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真実の気持ち  作者: kokoa
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第二部 トモのきもち

 その夜、僕は今日のことを思い出してなかなか寝ることができなかった。くらい部屋、パソコンの画面に映るオーラの資料、……そして明らかに普通じゃないケント君。計画、実験台、謎ばかりが頭に浮かびあがる。それにすべてが急過ぎる。僕のからっぽの頭ではこの展開についていけなかった。ケント君は何をしようとしているのだろうか。いいことでないのは確かだが……。カズヤは何か感づいただろうか。そういえば、あの後カズヤとは一言も交わさなかった。カズヤもカズヤで頭がいっぱいなのだろう。親友があんなことになったんだ、話す余裕もなかった……いや一人で何とかしようと思っているのかもしれない。だがそんなことはさせられない。僕もあの時いっしょにいたんだ。聞いてしまったからには僕にも義務はある。一人ではやらせない、明日誰にもばれないように話す。そして二人でケント君を……止め……る……


「サクヤ! 早く起きなさい!」

 僕はうるさい母さんの声で目覚めた。いつもなら着替えてからこの声を聞くのに、昨日は考えてて全然寝れなかったからな。そうのんきに考えるがそんなゆっくりしてる暇はない、ケント君の件でも遅刻の件でも。頭の中とは裏腹に、身体の方はすばらしくテキパキと動いていた。僕はすばやく着替えを済ましてリビングに下りた。

 いつものように、母さんとサキ姉に急かされながら朝食を食べて、いつものように学校に行く。外は僕の心とは対称的に雲ひとつない快晴だった。あいかわらず僕はいつもどうりサキ姉といっしょに途中まで歩いた。一つだけいつもと違ったのは、マユの様子だ。会ってあいさつするなり僕の顔を覗きこみ、表情を伺っているようだった。僕はそんな様子のマユに違和感を抱いたが何も聞かないまま、学校の近くまで来てしまった。そんな時、突然マユが口を開いた。

「サクヤ、ちょっと話があるの。誰にも聞かれたくない話だから二時間目の放課、屋上に来て」

 うつむきながら言ったので表情は分からないが、声は小さく僕とマユの距離でやっと聞こえるくらいの大きさだった。僕は何だろうと思ったが、別に断る理由もなかったのでこう答えた。

「うん。わかった。」

 なんとも普通な返事だと自分でも思った。もちろんこれ以上会話は続かず、二人とも無言のまま学校に着いた。

 教室に着くと、机におとなしく座っているカズヤの姿が目に入った。カズヤはどこを見るともなく、ただ一点をみつめていた。もっぱらケント君のことを考えているのだろう。僕よりもはるかにその思いは強く思えた。

 ふとケント君の席を見るとそこにケント君の姿はなかった。僕たちに見られたことによって来れなくなったに違いない。学校に来ないことによってそれだけ計画は速く進んでしまう。といっても何をやっているのか手がかりは何もない。僕はもう一度空いた席を見た。すると昨日の出来事が鮮明な写真のように、脳裏に映った。口を横に裂けたように開き、目は限界を超えるぐらいに開き、口元は僕の怯える表情を楽しむかのように笑う。ケント君と呼ぶに相応しくない、まるで別人。駄目だ、いくら忘れようとしてもしっかり焼き付いてしまっている。

 そのとき僕を現実に戻すかのようにしてチャイムが鳴り、先生の話が始まった。

「今日はケントは休みか?」

 担任のヨシカワ先生が事もなげに言った。昨日のことを知らなければそうなるか。風かなんかだと思っているのだろう。僕とカズヤ以外の人ってなんてのんきなんだろうと、知ってる人と知らない人の差に驚く。その後は諸連絡などどうでもいい事をだらだらと聞き流して、先生の話は終わった。そして一時間目が始まった。

 僕は一時間目の授業をほとんど何も聞かなかった。何の授業かも分からない。耳に入らなかったと言った方が正しいかもしれない。昨日のケント君のことでせいいっぱいだったのに、今度はマユときたもんだ。もう僕の頭はパンク寸前、まさに幅一メートルの崖の上をふらつきながら歩いているようだった。

 そして何も頭に入らないまま二時間目が終わってしまった。授業の終わりを聞きなれたチャイムが告げ、僕はマユの言っていたことを思い出した。そうだ今から屋上に行かなければ。誰にも聞かれたくないと言ってたのを思い出し、誰にもばれないようにいち早く教室を出た。

 廊下には授業が終わって間もないということもあって、生徒は数えるほどしかいなかった。二時間目の長い放課に急いで廊下に出ようと考える人はあまりいない。みんなゆっくりしたいのだろう。僕は廊下を急いで歩き、三年生のクラスのある三階への階段を駆け足で上った。上りきるとそこには廊下に出て話をする三年生の人達がいたが、それには目もくれず、すぐに屋上へ続く階段を上っていった。後ろから屋上に行くなんて珍しいやつだな的視線を感じたが、僕はかまわず扉を開けた。

 扉を開けると担任のヨシカワ先生が目の前にいた。

「サクヤ、マユが待ってるぞ」

 とだけ言って屋上を後にした。少し先生の機嫌が悪そうだなと思ったが気にしなかった。それよりマユのことが気になってしょうがなかった。

 マユは鉄製のいかにも丈夫そうな手すりにつかまって下に広がる町の景色を見ていた。僕が近くまで歩くと気づいたように振り向いて、僕の目を見た。目が合って僕は変に緊張した。胸が大きく鳴っている。これってもしかして……。いや、そんなはずはないよな。僕は急にどうしたのと言おうとしたが、その前にマユが僕の名前を呼んだ。

「サクヤ……」

 うつむいていて表情は見て取れない。僕はごくっと唾をのんでマユの次の言葉を待った。

「サクヤ、昨日のケントのこと。あれ嘘でしょ」

 さっきのとは違う緊張が電気のように身体に走った。心臓が高く鳴る。身体中に汗をかく。ば、ばれた。隠せなかった。やっぱりオーラの見えるマユには分かってたんだ。くそっ、ばれちゃいけなかった。絶対に知られてはいけなかったのに。

「なんで隠すの? 私たち友達でしょ!? 信じてよ私のこと」

 マユの口調はどんどん強くなっていった。目には涙を浮かべていた。そんなんじゃないんだマユ、そんなんじゃないんだ。マユのことは信じてるし、隠したのだって友達だからこそだ。

「信じてくれたっていいでしょ……」

 涙をこらえつつしゃべってはいたが、やがてマユの目からは大きな涙がこぼれた。信じてる。けど、危険な目にはあわせられない。でも隠しててもマユには結局ばれる。それが遅いか早いかの話だ。それなら早く知らせた方がいいんじゃないか。いろんな考えが頭の中を駆け巡った。目の前のマユはもう泣くのをこらえられないでいた。僕はどうしたらいいんだ。

「二人ともいないと思ったら、やっぱりここか」

 後方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。まずいこの話を聞かれたら……。そう思って後ろを振り返るとそこにはカズヤが立っていた。

「よう」

 カズヤは片手を軽く上げて言った。昨日よりはだいぶ元気になったようだが、それでもまだ前までのカズヤとはほど遠かった。僕にはその笑顔が表面的なものだと感じた。

「やっぱりマユにはばれてたか……」

 カズヤはしかたないかと言うように鼻で笑った。まるでばれることがわかっていたように。

「やっぱりってことはわかってたの?」

 僕は疑問をこらえきれず、口に出した。カズヤは再び鼻で笑った。

「ああ、分かってたよ。オレが家から出てきたときマユがずっとサクヤの顔を伺っていたから、これはばれたなって思ったよ。口で嘘は言えても、自分の心に嘘はつけない」

 だから今日の朝も僕の顔ばっか見てたんだ。嘘なのか確かめるために。でも嘘だとばれてもあの内容だけは隠さなければいけない。

「でも言えないよ。なあ、カズ……」

 ヤ。と言おうとしたが、それはカズヤにはばまれた。

「いや、オレは言ったほうがいいと思う。遅かれ早かれ、マユは知ってしまう。それなら早めに知っておいた方がいいんじゃないか?」

 カズヤの考えも確かに分かる。僕たちが隠したところでマユにはいずればれてしまう。それが遅いか早いかということだけだ。しかし、だからといって教えていいということには直結しない。教えたら僕たち三人ともおしまいなのだから。

「でもっ、マユがそれを知ったら僕たち三人とも……」

 僕は不安を隠せなかった。隠す余裕もなかった。カズヤがまた「フン」と鼻で笑った。何がおもしろいんだ。僕は真剣に話しているのに。

「確かに。でもケントの言ってたことが本当だとは限らない。はったりかも知れない。それに……」

 カズヤはそこまで言って間をあけた。三人の間を涼しい風が吹き抜けて髪が風になびいた。

「そんなに最初っからビビってたら、助けられるもんも助けられねぇぞ」

 カズヤのその言葉が胸に突き刺さった。心臓が一回大きく鳴った。そうだ、僕はケント君を助けようとなんてしてなかった。逃げていた。自分たちを守ることしか考えてなかった。僕たちがやらなきゃ誰がやるんだ。ビビってちゃいけない。僕は力強く右手の拳を握った。

「分かった。三人でケント君を助けよう、何とかするんだ」

 僕は久しぶりに大きな声を出して少々恥ずかしかった。顔が熱くなるのを感じたが心はそれ以上に熱くなっていた。

 その後、僕とカズヤで昨日の出来事を詳細に語った。思い出すだけで胸が痛んだ。マユはすぐに理解したようで、顔をふせていた。

「聞かなかった方がよかったか?」

 カズヤがうつむくマユに話しかける。するとマユが顔を上げた。その顔は笑っていたが力強い顔で、目は鋭く決心に満ちていた。

「ううん。私も二人の力になりたい。ケントをもとに戻したい」

 僕はマユらしいなと思った。僕もカズヤも最初はかなり落ち込んだのに。直接見てないということもあるが、やっぱりマユは強い。

「そういうと思ったよ」

 カズヤはあの出来事以来はじめて見る笑顔で笑った。僕もつられて笑った。

 僕は心の中で自分に言い聞かせた。ビビるなサクヤ、助けられるのはここにいる僕たちだけなんだ。


 その日から一週間と少しが経過した。が、いっこうにケント君が学校に来る気配はなく、手がかりも何も得られないでいた。些細なことでも何でもいい早く手がかりを見つけないと。この間にもケント君の計画は進み、ケント君もまた心という名の闇の中へ行ってしまう。何か策を考えなければ。


 今日もまた、ケント君は来なかった。僕はそのぽつんと一つだけ寂しくあいた席をみつめた。先生が出欠席の確認をしたが、ケント君が来ないことは当たり前のようになっていて、先生も「今日もケントのやつは休みか」と言うだけで欠席の理由も聞かなくなっていた。

 その後先生はやはり諸連絡をしていたが、暑さのせいか聞いている生徒はほとんどおらず、だらだらとした雰囲気が漂っていた。今日も外は晴れていて、太陽が元気よく熱を放っていた。

 二時間目。僕はノートをとりつつも、視線は宙をさまよい気持は完全にどっかに行ってしまっていた。

「オーラというものはみんなも知っているとおり、そのときの心境の媒体のようなものであって……」

 先生の話の途中で、始業のチャイムが鳴り響いた。それと同時に複数の生徒が教科書を片付ける。先生はため息をついて、残念そうに「終わりまーす」と言った。生徒は口々に暑いねーと言って下敷きやノート類で扇子のようにして扇いでいた。

 しかし僕はそんな生徒たちを尻目に、今日もまた屋上へと向かった。マユに話した日以来、何か話したいことがあると屋上へ集まるようになっていた。僕はゆっくりと教室から出た。なぜなら、ばれないように屋上に行く必要はないということに気付いたからだ。こんな暑い日に日光のばんばん照りつける屋上へ行くバカは僕たちしかいない。

 僕は屋上への扉を開けた。そこにはすでに二人がいた。カズヤと目が合いカズヤが手を振ってきた。

「よう、サクヤ」

 カズヤはネットにもたれてあぐらをかいて座っていた。ネットの奥には給水タンクが置かれていた。マユは手すりによりかかっていた。

「遅いぞ! サクヤ」

 マユは笑いながらそう言う。同じクラスのはずなのに何でこんなに差が出るんだろうと不思議に思った。たぶん僕がゆっくりしているのだろう。いや、そんなことを考えに来たんじゃない。

「カズヤ、それで話って何?」

 そう、カズヤが話があるといったから来たのだ。

「ああ、そうだった」

 カズヤは一瞬迷ったように下を向いたが、話を続けた。

「いろいろ考えたんだけどさ。やっぱりあの事、カンタとゲンタにも話したほうがいいんじゃないかなって思って」

 たしかに、話したほうがいいかもしれない。あの時、あの二人も一緒にいたわけだし。それに、マユに話してしまったが実験台にはされていない。やっぱりカズヤの言うとおり、はったりなのか?

「うん。僕はいいと思う」

 もちろんそう答えた。マユは? とカズヤがうながした。

「いいと思うよ。私も聞いちゃったけど実験台にはされてないし」

 マユは笑ってそう言う。マユの笑顔を見るとこっちまでつられて笑ってしまう。カズヤもつられて笑顔になっていた。

「じゃあ、他の人に聞かれないところどっかある?」

 その質問にはマユが即座に答えた。

「私の家ならいいよ。おばあちゃんがいるけど」

 マユは少し困ったように笑ったが、カズヤは全然大丈夫といった様子だった。

「いいんじゃない、マユのおばあちゃんオーラに詳しいしいろいろ聞けるかも」

 僕はパソコンの画面に映ったオーラの資料を思い出した。オーラも何か関係がありそうだ。

「じゃあ、カンタとゲンタは私が誘っとく」

「ああ、頼んだマユ」

 そういうことで学校のあと、マユの家に集まることになった。


 マユの家は、小学校にも上がらない小さなころから知っている。そのころは毎日、毎日よく遊びに行っていた。マユの家は駄菓子屋をやっている、昔ながらの懐かしい雰囲気の家だ。

 久しぶりに来た。二ヶ月ぶりだろうか。僕はピンポンすら押さず、横開きの戸を開くとガラガラと音をたてた。まず目に飛び込んでくるのは、しっかりと並べられたかなりの量の駄菓子だ。小さいころからずっと変わらない光景。

「久しぶりだねぇ、サクヤ」

 そうにこやかに話しかけて来たのはマユのおばあちゃん『ヨネばあ』だ。ヨネばあには、小さいころからかわいがってもらっている。ヨネばあは手を腰にあてながら、歩いてきて僕に近づいた。

「お菓子もってきなぁ」

 と、その辺にあった普通の板チョコを手にとって僕に見せた。

「いいよ。もう子どもじゃないんだから」

「いいから、いいから」

 僕は遠慮したが、ヨネばあは手に持っていた板チョコを僕の手の平においた。そして僕に板チョコをつかませるようにして、しわだらけの手を僕の手に重ねた。 

「ありがとう」

 僕は正直お菓子をもらって恥ずかしかったが、礼儀としてお礼を言った。そのとき大きな足音をたてて奥から出てくる人は言うまでもなく、マユだ。

「サクヤいらっしゃい。おばあちゃん、サクヤに『アレ』見せてもいい?」

 マユは挨拶も早々に、おばあちゃんに承諾を得ようとした。ヨネばあは笑顔で承諾した。僕はそれが何なのか、とても気になった。僕が好きなものなのか、はたまた僕の知らないものなのか。するとマユが後ろから円筒状のガラスケースのようなものを僕に見せた。僕はそれが何なのか知っている。『オーラのカプセル』というものだ。

 オーラのカプセルはカプセルを開けるだけで、中に入っているオーラをまとうことができるというひじょうに便利な代物である。つまり中に入っているオーラが悲しみのオーラなら悲しい気持ちになるし、逆に喜びのオーラなら嬉しい気持ちになるということだ。僕もテスト前なんかにやる気の出るオーラにお世話になっている。

「これにはねー、勇気のオーラが入ってるの。使うと身にかかえている不安を感じなくなって勇気が体中から湧いてくるんだって。サクヤにぴったりのオーラかもね」

 マユは歯を出して笑っていかにもばかにしているようだ。僕が臆病者だって言いたいのか。確かに否定はできない。それはそうとして、すごくいいものだと僕は思った。

「へぇー、すごいね」

 ほんとにすごいと思ったが、とても買う気にはならない。カプセルは値段がけっこう高くつくのだ。それに新商品となると、なおさらだ。

「何? その気のない反応は。もういい……カズヤ来てるから、早くいくよ」

 いや、気のない反応をしたつもりはないのだが。僕は首をかしげてマユについていった。マユについていくと、駄菓子屋として使っているスペースの奥にある畳の部屋にたどり着いた。木でできた和風な丸いテーブルが置いてあるだけで他には何もなく、壁に掛け軸が掛かっているということもなかった。その質素な部屋にはすでにカズヤがあぐらをかいて座っていた。カズヤは足音が聞こえたのだろう、僕たちのほうを向いて「よっ!」と手を上げて言った。僕も挨拶を返し、三人で丸テーブルを囲むようにして座った。

「あれ? まだカンタとゲンタ来てないんだ」

 僕は何気なく思いついたことを言った。だいぶゆっくり来たつもりだったから疑問に思ったのだ。

「あいつら二人で集まってから来るんじゃない?」

 カズヤは表情を変えず素気なく返事をした。あの二人仲いいからな。きっとそうなのだろう。そう考えていた時玄関の戸が勢いよく開く音が聞こえてきた。噂をすればやってくるってやつだ。

 マユは「入っていいよ」と大きな声で言い、カンタとゲンタを招き入れた。


「で、話って何だ?」

 カンタは明るく元気な良い子のように聞く。何か楽しいこと、あるいは面白いことだとでも思っているのだろう。しかし、僕たちが話そうとしていることは、そんな穏やかな話ではない。ゲンタも笑顔で僕たちの返事を待っているが、そんな二人を見て僕たちは内心心臓が飛び出そうなほど緊張していた。…………数秒の間があり、ついにカズヤが緊張を和らげるように小さく息を吸って言葉を発した。

「いいか。……言うぞ」

 この部屋が一瞬静寂に包まれる。僕はさっきよりさらに緊張していた。

「この前、みんなでケントの家言っただろ? その時ケントとあったんだけど……」

「ちょっとまてよ! あんときはケントいなかったんじゃないのか?」

 ゲンタはたまらず疑問をぶつけた。そりゃそうだよな、あいつらには嘘をついたんだから。さらにカズヤは続けた。

「ううん。……あれは嘘なんだ。嘘をついたんだ。ほんとはケントに会ったし、話もした」

 そう言うと、カンタの表情がいっきに曇った。ゲンタは驚いた様子で口をぽかんと開けてカズヤを見ていた。カンタはカズヤの言葉が気に入らないようでむすっとして口を開いた。

「なんで、嘘ついたんだよ! 嘘つく必要があったのか? 俺たちには言えないって言うのかよ!」

 カンタの反応はもっともだ。僕だって嘘をつかれたらいい気もちはしない。だけどあのときは嘘をつくしかなかった。つかなきゃいけなかった。今だって話すのは危険な行為かもしれない。

 その後カズヤは、ケント君が何かしらを計画していること、このことを知ったやつを実験台にしようとしてること、ケント君の様子が明らかにおかしいことを詳細に話した。

「だから俺たちに協力してくれ! いっしょにケントを助けよう、助けてやれるのは俺たちだけなんだ!」

 だが、カンタとゲンタは予想とは違う反応を見せた。カンタはこぶしを強く握り体を震わせ、怒りを露わにしていた。

「くそっ! てめぇら見損なったぞ。ケントはそんなことするやつじゃねえ! お前らなんか友達じゃねぇぇぇえええ」

 そう声を荒げると「ゲンタ行くぞ」と言って出て行ってしまった。玄関の戸を強く閉める、大きな音が聞こえた。二人が出て行ったあとに残ったのは、大きな静寂と大きな後悔だけだった。一瞬にして嵐が去ったようなそんな感じ。部屋には暗い空気が漂った。カズヤはため息をつき手を頭に当てうつむいていた。失敗したと思っているのだろう。だがカズヤのせいだけではない。賛成した僕も同じだ。マユはあまりのショックで泣きそうな表情を見せていた。

 話したのは失敗か? 少なくとも成功ではないだろう。友達がばらばらになってしまった。これは少なくともよかったとは言えない。でも嘘をついてていいこともない。言うことは言った、その結果がこれなら仕方ない。ケント君が戻れば、あの二人とも元の中に戻れるそう信じてやっていくしかない。絶対に元のケント君を取り戻そう。そしてみんなで笑い合おう。

 僕はあらためてそう思わされた。

まだまだ、へたくそなので感想、アドバイス等くれるとうれしいです。

ホントに何でもいいので・・・・・・。

酷評やへたくそ(理由もかいてくださると助かります)でいいですので。

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