第42章:住友財閥
【第42章:住友財閥】
ただ、ただ、がむしゃらにやって来た。
高層ビルのペントハウス。巨大財閥「H&Bリバティ信用銀行」の本部は、まるで都市の上空に浮かぶ王宮のようだった。
その最上階、窓際に佇む男――住友平八、106歳。
白髪を後ろで束ね、燕尾服に似た黒のローブを纏うその姿は、年齢を超えた威厳を放っていた。だが、その眼差しは、若き日と変わらず鋭く、火を宿している。
「……もうすぐだな、玲司くん。世界が試される日が」
彼の傍にいたのは、岡田ベインズ――元CIA諜報員であり、今は彼の“参謀”だった。かつて二人で起業し、地道に築いてきた信用銀行は、いまやアジア圏最大の民間信用機関となっていた。
「政府とオハラ重工の間に、密約が交わされている。クローン計画と、遺伝子操作、それに市民管理データベース。全部、奴らの利益構造に組み込まれている」
ベインズは冷静に語る。
「だから、我々が“記録”を放出した。世論を動かすには、まず“真実”だ」
平八はゆっくりと頷いた。
「その真実を、若者たちに繋いでやらねばな。――玲司に。彼は信じる男だ。昔、静香を、瑞穂を救おうとしたあの頃の私たちに似ている」
老いた手で、平八は机上の古い写真を手に取った。
そこには、若き日の静香と、まだ幼い瑞穂――そして彼ら二人の若き姿が写っていた。
「……あのとき救えなかった命を、今度こそ未来へ繋げる」




