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第1話 明日の天気は雨だそうですよ……。

チュン、チュン


小鳥のさえずりが聞こえてくる……。


眠たい目をこすりながら、ベットからゆっくり起きて、窓を開ける。


窓からは、春のさわやかな風が吹き付け、俺の頭が序久に冴えていった。


「んんーーっ……」


伸びをすると、背骨がボキベキッと愉快な音を出した。


「フッ、俺の背骨はクレイジー。」


名言がまた一つ生まれた。俺は壁の時計を見た。


時計の短針は、12を指していた。

「……あ。遅刻。」




「斎藤。おまえ毎日毎日遅刻しておもしろいか?」


「いえ、全く。」


「しかも昼に登校とは……どうすれば遅刻しないか、考えた事は無いのか?」


「いえ、全く。」


「おまえ、先生の話聞いてるか?」


「いえ、全く。」


「……もういい。次は遅刻するな。」


ため息をつきながら、教師は去っていった。


昼休みの始まりに教室に着くようにしたのだか、遅刻届を速攻で書いてしまったため、教室に早く着いてしまい、4限の教師に小言を言われる羽目になった。

フッ、書くのが速いのも考えものだな……。

そんな事を教室の席で考えていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。


「政人。今日も遅刻だな。」


こいつは柏木克也。


「おお!俺の唯一無二の親友、柏木克也ではないか!俺のダチの中では一番の秀才で、顔もなかなかだ!歳は十六才。俺と同い年!小学校からの幼なじみなんだよ!」

「なんだその人に説明するような言い方は。」


「まあ、そう言うな。人に説明したんだから。」


「…身も蓋もないな。」


「まあ、そう言うな。人に説明したんだから。」


「…身も蓋もないな。」


「まあ、そう

「もういい!」


「フッ、俺のとろけるようなボイスに勝てるものは皆無だな。」


克也は、どーしようもねぇなこいつ、と言いたそうな顔をしていた。


「どーしようもねぇなおまえ。」

「おまえが言うな!」


克也は、なんでやねん!と、芸人がやりそうなつっこみを俺にやろうとした。


フッ、そうはいかない。

俺は華麗にジャンプをして克也のつっこみを避けようとした。…つもりだった。


克也のつっこみが意外に速く、ジャンプした俺にベストタイミングで、なおかつクリティカルヒットした。


俺の股間に。


「もぎゃーーっ!!」


ジャンプ中だった事が災いした。混乱した俺は着地を失敗して足が曲がってはいけない方向に曲がってしまった。


「おきゃーー!!!」


「おっおい!大丈夫か!?」


「ううん……答えは否だよ…?わかるでしょ…?」


「ごめん!よし、保健室に行こう!いや、救急車だ!」


救急車…?だめだ。そんな大事になったら、学校にもう行けない。それに、病院になんて説明する?ボクの大事なおまたにつっこみがはいったんでちゅーとでも言うのか?絶対に嫌だ。


ここは、平然を装わなければ……。


「も、もう大丈夫だ。痛くなくなった。」


「え?本当か?」


「ああ、逆にすがすがしい気分さ。はっはっはっ。」


「でも、顔が真っ青だぞ?」


「うん、すがすがしいからさ!はっはっはっ…。」


「は?」


「……あっ!急に用事を思い出した!じゃ、俺はこれで。」


俺は教室のドアを開け、出ていった。


「お、おい!……」


……ふう。なんとか場はしのげたな。よし、保健室に行こう。すぐ行こう。


保健室に向かう途中、みんなが俺を見ていた。そりゃそうだろう。顔が真っ青で、股間をおさえながら、足を引きずって歩く奴なんて、もし俺が見たなら爆笑しながら、優しく腰をさするだろう。俺はそう言うやつさ。

しかし、すれ違う奴等は、俺を見たとたん、笑いを堪えるか、可哀相な奴を見るような目をするだけだ。


ちっ。この中に腰を優しくさすりながら、大丈夫?と心配そうに声をかける可愛い娘はいないのか?

ん?そうだ。女限定だ。野郎にそんな事されて嬉しいか?


「大丈夫?」


そうそう、こんな感じで…………………。

え?


「大丈夫?」


げげげ現実になっておる………。しかも想像通りに優しく腰をさすって。

そして想像通りに可愛い。顔の一つ一つのパーツはとても綺麗で、その上整っていて、美人系だ。黒い髪は長く、腰の辺りまである。そして肌は透き通るように白く……って、モロだ!ドンピシャですよ奥さん!


「お、お嬢さん。前の方もさすってはくれんかね?」


「え?」


「いや、何でもない…」


あ、危ない…。心の叫びが口に出てしまった。


「親切なお嬢さん。もう大丈夫。ありがとう。いー薬DES。」


「え?」


「いや、何でもない…」


「大丈夫ならよかった!じゃあ、私、いきますね。」


……行ってしまった。

あ。名前聞くの忘れた。

……可愛かったな。

腰にまださすられる感覚が……。


……くぅ………うはっ………あひゃっ………あひゃ?


…そうだ。俺は保健室に行くんだ。余韻に浸ってる場合じゃない。


階段を降り、やっと保健室が見えてきた。

ふう、やっとついた…


ドアの前に立つと、見慣れた奴が保健室にいた。


「ガラガラ……」


「あ、政人。……何ガラガラ言いながらドア開けてんの?」


「いや、別に…。」


「…どったの?そんな青い顔しながら、股間をおさえ、足を引きずって。」


「的確な説明ありがとう。」


「どうも。」


「こいつは、渡辺里奈。中学からの友達だ。頭は悪くない。顔は…まあまあだな。もっとも、俺のタイプじゃないが。」


「誰が政人のタイプになんかなるか。で、何その人に説明するような言い方は。」


「まあ、そう言うな。人に説明したんだから。」


「ふーん。」


……ふーんて。可愛くねぇな。

まあ、こんな奴は放っておいて、先生に見てもらおう。


「……先生は?」


「どっかいった。」


「えー!そんなのヤダヤダー!」


「………。」


「ヤダヤダー!」


「………。」


「ねぇ、無視しないで?」


「そんな事言うからだよ。」


「そんな事って……。ひどい……よよよ…。」


「………。」


「よよよ…。」


「………。」


「よよごめんなさい。」


里奈が椅子を持って、俺に振ろうとしていた。


「もうやめてね?」


「……よよはい。」


今度は花瓶を投げようとしていた。全く。恐ろしい女だ。


里奈は花瓶を置いて、椅子に座ったので、俺は近くのクルクル回る回転式の椅子に座った。


「……で?なんで超健康児の政人が保健室に来たの?」


「いやなに、保健の先生とイケない遊びをしようと思ってね。はい、ごめんなさい。」


「もう冗談はやめてよね?」


花瓶を持ちながら笑う里奈。うん。もう冗談はやめよう。


「で、なんで来たの?」


「ボクの大事なおまたに柏木のつっこみがはいったんでちゅー…っておい!花瓶を投げようとするな!本当だって!」


「言い方が悪い。」


「わかった!もうふざけないから!」


「よし。で?それだけ?」


「いや、足首もひねっちゃってさ。」


「ふーん。あ、じゃあ先生の代わりに私が診てあげるよ!どこ?」


そう言って、里奈が俺の足首を触る。

里奈はワイシャツのボタンを2個ほど開けていたので………。


うっ……ナイスアングル!


「ピンクですな…。」


「え?」


「「………。」」


バキッ


キンコンカンコーン……


「おお、政人。さっきは悪かったな……あれ?殴られたのか?」


俺の頬は痛々しく腫れていた。


「ああ。ちょっと野獣のブラを見たらな……」


「…?」



キンコンカンコーン……


「よしっHRこれにておしまい!」


担任の声と共に教室が一斉に騒がしくなった。


ふう、やっと終わった…。


「おい、政人。さっきのお詫びも兼ねて、帰りにハンバーガーでも食わないか?」


「おっ!克也ちゃん太っ腹!……と、太っ腹ついでにもう一人いい?」


「…?」


俺は隣の教室に入り、辺りを見回した。

おっ、いた。


「おーい、そこの綺麗なお嬢さん。」


「ふん。」


機嫌悪いな。


「僕の奢りで、すてきなディナーでも行きませんか?」


「おっけい!」


機嫌良いな。


「なんだ。もう一人って渡辺の事か」


「あれ?克也もいっしょ?」


「ああ。さて、メンツも揃った所で行きますか!」


俺達は駅前のハンバーガー店の二階で食べていた。


「……ちょっと。」


「どーした、里奈。食べないのか?」


「これのどこがすてきなディナーなのよ!?」


「フッ、おまえはハンバーガーの良さがわかっていないみたいだな。ハンバーガーっていうのは肉も摂れ、野菜も摂れ、ピクルス(?)だって摂れちゃうすてきな」

「もういいもういい!……ハァ、政人に期待したのが馬鹿だった…。」


「まあ、そう言うな。ハンバーガーだってうまいんだから。」


「…そうだね。もうヤケだ。食べて食べて食べまくってやる!」


そう言うと、里奈は鬼神の如く食べはじめた。克也が不安そうな顔をしている。


「お、おい。俺今日そんなに持ち合わせてないんだが…。」


「知らん。俺の股間につっこみを入れたおまえが悪い。さて、俺も食うか。」


「ちょっ…そんな…。」


鬼神がもう一人加わった。最初に頼んだハンバーガーは、すぐになくなった。


「ふう、食い足りないな。もっと注文するか。克也、金。」


「はい…。」


結局、俺と里奈で15個ほどたべた所で、克也の金が底を突き、俺達は店を後にした。


「克也さん、ゴチっす。」


「ゴチっすー!」


「くそっ、おまえ等にはもう絶対奢らないぞ……。」


もう夕方か…。

しかし、克也はちょっと可哀相だったな。

俺等が10個を越えたあたりで、少し涙目になっていたぞ。


「さて、腹もいっぱいになったし、帰りますか。」


「そうだな。」


俺達は、ハンバーガー店の前で解散した。



ふう、なんとか里奈の機嫌は直ったな。

あいつの機嫌が悪いと、ずっと無視されるからな。

俺のボキャブラリーを持ってしてもあいつは笑いもしない。

あれは屋上で一人でたそがれたい気分になるぞ。


あ、そういや、シャンプー切らしてたな。

晩飯買うついでだ。スーパーに行くか…。


スーパーに着き、今日の晩飯を考えながら、食品コーナーを回っていると、


「あ。」

「あ。」


俺の腰を優しくさすってくれた、あのドンピシャの娘がいた。


「さっきの!あん時はどーも。」


「ああ!見たことあるとおもったら!いいんですよ!困っている人を助けるのは当たり前ですから。」


ああ、その微笑む顔も可愛い…。


「次は前もさすってもらおうかのう……」


「え?」


やばい…また心の叫びが…。


「いや、何でもない…あ、そういや、まだ名前聞いてなかったな」


「あ、そうですね。私の名前は、村上綾です。」


「綾ちゃんか。俺の名前は斎藤政人。よろしく。」


そういって、俺は手を差し出した。


「はい、斎藤さん」


「いや、政人でいいよ。」


「ふふ、わかりました。じゃあ政人さん。よろしくね。」


彼女は俺の手をキュッと握り返した。そう、キュッと…。

…………あひゃっ!

もう、一生、手、洗わない!もう、一生、手、洗わない!もう

「どうしたんですか?ハァハァ言って。」


「…ハァハァ………はっ。い、いや、別に…。そういや、綾ちゃんは買い物?」


「あ、はい。今日の晩ご飯の当番、私なんです。だからおかずの材料を買いに。政人さんは?」


「俺も似たようなもんさ。」


「そうなんですか。」


「そうなんです。」


「うふふ。」

「あはは。」


「あ、政人さんの晩ご飯のメニューは?」


「うーん、今日はアジのソテーでも作ろうかな。」


「アジのソテーですか!」


「そうですよ。」


「うふふ。」

「あはは。」


「私は何にしようかな。」


「そうなんです。」


「え?」

「あはは。」


ん?少しタイミングが早かったか?


そんな会話をしながら、買い物をすませ、綾ちゃんとの別れを惜しみながら、スーパーを後にした。


―――――――…


ガチャ…


「ただいまー…って誰もいないか。」


すっかり遅くなったな…


そういや、母さんから仕送りがきてたな……。

まあ、どうせ諭吉が十五枚入ってるだけだろう。


わかってると思うが、俺は一人暮しをしている。まあ、仕送りが来るぐらいだからな。

理由は、まあ、簡単だ。

父さんが急に転勤になり、県外に引っ越す事になった。俺はその時、丁度高校を合格した所だった。まあ、県外から通うなんて真っ平ごめんなので、俺が一人暮しを提案したら、俺には関心が無いような親なので、あっさり了承された。

だから俺は学校の近くのアパートを借りて、親の仕送りと、俺のバイト代で生活している。


「しかし、仕送りは金だけなんて。愛が無いよ、心の魂(?)がよ。な?亀吉さん。」


俺はじいさんを飼っている。


と、思ったか?

なわけないだろう。


もとい、俺はカメを飼っている。

名前は亀吉さん。

さん付けしたら、亀吉さんさん。太陽サンサンみたい。

……。


まあ、この名前付けた理由は……無い。なんとなくだ。しんぷるいずべすと。男に理由はいらないって奴だ。


「うし、晩飯完成。」


とまあ、こんな亀吉とかゆーくだらねーカメのくだらねー話をしている間に、晩飯は完成した。


フッ、我ながら上出来だ。


「ガツガツモグモグパクパク……くはぁー!うまかったー!………さっいただきまーす。」


口で言うだけじゃ食べ物はへらないみたいだな。

て言うか、一人でこんなボケてもむなしいだけだ。


そして、一人でもくもくと食べていると、ピリリリリッと舌に強烈な刺激を感じた。なっなんだ!?この舌の、舌の……やめよう。

むなしい……。


俺の携帯のメール受信音だ。


むふふ…。

そう、俺は綾ちゃんとスーパーでメルアドを交換したのだ!

ハァハァ、待ちに待ったぜ…!もう、じらすのがうまいね!

さっ!早く内容を!

ボタン連打だぁぁあぁぁあぁぁぁっっ!!!


「俺は一人じゃなーい!」


『メールマガジンお天気ニュース!明日の天気は雨。皆さん傘を持って出かけましょう。』


「…………はい…。」


その日、綾ちゃんからメールが来ることはなかった。俺が枕を涙で濡らした事は言うまでもない。

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