第43章:住友平八
【第43章:住友平八】
住友平八の、長い話は終わった。
静かな風が、葵園の中庭を通り抜ける。老木の下に置かれたベンチに、住友平八は腰掛けていた。その姿はまるで、時の番人のようだった。
遠くから走り寄る若者の影が見えた。
「住友先生、お届け物です」
それは、H&Bリバティ信用銀行・浦安分所から届いた黒のトランクケースだった。住友は静かに頷き、若者に告げた。
「それを、彼に渡してくれ。玲司・東條に」
中には、特殊合金の折りたたみ式ドローン骨格、超小型安定化燃料セル、そしてベインズが調達した、米軍退役の衛星通信モジュール。
「……未来を動かすのは、あいつらの手だ。わしらは、背中を押してやるだけよ」
ふと住友の視線は、庭の片隅――瑞穂が幼い頃、毎日遊んでいた小さな花壇へと向かっていた。
「――静香、瑞穂……君たちの意思は、ちゃんと届いているよ」
一方その頃、秋葉原の電気街。ユウマは、パーツを詰め込んだ紙袋を両手にぶら下げ、レンやアキラと共に、雑踏を抜けていた。
「おい、ユウマ。これ、オレの筋トレより重いんだけど!? …チッ、やってらんねぇ!」
「文句言わない。これは必要な装備だ。ドローンが突破の鍵になる」
「ふふっ、ユウマって、ほんと真面目よね」
そこに、東條が合流し、ひとつの黒いケースを差し出した。
「平八さんからだ。お前の“研究所”に、追加装備だってさ」
ケースを開けた瞬間、ユウマの目が光った。
「これなら、できる……」
「瑞穂、ミライを救いに!」
「アキバ・モデル”を超える」
Xデー前夜――少年たちは、老いた者たちの想いと共に、未来を迎え撃つための準備を進めていた。




