第47章:若き後継者、住友理仁
【第47章:若き後継者、住友理仁】
東京・表参道。再開発された低層ガラスビルの屋上に、一陣の風が吹いた。高層の街並みを背に、ひとりの青年が風を受けて立っていた。
灰のように薄いグレースーツに、アッシュグレーのスニーカー。瞳は深い藍。年齢はまだ20代前半、だが立ち姿はすでに一国の執行者のようだった。
彼の名は――住友 理仁住友平八が認知した、孫にして、H&Bリバティグループの実質的CEO。いまや、若者たちの間で最も注目される「風のような資本家」だった。
その日、彼は屋上のガーデンで、4人の“少年たち”と向かい合っていた。
レンが睨む。「何だよアンタ、ガキのくせに俺らを見下してんのか?」
理仁は笑わず、ただ風に髪をなびかせて言った。
「むしろ逆だ。僕は、君たちの存在を守るためにここにいる。超能力という“自然の逸脱”を、社会がどう受け止めるか――それを現実に落とし込むのが、僕の仕事だ」
ユウマが静かに訊いた。「あなたは……政府側なのか?反体制側なのか?」
「僕はどちらでもない。ただ、“未来が生き残る方”に資本を投じるだけだよ」
アキラがぼそりと漏らす。「……風の匂いが変わった気がする」
理仁は小さく笑った。
「その感覚、正しいよ。この街も、国家も、やがて“エアル”――空気のように、目に見えない力に包まれるだろう。その時、君たちがどこにいるか。それを僕は見てみたい」
その言葉に、海斗は初めて、口元をほころばせた。
「……気に入った。君は“風の資本家”だな」
そして、風は再び吹いた。
スクランブルの喧騒の上空を、まだ名もなきドローンがひとつ、滑るように横切っていった――。
空は高く、ビルの屋上に淡い雲が流れる。都市の喧騒は遠く、まるでここだけが時間から切り離されたようだった。
「君たちはいずれ、選択を迫られる」
そう語る理仁の声は、どこか機械的で冷静だった。
「能力者として、何を守り、何を壊すのか。 あるいは、何もせず、ただ忘れられていくか」
ユウマが問い返した。
「……あなたは、僕たちを“兵器”として見るのか? それとも、ただの“商品”か?」
理仁は微かに眉を寄せると、静かに答えた。
「その質問は、平八じいさんにも昔、同じようにされたよ。 僕の答えは変わらない。君たちは、“未来そのもの”だ」
そのとき、風が吹き、植え込みの白い花びらがひらひらと舞った。
「この世界はね、表面ではきれいごとを語りながら、 裏では常に“どれを切り捨てるか”を選び続けてる」
理仁は、胸ポケットから小さなフラッシュメモリを取り出した。
「この中には、オハラ重工と政府の過去20年間の会合記録が入っている。 研究所の建設許可、プロジェクト名“ルシファー”、それに第17セクターの都市開発。 全部、君たちの存在がベースにある」
ユウマが顔をしかめた。「……ふざけるな」
「君たちは消されるべき存在じゃない。だが、証拠がなければ語られない。 だから――これは僕からの“投資”だよ」
理仁は、フラッシュメモリを東條へ手渡した。
「君なら、正しく伝えられるはずだ。報道とは、信念と真実の間にある“光”だから」
東條は黙ってそれを受け取ると、スーツの内ポケットに収めた。
レンが、帽子を脱ぎ、風に吹かれながらボソッと呟いた。
「ま、悪くねぇな。ガキにしちゃ、しっかりしたモン持ってる」
理仁は笑う。
「君たちがもし、社会の中に立つ日が来たら、その時は僕も応援しよう。 だがその日まで――風になれ。どこにも縛られず、ただ自由に」
風がもう一度吹いた。
その風に、少年たちの背中が軽く押される。――未来へと向かう、都市の空の、予兆だった。




