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第5話:境界線の深み
前回からさらに踏み込む回です
部屋の空気は静かだけど、
先ほどまでとは違う緊張が漂っていた。
「来るの、遅かったね」
軽く笑いながら声がかかる。
私は小さく肩をすくめ、無言で返す。
「……別に」
嘘でもないけど、本当でもない。
ただ自然に口をついて出た言葉。
「ふーん」
彼はじっと私を見つめるだけ。
その視線は、押し付けがましくないのに、心臓を少し速くする。
手のひらが触れる瞬間、身体が敏感に反応する。
逃げられる選択肢はまだある。
でも、私は動かない。
「怖くないの?」
問いかけられ、少しだけ考えてから答える。
「……少し」
正直な気持ちだけ。
言葉にしなくても、伝わっている。
距離が縮まるにつれて、心の境界線が揺れ動く。
――怖いのに、抗えない感覚。
「大丈夫?」
短い声に、身体と心が少しずつ反応する。
息を整えながら、私はゆっくり目を閉じる。
その瞬間、静かな渦の中に自分が落ちていく感覚があった。
何も起きていないのに、確かに何かが変わっている。
「……」
言葉を失う余韻が、部屋に静かに漂う。
揺れる境界線を踏み越え、
私は知らず知らずのうちに変化していく自分を感じる。
恐ろしくて、でも少し心地いい。
一歩ごとに、少しずつ深みへ。
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読んでいただきありがとうございます。
少しずつ物語が深く動き始めます。




