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第17話 シェフ、おまえからあたりめを取ったら何が残るんだ?

今は昼過ぎ。


「…暇だポ…」


俺は病室のベットの上で、誰に言うでもなくつぶやいたポ。


入院3日目に入り、いい加減、この緩い空気に飽き飽きしていたポ。

後は検査だけで、もうすぐ退院できるらしいが……。


「よっ」


突然聞こえた声と共に、カーテンが開く。


「シェフ…てめぇのこのこと……」


シェフこと、あたりめ太郎は、頭を掻きながら喋る。


「いやぁ、わりーわりー。その様子だと、相当呪いに振り回されたね。」


「当たり前だポ!てかおまえ何しにきたんだポ!」


「お見舞いだよ、お見舞い。ほら。」


シェフは(もうシェフに決定)、もっていた段ボール箱を俺のベットに置いた。


「んだ?これ。」


「開けりゃわかるよ。」


シェフは自慢気に喋る。


お、なんかすごいもんなのかな…。


俺は少し期待しながら、段ボール箱を開ける。


「って中身全部あたりめじゃねーか!」


中型テレビ程の段ボール箱には、ぎっしりとあたりめが入っていた。しかもそのままで。


「おまえなんで袋詰めされてないポ!?まさかシェフの手作りとか!?」


「ちがう、さっき拾った」


「あんた一体何しにきたの!?嫌がらせとしか思えねーよ!」


「まぁまぁ、一個食ってみ?で、大丈夫だったら俺にちょうだい。」


「毒味させにきたの!?しかも大丈夫だったらもらう気かよ!!」


「まま、いいじゃないの。」


シェフはそういうと、パイプ椅子に腰掛けた。


…ま、お見舞いに来ただけ、よしとするか……。


「珍味ばっかり持ってきてどうするんだポ。略して」

「略しちゃダメ!!あんたそれ言いたいがために語尾にポって付けてたのか!」



―――――。



「……ハァ…」


今の状況にため息がでる。


あたりめは結局、シェフがもりもり食ってる。


「ああ、幸せってこういう事をいうんだな。」


なんか語っちゃってるけどおまえイカくせぇ。


「珍味ばっかり食いやがってポ。イカくせぇんだよ。略して」

「ダメ!それだけはダメだよ!?」


「てか、おまえ本当に何しにきたの?イカの香りを運びにきただけ?」


「いや、実はお見舞いに来たんじゃないんだ。」


シェフはやっと真剣な顔になった。しかし、相変わらずイカくせぇ。


「実は、この病院に、こっくりさんが逃げ込んだらしいんだ。」


「は?どゆこと?」


「前に言ったろ?こっくりさんは全国にいっぱいいるって。そんで、こっくりさんには、受け持つ地域ってのがあるんだ。この病院は俺が受け持ってる。」


「ふーん。で?逃げ込んだって?」


「違う管轄のこっくりさんが、俺の管轄に来て荒らしてんだよ。それを本部に報告したら、どうやらこっくりさんが一人、ここに逃げ込んだらしい。で、それを捕まえるのがここに来た理由。」


アンタ等本当にこっくりさん?なんか話でかくね?


「じゃあさっさと捕まえてこい。がんばれよ。」


「ああ!がんばろうな!」


シェフはそういうと、俺の肩を笑顔で叩いた。


「……何、この手?」


「手伝って…。」


「ハァ!?何言ってんだよ!?」


「そいつ、かなり凶悪らしいんだよ……。たのむ!お礼はするから!」


「ふざけんな!どうせ、そのお礼ってのもあたりめなんだろうが!」


「なんでわかんの!?…わかった。段ボール2箱だ。これでいいだろ?」


「数じゃねーよ!今の時代乾き物じゃ何も解決しねーんだよ!?」


「やれやれ、困った坊やだ。3。これで手を打とう。」


「何おまえ!?なんでおまえの方が偉そうなの!?」


「ハァ…あたりめより乾いた時代だな…………」


「なんか遠い目してカッコつけてるけどカッコよくないからね!?イカくせぇとしか思わないから!」


「そういや、そのこっくりさん、女らしいよ」


「さて、行くか。」



―――――。



「「こっくりさんこっくりさん、おいでください」」


紙に“はい”と浮かんでくる。


俺とシェフは、まず相手の居場所を突き止めようと、そのこっくりさんを呼んだ。


今回は、シェフが用意した特別製の紙らしく、紙にそのまま文字が浮かんでくるみたいだ。


「ばれないようにやるんだぞ?」


でも、こいつにばれないようにとか無理なんじゃねぇの?


シェフが自信たっぷりに答える。


「ああ、わかってるよ。えー、こっくりさんは今どこにいますか?」


やっぱり無理だ!



『なんでそんな事を聞くのかしら?』



「あなたに会いたいからです。」


本当に正直者だよ!ピノキオも真っ青だよ!



『あなたの容姿は?物に例えなさい。』



食い付いたよ!

お題まで出してきやがった!


「田舎の駅のエレベーターですかね。」


なんか可哀相な存在じゃん!



『そっちの彼は?』



「彼は湿気たマッチです」


遠回しの“使えない”じゃねーかよ!



『素敵ね』



こいつは俺等のどこに魅力を感じたわけ!?



『私は橋河病院の屋上にいるわ。』



こっくりさんはそう答えると、文字は消え、オーラも消えた。

橋河病院とはここの事だ。


よし、これで細かい居場所はわかったな。後は屋上に行って捕まえるだけだな。



―――――。



俺等は屋上にむかったが、女の姿はなかった。


俺は辺りをくまなく見回す。


「あっれー…何でいないんだ…?」


「あなたが湿気たマッチ?本当にずいぶんとシケてるわね。」


俺はその声に振り返る。

なんだか声が低かったけど……風邪でも引いてんのか?


俺はそいつの姿に、一瞬我を忘れる。


ボディコンみたいな服装。それだけなら全然かまわない。

毛深いスネ毛。

毛深い腕の毛。

青いヒゲ。

そして割れたアゴ。


「政人!こいつだ!本部から送られてきた写真とピッタリだ!こっくりさん!通称、お妙!おまえを管轄不法侵害の罪で逮捕する。」


「なっ!あなた本部の回し者ね!」


「シェフ…おまえ…女らしいよって……」


「え?だから女らしいだろ?口調が。」


「失礼ね!私は心だって女らしいわよ!」


「あ、ですよね。」


口調が…?女らしい………………。


「てめぇら…俺を騙したのか……」


シェフとお妙の動きが止まる。


「…ま…政人…?」


俺は態勢を低くして、拳を構え、力をためる。


「し、湿気たマッチ!待ちなさい!私は髪型も女らしいわ!」


「ウォォォォ…!」


「まっ、政人!待て!ほら!あたりめあげるから!」


「行くぜ……!ウルトラギャラクシーマキシマムインパクトマイネバーギブアップ!(超銀河の最大の衝撃を〜私は決して諦めない〜)」


バキャッ!


「「た…タダのパンチじゃん……」」



その後、お妙が現われる事は、二度となかった。

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