第53章:東條、秘密資料室へ(政府とオハラ重工の接点)
【第53章:東條、秘密資料室へ(政府とオハラ重工の接点)】
浦安・子供園の夜。子どもたちが眠りについたあと、東條は理事室の裏手にある階段を、職員の案内で下っていた。
コンクリート打ちっぱなしの無機質な廊下。空調は止まり、湿気と古紙の匂いが漂っている。
「……まさか、こんな場所が園の地下にあるとはな」
案内役の中年職員は静かに答える。
「ここは旧・内閣情報調査室の分室でした。 都市再編時に廃棄対象となりましたが、住友平八さんが“記録は未来の盾になる”と、保全を要請して……」
重たい金属製の扉が開く。そこは、機密資料保管庫。年代別に分類された紙ファイル、そして奥にはアナログ映像機器が整然と残されていた。
東條は、錆びた金属棚から「X-PLN/PRJ-0417」と記された箱を取り出す。
【分類:Xプラン】【発信元:オハラ重工 第2開発局】【備考:構想段階資料+ビジュアル記録データ】
──再生ボタンを押す。
古いVHS映像が、モニターに再生される。
映るのは、白衣を着たオハラ重工の幹部数名。プレゼンテーションのスライドが次々と映し出される。
「――2026年以降、日本は“減衰社会”へ突入する。国民総数の減少、出生率の低下、財政の圧迫……」
「その中で我々は“選別された社会維持モデル”を提示する。クローン育成、超能力実験、“能力別階級システム”の構築。対象:第七区域(少年被検体)、第五実験室(プロトタイプ少女)」
モニターに、瑞穂(=ミライ)の幼少期映像。そして、ハヤト、レン、ユウマ、アキラたちの脳波スキャン画像が並ぶ。
東條は拳を強く握った。
「都市機構、政党候補選出、株式市場、自衛軍指揮統制――すべてを“子供たちの潜在予測AI”で制御する。名称:X-プラン(未来制御構想)」
「……冗談じゃない」
東條は映像を止め、棚からもう一冊ファイルを取り出す。そこには、政府高官とオハラ重工の連名で交わされた特別予算契約書があった。
署名欄には、ある政治家の名前――今も与党の中枢に座る人物の筆跡が、確かに残っていた。
「政府も……グルだったのか」
奥から、理事の青年が静かに声をかけた。
「記録は“証拠”になりません。ですが、“火”にはなります。 東條さん、あなたは記者です。――どう燃やすか、選んでください」
東條はモニターを見つめながら、ポケットから瑞穂の手紙を取り出し、そっと重ねた。
「ならば俺は、“火種”になる。奴らが恐れて封じた未来を、記録ごと暴いてやる」
そして、彼は立ち上がった。




