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第19話 ゲームは当分やりませんよ。ええ。

夜。よい子はおねむの時間だ。


「……ひまひま〜〜」


俺は自分のアパートで、亀吉さんに向かって喋る。


亀吉さんは、興味が無さそうにそっぽを向いていた。


今日は土曜日。明日も休みなのに、まったく予定がない。どうしたもんか。


「あっ、そうだ!」


俺はリーダーらしい奴から、ゲームを奪った事を思い出した。

もらったはいいけど、一回もやってなかったんだよな。暇だしやってみるか。


俺はいそいそとゲームをセットした。本体は新しく、薄いアレだ。薄いアレ。


ソフトは何にしようかな……。


ソフトは軽く50を越えていた。あいつゲーマーだな。


どれも見たことのある有名なソフトなのだが、一つ、見慣れないソフトを目にした。それを手に取る。


それはRPGらしい。


見慣れないソフト程、好奇心をそそるものはない。

これにすっかな。


ディスクをセットして電源を入れる。


テレビ画面に、タイトルがあらわれる。


『パパ・ゴラスの大冒険?』


タイトルおかしい!


俺は説明書を見る。


『ストーリー。舞台は中世です。』



………それだけ!?ストーリーもクソもねーよ!

……まあいい。とりあえずゲームスタートだ。


俺はゲームスタートと書かれたアイコンを押す。


ピコーン!


小気味のいい音がすると、画面が変わり、青年が寝そべっている姿が映る。こいつが主人公らしい。結構リアルだな。


『あー、タバコうめー。』


ずいぶんと不健康な主人公だな!


そこに一人のじいさんが駆け寄ってきた。


『殿!大変ですぞ!』


殿!?中世なのに!?


『おお、じぃ。どうした?』


『殿の婚約者、姫がさらわれてしまいました!』


『テメーだからいっつも気を付けろって言ってたろうが!姫はさらわれるためにいるような存在なんだって!どうせ俺がいくんだべ?クソだりー!』


この主人公言っちゃいけないことバンバン言ってる!


しかし物語が進むと、結局そいつが行くことになった。

姫は、どうやら、悪いドラゴンにさらわれた様だ。ま、ありきたりな話だな。


そして、ようやく俺が主人公を動かせるようになった。


フッ、俺はゲームは得意なんだぜ?まず、こういうのは、タンスやらを調べまくるのが定石だな。


俺は見知らぬ家に、堂々と家宅侵入をして、タンスを調べた。


『何もない。』


なんだ。ハズレか。


『俺の両手には、もう何もない……。』


こいつタンスに何もないだけでどんだけ落ち込んでんの!?


俺は隣にあるもう一つのタンスを調べた。


『切れ味のよさそうなナイフがあったが、それはいらない。』


いるよ!?武器だよ!?それ!


『俺はナイフを武器だとは思わない。本当の武器、それは心ない人の言葉です。』


タンス調べただけでこいつは何を言いだすの!?


『俺はタンスにナイフをしまうと共に、心につらい過去をしまった。』


つらい過去はしまっていいからナイフを出せ!


『あんた勝手に何やってんの!』


いきなり家にいたおばさんが怒鳴りだした。

そりゃ、他人が家にズカズカ上がり込んできたら怒るよな。


『違うよ!俺だよ!マイクだよ!』


こいつなりすましやがった!


『マイクはアタシの名前だよ!』


失敗だ!


パパは家を追い出された。結局ナイフは取れなかった。


『……しょうがない。ドラゴンの所へ行こう。』


そうそう、早く行こうぜ。……っておい!なんで隣の家に行くんだよ!操作きかねぇし!


ガチャ


『ドラゴン!姫をさらったな!覚悟しろ!』


『え!?何!?』


パパ違う!それ一般人!


『くらえ!おりゃ!』


バキッ!


殴っちゃったよ!勝手に家に上がり込んだ上に殴っちゃったよ!


しかし、殴られた一般人は態度が豹変した。


『フッフッフッ、バレてはしかたがない……。』


一般人はそう言うと、光に包まれ、ドラゴンへと変貌した。


おお!すごいぞパパ!よくわかったな!


『え?マジで?ノリだったのに……』


こいつノリで一般人殴ったの!?


パパの気持ちを無視して、ドラゴンとの戦闘が始まった。


展開早いな……。てか、武器なんにも装備してないけど……。


『ドラゴンの攻撃!かぎづめ………を黒板につけて引っ掻く!』


普通にかぎづめで攻撃すればいいじゃん!なんで間接的!?


『パパはその音に苦しがったが、それをバネにして、さらなる高みを目指そう!』


後半の文いらねーよ!ただの願いじゃねーか!


『パパの攻撃!“おまえの母ちゃんでーべーそー!”』


最低の悪口だよ!


『俺……母ちゃんはいないんだ…』


うわー…最悪の形で過去を知らされたよ…。


『ごめん……でも、そんなつらい過去をバネにして、さらなる高みを目指そう!』


なんのなぐさめにもなってねーよ!?さっき言ってた事そのまま言っただけじゃねーか!


『ドラゴンの攻撃!口から火を吹いて、焚き火をし、その煙りをパパの方にやった!』


だから攻撃が間接的で陰湿なんだよ!!


『目が痛い!』


これは結構ダメージ食らったんじゃないの?…いままでの中では。


『パパはかなりのダメージを受けた。そのダメージは数字では計り知れない』



計り知れよ!わかんねーだろ!!


『パパの攻撃!あっ!UFO!と言い、相手が注意をそらしたスキに、殴る攻撃!』


もう作戦言っちゃってんじゃねーか!!


『え!?UFOどこ!?』


引っ掛かった!どんだけ純粋!?


『え!?UFOいるの!?どこだよ!?』


テメーが言ったんだろ!!


パパとドラゴンはいつまでもキョロキョロしている。


その時、どこからか姫があらわれた。

って普通に歩き回ってんじゃん!さらわれたんじゃないの!?


『てめぇらなめとんのかァァァ!!』


バコーン!


初めてまともな攻撃したのは姫かよ!


『姫は戦闘に勝利した。しかし、パパも勝利していたのだ。つらい過去に。見えない明日に。さあ、君もつらい事をバネにして、さらなる高みを目指そう!END』


「……てめぇらがなめとんのかァァァ!!」



このゲームは、もう二度とやらないだろう。


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