第21章:ミライの記憶の中へ
【第21章:ミライの記憶の中へ】
シンクロビジョンの用意。
東條玲司の屋敷。夜の静けさが降りたリビング。少年たちはソファーに身を沈め、意識を合わせる。 テーブルには玲司が用意した“共振装置”シンパシティーリンクシステム――彼女の精神波と同期させるための特殊な共感電極が並ぶ。
玲司:「彼女は強く願っている。“誰かに、見つけてほしい”と。 君たちなら、届くはずだ。深層記憶の奥に…」
少年たちは目を閉じ、彼女の心へと入り込んでいく。
そこは、色のない世界。 モノクロの空、光のない街、そして窓のない白い部屋。
ユウマ:「ここが……彼女の世界……」 ハヤト:「寒い……感情が、ない……」
そこに、ひとりの少女がいた。 白い服、白い髪、青い瞳。窓のない部屋に座って、膝を抱えている。
ミライ:「ずっと、ここにいるの。生まれてから、ずっと… 外の世界って、本当に“空”があるの?“雨”は、冷たいの?
データでは見た。けど、感じたことはないの」
アキラ:「俺たちが、連れて行く。自由な世界を、君に見せるよ」 ミライ(小さく笑って):「……助けに来てくれるって、信じてた」
夜の帳が降りた東條玲司の屋敷。 広々としたリビングに、淡い照明が灯っている。窓の外は静まり返り、時折、風が樹々を揺らす音が響いた。
アキラ、ユウマ、ハヤト、レン――四人の少年たちは、深いソファに身を沈めていた。 テーブルの上には、玲司が手配した特製の“共振装置”が置かれている。まるで何十年も前のオーディオ機器のような見た目だが、実際には最新の脳波共鳴システムだという。
「……きた……」
その目に、ほんの少しの光が宿る。
「あなたたち……本当に、来てくれたんだ」
アキラが前に出て、言った。
「助けに来たんだ。君を、この場所から出したい」
ミライは微かに首を横に振った。
「ここからは……出られない。これは、私の記憶。生まれてから、ずっと……この部屋の中にいる。外の世界なんて、一度も見たことがない」
「私の、できるだけのビジョンで」
スクリーンは切り替わる。白い雲の浮かんだ、青空。白いマーガレットの花畑、風で、花が歌っている。その中で、歌っている、一人の少女。ミライ。突風が吹く。
行ってはダメだ。「キャアアアーー」時空が反転し、空が地に落ちる。
部屋の空気が揺らぎ、壁の一面がスクリーンに変わった。 そこには、幼いミライがベッドの上で検査を受ける姿、何度も繰り返される同じ質問、そして白衣の研究員たちの無表情な顔が映し出されていく。
「“あなたは未来を知る子”。そう言われて…… ずっと未来を“見させられて”きたの。だけどね……未来が見えるってことは、私にとっては――」
彼女の瞳に涙がにじむ。
「――未来が、ひとつしかないってことだった」
ハヤトが拳を握る。
「そんなの、間違ってる。未来は……自分で選ぶもんだろ?」
アキラも続ける。
「だからこそ、俺たちが来た。君と一緒に、自由な世界を――」
そのとき、部屋の奥に光の扉が現れた。 優しい、あたたかな光に包まれた、その扉。
「これは……?」 ミライが驚いたように立ち上がる。
玲司の言葉が脳裏によみがえる。
「彼女が“未来に希望”を感じたとき、その心の奥に“扉”が開くはずだ」
ミライは、一歩ずつ扉に近づく。 少年たちが、そっと彼女の背を押す。
「怖くないよ。大丈夫だ」 「未来は、ひとつじゃない。君が選べる」
ミライは扉の前に立ち、そっと手を伸ばした。
「……もし、本当に外の世界に行けたなら…… 空を見てみたい。風を感じたい。…歩いてみたい、自由に」
扉が光を放ち、静かに――開いた。
◇
目を覚ましたとき、四人はソファに座ったまま、静かに息をついていた。 窓の外には、夜明け前の空が広がっている。
「……成功したんだな」 ユウマがぽつりと言う。
アキラはゆっくりとうなずいた。
「うん。……ミライは、希望を持った。 もう、あの部屋の中だけにいる子じゃない」
玲司は窓の外を見ながら、静かに言った。
「さあ――彼女を、迎えに行こう。未来を、変えるために」




