果音がした手を見る。
その手の下には、人間の頭があった。
「オッヒョォォォ!」
なんとも情けない叫び声だな。
……違う!何でここに人の頭が!?
俺はそいつの顔をみる。
シーツを口まで被っていて、全体は見えないが、かなり端正な顔立ちをしていた。
髪の毛は綺麗な金髪。たぶん、地の色だろう。それがさらに容姿を派手にしていた。
それにしても、こいつ俺があんな奇声をあげたのに、安らかな顔してやがる。
…ま…まさか……死んでるとか……?
俺はゆっくりと手をのばし、シーツをつかむと、それを一気にひっぺがした。
なーんだ、男か。
……じゃなくて、なんだ!このなめらかな指通りは!
……じゃなくて!なんでここに金髪少年が!
……じゃなくて!……ん?そうだよ!……ん?なにがそうなんだ?あれ?じゃなくてってなんだ?ジャクソンか?ジャクソンだ!ジャクソンクレイジー!!
ところでジャクソンって誰ですか?
「…うぅん……」
やばい!起きちゃう!どうしよどうしよ!
そうだ!隠れよう!
金髪ボーイは重たそうに目を開け、寝呆け眼でこちらを見ていた。
大丈夫…ばれへんよ…おいらは…無…そう、無になるんだ。この部屋の一部…銅像みたいなもんだ…。
銅像すごいぞ、どうだぞーう!
「政人さん?なんでタンスの上でニヤニヤしてるんですか?」
「……ハイ!ジャクソン!目覚めはどうだい!?」
「……僕はジャクソンじゃないです。」
―――――。
ジャクソンはリビングテーブルの椅子に行儀よく座っている。俺はそれを挟んで向かいだ。
「なんだって!?かくかくじかじかって、マジか!」
「政人さん。それじゃ読者に伝わりません。」
「いいんだよ。俺の心の中でそっと伝えるから。」
「その言葉、なんだかカッコイイですね。」
「だろ?」
では、カッコよく説明しよう。…フッ……。
こいつの名前は斎藤充。親父の弟の息子、つまりは従兄弟だな。ハッ。
こっちに引っ越してきたらしく、伯父が、俺がここに住んでる事を知っていたので、充、おまえ挨拶しに行ってこい。との事だ。ヒッ。
で、朝10時頃に来たらしいが、誰もでないし、ドアも開いていたので、家に入ったら俺が寝てたと。フッ。
その姿を見たら眠気が襲い、今に至る。ヘッ。
……ホが余ったな。
「てかなんだ?俺の姿を見たら眠気が襲ってきたって。俺の眠る姿は睡眠薬か?」
「いやぁ、そこまでいいものじゃありませんよ。そう!鈍器で頭を殴られたような強制的な眠気?みたいな?政人さん。あなたは鈍器です。」
「断言してんじゃねーよ!なんでおまえに鈍器呼ばわりされなきゃいけないの!?」
俺はタバコに火を付け、浅くふかした。
しかし、あのおっさんが金髪美女と結婚した事は知ってたけど、息子がいたとはな。
ん?そういえば……
ぐぅ〜
ジャクソンの腹からかわいい音がして、ジャクソンは腹を押さえる。
「お腹すきましたね。」
ズゴゴゴゴ……
俺の腹からかわいい音がして、俺は腹を押さえる。
「かわいくないから!」
「あ、そう?」
―――――。
「えーと、これ、ください。」
俺はメニューを指差した。店員は愛想笑いをうかべながら、手際良く会計をすませる。
ここは“ハン・バーガー”。駅前のバーガー屋だ。
正直、俺は金が無い。貧乏学生はファーストフードが一番。
「ジャック。おまえもなんでも好きなモン頼めよ。金は俺が出すからさ。」
俺は後ろでおずおずしていたジャックに話し掛ける。ジャックはそれを聞くと、顔がいっきに明るくなる。
「いいんですか!?」
「おう。」
「じゃあ〜……」
ジャックはそう言いながら、メニューを眺める。
ま、ハンバーガー屋なんて、安いもんだしな。
「じゃあ、コレノセットください!」
……マジで?
「かしこまりましたー!5400円になりまーす!」
高くなってるし!どんだけ贅沢すればそんな値段になるの!?
しかし、“なんでも”と言った手前、それはダメなんて言えるはずもなく、ちょっと涙目になりながら会計を済ませた。
二階に上がり、窓際のプラスチックで出来た椅子に腰掛けた。
「ハァ…なんでハンバーガー屋でこんなに金使うの…?」
「政人さん、いただきまーす!」
ジャックも俺に続いて、向かいの椅子に座ると、すぐさまハンバーガーにかぶりついた。
しっかし……。
俺はまわりを見渡す。
今は昼時なので、それなりに込んでいる。
その客達、主に女が、こちらを見て騒いでいる。
こいつ目立つな……。
金髪は今時珍しくもないが、原因は顔だな。
かなり端正な顔だ。
外国特有のパーツが、綺麗にそろえられている。
表情も、海みたいにくさってなく、人懐っこい印象を受ける。
年上にモテるタイプだな。
「…どうしたんですか?僕の顔に何かついてます?」
ジャックは口の周りにケチャップを付けながら、無垢な青い瞳で上目づかいで尋ねる。
…クッ…こいつが女だったら…。
俺は、ティッシュでジャックの口に付いてるケチャップ拭き取ってやると、ジャックは無邪気な笑顔でお礼をした。
…クッ…こいつのお股に男の勲章が付いていなければ……。
「金髪野郎!やっと見つけたぞオラァ!!」
突然響いたその怒声に振り返ると、不良が三人、階段付近で赤い顔をしていた。
「マズッ…政人さん、逃げましょう!」
「へ?なんで……」
「いいから!」
ジャックはそう言うと、俺の手を引っ張って、階段へと走りだす。
とっさの事に、不良達は怯んだ。
ジャックは俺の手を引っ張りながら階段をかけおりる。
自動ドアに体をねじ込むようにして外に出た時に、やっと手を離した。
俺が後ろを振り返ると、不良達はすでに階段を下りて、俺達に向かってきている。
「オイ!どういう事だよ!?」
人混みを掻い潜りながら、隣にいるジャックに話し掛ける。
「いやぁ〜、説明するほどでも無いんですけど……朝、政人さんの家に向かう途中、道端であの不良達が一般人にからんでいたんですよ。それを注意したら不良達が逆上して。むかつくんで一発殴って逃げてきました☆」
ジャックは語尾にエヘッ、と付くようなノリで喋る。
「おまえ…そんな無茶な……てかなんでそこで逃げるんだよ!だから怒るんだろ!」
「いやぁ〜、僕、喧嘩した事ないんですよね。」
じゃあ殴んなよ!
「つーか、なんで俺まで逃げてんだ!?そうだよ!俺は関係ないんじゃん!」
「でも、僕と一緒に逃げたから仲間と思われましたよっ。ほら、同じ穴のクジラ?」
「同じ穴のムジナだ!」
ジャックは心底嬉しそうにしている。
こいつ確信犯か……。
「しょうがねぇ…。めんどくせーけど、あいつらをブッたおすか……。」
「やった!さすが同じ穴で死にます!」
「どんな死亡宣告!?同じ穴のムジナだっつってんだろ!とりあえず駅前から離れて、裏路地に連れ込む!付かず離れずでいるんだぞ!」
「はい!りょうかいです!四十路肩のおっさん!」
「それけなしてるとしか思えねーぞ!!韻踏めばいいと思ってんの!?」
ああ、また変な奴と関わっちまった……。ロリフェイスに騙された……。
あ、これサブタイトルに使おう。
こうこうせいを読んで頂き、ありがとうございます!さらに後書きまで見て頂いて……。えーと、今回は予告です。次回の後書きに保存されたまま忘れ去られていた小説を公開します!こうこうせいと言う仮タイトルだったのですが、見てみた所、自分でも何がしたかったのか全くわかりません。会話文が2回続くだけです(笑)えー、では(笑)