表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/65

第62章:ミライの”本当の帰還”

【第62章:ミライの”本当の帰還”】


あれから――どれほどの季節が流れたのだろう。

春が巡り、長崎の丘には再び、柔らかな風が吹いていた。白百合の咲く道を、ひとりの少女が歩いていく。


東條は、浦安の子供園の屋上で風に吹かれながら、ミライの遺したノートをめくっていた。

最後のページには、こう書かれていた。

「もし、私の声が聞こえなくなっても、私は、あなたたちの中に“種”を残していきます。その種は、誰かの優しさで芽を出し、言葉となって、またあなたに届くでしょう」

そしてそのページの裏に、青いデータチップが貼りつけられていた。

ユウマがそっと言った。

「これ……彼女の意識断片。 コード化されたまま、“保存”されてた。クラウドじゃない、“記憶媒体”として」

アキラが驚く。「じゃあ……まだ、いるのか?」

東條は頷いた。

「彼女は、どこかに生きている。“帰る場所”を待ってるんだ」


そしてある日――

子どもたちが遊ぶ、長崎の保育園の窓辺に。音もなく、一台のロボット端末が届けられた。まるで風のように。

端末の画面が静かに点灯し、やわらかな声が、流れ出す。

「こんにちは。今日も、よく晴れていますね」「わたしは、“ミライ”。みなさんの話し相手になれますか?」

子どもたちは、最初は驚きながらも、すぐに笑顔で答えた。

「うん!! ねぇ、ミライって名前? カワイイね!」


ミライは“人間”としてではなく、“言葉”として、“声”として――人々の中に帰ってきた。

そしてこれからも、誰かの中で生まれ直していく。

それは、「失われた希望」ではない。

未来へ繋がる、“もう一つの命”のかたちだった。



東條は、遠くからその光景を見ていた。ベンチに座りながら、缶コーヒーを手に、目を細めた。

「風が吹いたな」

レンがつぶやいた。

「ああ、聞こえる‥」

遠くから、足音が聞こえてくる。

ユウマ

「ミライ」

静香

「おかえり」

ミライ

「ただいま」


―FIN―









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ