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第34章:追跡者・カラス

【第34章:追跡者・カラス】


地下警備制御室――モニターに映るのは、パントリーから走り出す二人の人影。

男は細身、黒いスーツ。左目に義眼。コードネームは**《鴉》**。

鴉「第六被験体、起動反応確認。平八……やはり現れたな。逃がさない」

鴉は静かにコートを翻し、廊下を歩き出した。

その背後に続くのは、黒ずくめの補佐員たち。いずれも無言。完全武装。

鴉「“自由”を夢見る人形たちに、終わりを」



病院裏の岸壁。朽ちた木の階段を駆け下りると、小さな漁船が浮かんでいる。

ベインズ「よくやったな! モナカも元気か?」

平八「まだ寝とるが、なんとか」

瑞穂は乗船の際、一瞬だけ振り返った。白い病院の建物が、ぼんやりと煙の向こうに見えた。

瑞穂「ここに、私は何年いたんだろう……」

平八「ええんや。もう二度と、戻らんでも」

ベインズ「エンジン、全開! 本土へ向かうぞ!」

船が海を裂きながら進む。


そのとき――

海岸線の崖から、鴉が静かに立ち上がる。手にしたデバイスを操作すると、数機の無人ドローンが起動した。

鴉「第五被験体の心拍数、安定……つまり“目覚めた”な」「迎えに行こう、“滅び”の天使として」

ドローンが瑞穂たちの船を補足する。

ベインズ「敵だ!来るぞ!」

平八「乗り込まれる前に、なんとか海に出きってしまわんと!」

瑞穂「……わたし、何か思い出せそう。“この海を越えた先に、誰かがいる”――そんな気がするの」



海が荒れ始める。波の合間をすり抜けながら、船が進む。

瑞穂は目を閉じた。

瑞穂「……私は……“あの人”に、会いたい――」


空から迫るドローン数機。鴉の瞳が赤く光る。

「Target lock. Terminate.」

その瞬間――瑞穂が、目を見開いた。

時間が、止まった。

鳥の羽音も、波も、空気さえも、ピタリと止まった。

平八「!? 今、何が……?」

瑞穂「……見えたの。あなたが死ぬ未来。ベインズも。だから、もう誰も死なせたくない」

手を差し出す。ドローンの進行が、逆回転するように空へ引き戻され、爆ぜた。

時間が動き出す

ベインズ「おいおい……お前、何した?」

瑞穂「少しだけ、“未来”を変えたの」


船がようやく、静かな入り江へとたどり着く。向こうに見えるのは――都会のビル群。

ベインズ「ついに帰ってきたな……日本本土だ」

平八「ここからが、本当の勝負や」

瑞穂「わたし……思い出せる気がする。名前を呼ばれたような、気がするの。“瑞穂”って」

平八「せや、それが――あんたの名前や」

空が、ゆっくりと晴れていく。

風が、自由を運んでいた。


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