第48章:秋葉原バイパス・ユウマの選択
【第48章:秋葉原バイパス・ユウマの選択】
土曜の昼、曇り空の秋葉原。
ユウマたち一行は、電気街口にほど近い裏通りにある、古びたパーツショップの前に立っていた。
「ここが、“ツクモ旧館”。昭和からあるって噂の店だよ」
そう言ったのは東條だった。
看板の錆に風情があった。中では真空管からAIチップまで、今や規制対象となった旧式の部品が陳列されている。
「ユウマ、必要な部品は?」
ユウマは無言でうなずくと、手にした白手袋をキュッと締めなおした。
無線通信用アンテナ、ソーラーバッテリ、制御用チップ。
選別した部品を抱える彼の姿は、まるで戦場に赴く兵士のようだった。
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店を出たその時だった。
「きゃー!! ミルキー∞ビートだ!!」
秋葉原UDXビル前の広場から、黄色い歓声が響く。
人気地下アイドルグループ「ミルキー∞ビート」のサプライズ・ミニライブが始まっていたのだ。
「うおっ、やべー! あのセンター、推しだわ! 前行ってくる!!」
条威が叫び、人混みに突っ込んでいった。
「ちょ、待てレン!!」
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群衆の中、ユウマは足を止めた。
感知センサーの反応。
どこかで、こちらを「見ている」視線がある。
東條の隠れ家に戻ったころには、もう夜の9時を回っていた。秋葉原の熱気とは打って変わって、古びたビルの一室はひっそりと静まり返っている。
「腹、減ったぁ~!」ユウマが第一声を上げる。「お前、アイドルのライブで叫びすぎだろ」レンが笑いながら、袋をテーブルに置く。
テーブル代わりの段ボール箱の上に、次々と並べられていくコンビニの戦利品。唐揚げ弁当、焼きそばパン、冷やしうどん、ポテトサラダ、おにぎり……。どれも300円前後の庶民的な味だが、少年たちにはご馳走だ。
「わたし、サラダでいいや。今日あんまり動いてないし」綾乃が控えめに言いながら、プラスチックの蓋を開ける。
東條は、カップ味噌汁にお湯を注ぎながらふと呟く。「こういうの、久しぶりだな。……まともに誰かと飯食うの」「記者って、そういう仕事っすか?」「いや……俺がそういう生き方してただけだよ」
静かに笑う東條を見て、少年たちもどこか安心したような顔をする。
「うん、唐揚げ……うまっ」ユウマが口いっぱいにほおばりながら、急に真顔になる。「……東條さん」「ん?」「秋葉原で買った部品、明日からちょっと作り始める。Xデーに向けて、何か俺にできることを、って思ってさ」
「わかった。頼りにしてる」東條がうなずく。
その夜、ほんの一瞬、世界の行方も未来の運命も忘れて、少年たちはただ“普通の晩ごはん”を囲んだ。
ビルの外に、コンビニの白い袋が風に揺れていた。




