第45章:子供園 静香
【第45章:子供園 静香】
――扉が、ゆっくりと開いた。
冬の終わり、午後の柔らかい陽光が、長い廊下を照らしている。白い壁、木の香り、子どもたちの笑い声が、遠くからこぼれる。
「……ここが、静香さんのいる“子ども園”か」
東條は小さく呟いた。後ろに立つレン、ユウマ、アキラ、ハヤトの4人は、少し緊張した面持ちで中を見つめている。
「へっ……けっこーちゃんとしてんじゃねーか。養護施設っつーより、まるで“おとぎの国”みてーだな」
レンが小声でつぶやいた。だが、その眼差しは、どこか懐かしさを帯びている。
「……来たのね」
その声に、東條は振り向いた。
白いカーディガンを羽織り、少し背を丸めながらも、どこか凛とした気配を残す――静香が、廊下の奥に立っていた。
ユウマが、一歩前に出る。その目に、驚きと、どこか安堵の色が浮かんでいた。
「静香さん……俺、覚えてる。前に、一度だけ、あなたに助けられたことがあった」
静香は、ゆっくりとうなずいた。
「ええ。あなたたちのことは、ずっと記憶の片隅にあったわ。だから……こうして、もう一度会えたことを、神様に感謝してる」
アキラが、小さな声でつぶやいた。
「……こんなところに、希望って……あったんだな」
レンは照れくさそうにそっぽを向いたまま言う。
「ったく、急に感傷かよ……ま、わりー気はしねーけどな」
静香は、そっとユウマの肩に手を置いた。
「もう、戦いは終わりにしましょう。あなたたちが“未来”を背負っていくために、今は“静かな日々”を取り戻す時なのよ」
東條は静かにうなずいた。
「……この場所で、ミライの記憶も、少しずつ解かれていくかもしれない」
気づいた彼女が、こちらを振り向いて、にっこりと微笑む。
東條の胸が、ふと熱くなった。それは、何も書かれない記事よりも、ずっと真実に近い光景だった。




