第23章:ミライの護送
【第23章:ミライの護送】
東京湾・臨海埠頭――
朝の霧がまだ残る埠頭に、白いスクエアの建物が静かに立ち並ぶ。
その建物から、白い制服を身にまとった男たちが出てくる。
「……誰?」
小さな声が響く。
ミライ――コードネームNo.5の少女が、薄明かりの中で目を細めて尋ねる。
男は無表情のまま応える。
「迎えに参った」
彼女の目に、黒い布がかけられる。
視界を奪われ、感覚だけが研ぎ澄まされていく。
「どこに行くの?」
「情報は機密です」
黒い車――政府専用車両のドアが音を立てて閉まり、
カーナビに浮かぶ目的地は「九段下」。
ミライは黙って座っていた。
揺れる車内、聞こえるのは道路の振動と、知らない場所へ向かう不安だけだった。
九段下・高層ビル地下。
政府の高官たちが集まっていた。
「……来られましたな」
その声に振り返ることなく、ミライはただ項垂れたまま歩く。
「Xデーは近づいてきている!!」
政治家たちの声が響く。
誰もが焦り、そして何かに怯えていた。
その頃――
東條邸の通信室。
アキラが突然、顔を上げた。
「……テレパスだ」
「ミライからだ! どこかに向かってる!」
そこへ、マイケル大佐からの通信が入る。
「政府の護送車両でNo.5が移動中。追跡に入る」
東條はディスプレイを睨みながら呟いた。
「これで、せっかくのラボ施工図面も水の泡だな……」
「場所は?」
「九段下だ」
ユウマがすかさず反応する。
「九段下の高層ビル……施工は2022年10月。割と新しい」
レンがつぶやいた。
「外部ルート、出口は8つある。ハッキングできるかもしれねえ」
「さすがだ、ユウマ」
東條が言う。
「最近、政府無線で“Xデー”って隠語が頻繁に使われてる」
大佐の声が続いた。
「このビルも関係してる可能性は高いな」
「……No.5をコンピューターに直接接続するつもりか?」
「ああ、そう見ている」
東條は深く椅子にもたれた。
「現在、2026年。国債は年10兆円の赤字。あと20年もつかどうか……博打に出るしかないというわけだ」
レンがモニターを指差す。
「でも、この図面、最後の部分が抜けてる。創業者の家系だ……」
「住友平八」
大佐が名を挙げた。
ユウマが続ける。
「122歳……西東京市の“葵園”って高齢者施設に居るらしい。図面の原本を持ってる可能性がある」
東條が立ち上がった。
「行ってみるか……」
そして――
運命は、静かに“次の扉”へと向かい始めていた。




