第22章:新たなる使者
【第22章:新たなる使者】
東京湾を見下ろす新埠頭の高層マンション。
その一室に、東京大学政治学部4年の女子学生・**絢音**は静かに暮らしていた。
表向きは優秀な大学生。だが、その裏で彼女は、政府が抱える“静かな工作員”の一人だった。
ある夜、0時をまわった頃。
窓の外に、ヘッドライトが瞬く。黒いアウディが建物前に停車した。
運転席から降りてきたのは、民間調査機関「ファントム」に所属する男――東條玲司。
部屋をノックすると、絢音はすでにコートを羽織って玄関に立っていた。
「準備はできてる。施工図面、霞ヶ関のラインから受け取ったわ」
「そうか。ありがとう、絢音」
彼女は鞄を手に、アウディの助手席に乗り込む。
エンジン音が夜の静寂を破る。
「ところで……」
東條がルームミラー越しに、後部座席の少年たちに目をやる。
「腹、減ってるだろ。何か食べたいものあるか?」
一瞬の静寂のあと――
「マクドナルドが食べてみたい!!」
そう叫んだのは、少年のひとり、アキラだった。
続いて、他の少年たちが次々に反応する。
「外の世界で話に聞いてた通りだな」
「これがマクドナルドか!」
「美味しいなぁ……!」
それぞれの言葉に、どこか無邪気な喜びがあふれていた。
東條は笑みを浮かべると、車をマックのドライブスルーへと走らせた。
ファントムは、アメリカ合衆国が組織する外部調査機関。
東條は、国内の極秘実験――“能力による人間選別プログラム”の存在を突き止めていた。
その調査の中で得た情報は、彼をさらに深く、国家の闇へと導いていく。
パッパー!!
急に車の前方で、ヘッドライトが何度もパッシングされる。
続けて――クラクションが激しく鳴った。
「――危ない!!」
交差点を横断しようとした絢音の身体に、一台の車が迫っていた。
東條は即座にハンドルを切り、アウディで進路を塞ぐ。
ギィッ!!
タイヤが路面を鳴らし、わずかに車体がスライドする。
寸前で衝突を免れた。
「……間一髪だったな」
「ありがとう、東條さん」
肩で息をする絢音が、小さく礼を言った。
そのまま一行は再び走り出す。
東條はスマートフォンを取り出し、暗号化通信に切り替えると、アメリカ海軍所属の協力者――
黒人の大佐・マイケルに連絡を入れた。
「こちら東條。少年たちは、保護しています」
「了解。次の地点で合流しよう」
闇夜の中、東京の南方へ、彼らの車列は静かに動いていった。




