第41章:ベインズと平八の銀行設立
【第41章:ベインズと平八の銀行設立】
時は2031年。世界中が、生体認証とAIスコアによって個人の信用を管理し始めた時代。
「データの点数でしか、人間が評価されなくなるぞ」そう言ったのは、岡田ベインズだった。
その日も、バークレーのカフェで、彼と住友平八はコーヒーを前に、静かに話し合っていた。
「なあ平八」ベインズは、コップの縁を指先でなぞりながら言った。「この世界は、もう"信用"をAIに預けようとしている。でもな……本当の信用って、なんだと思う?」
平八は、しばらく黙っていた。そしてぽつりと返した。
「……話して、目を見て、信じられるかどうかだよ。人間が」
世の中は、遺伝子スクリーニング、行動記録、消費傾向によって「貸せるかどうか」を決めていた。
だが、ふたりは反対の発想に出た。「その人を、見て、話して、信じるかどうか」**“信用貸し”**という古き概念の再生だった。
「もし、働き口がなくても」「もし、スコアが低くても」「もし、過去に罪があっても」
「それでも、目を見て"信じたい"と思ったなら、俺たちは金を貸す」
設立される銀行の名前は、《H&Bリバティ信用機構》。
“Hope and Bond”――希望と絆。そう、ベインズと平八の頭文字を取った名だった。
一号店は、目立たない古いビルの1階。看板も出さず、椅子が2脚だけの面談室。
最初の来店者は、父を亡くし、借金の連帯保証に苦しむ、20代の若者だった。
履歴書も信用情報もボロボロ。
だが、1時間の面談のあと、平八は彼に手渡した。
茶色い封筒の中には、小さな融資の契約書。
「返さなくていいわけじゃねぇ。だけど…… 返したいと思うなら、今はそれで十分だ」
ベインズが名刺に刷った銀行のスローガンは、たった一言。
「We trust you, not your data.」
「データではなく、あなたを信じる」
世界のどこかで、信用スコアに切り捨てられた誰かが、その小さな銀行のドアを叩いていた。
そして、そこから再び「生きること」が始まっていった。




