第12章:ファントムへの招待
【第12章:ファントムへの招待】
ロサンゼルス、LAX空港。 ターミナルの片隅。 カフェの窓際席に、東條玲司は一人で座っていた。
フライトの疲れが、体中に染みついている。 だが、目は眠っていない。
手元のコーヒーは冷めきっていた。
ポケットには、一枚の紙切れ。
【"Phantom" - L.A. 23:00 現地案内】
そして、指定された時間。 カフェのドアが、静かに開いた。
入ってきたのは、背の高い黒人の男だった。 黒い革ジャン、ジーンズ。 サングラスを額に乗せ、口元には無精髭。
マーク=マイケル。
一見、ただのラフなアメリカ人。 だが、歩き方に無駄がない。 そして、目が笑っていなかった。
男はまっすぐ、東條の席に向かってきた。
マイケル「――“朝東”の坊ちゃんか?」
東條は、わずかに目を細めた。
東條「“ファントム”の手先か?」
二人は、互いに笑わなかった。
だが、その沈黙の一瞬に、プロ同士だけに通じる了解が生まれた。
マイケルは、メニューも見ずにコーヒーを頼んだ。
テーブルの下、紙袋をそっと押し出す。 中には、ファイルと1枚の地図。
マイケル「こいつが最初のプレゼントだ。 お前が追ってた“血液製剤”―― それ、単なる都市伝説じゃねぇぞ」
東條は黙って中身を見た。
古びたラボの設計図、 匿名化された人体実験データ、 そして、ある血液製剤に付されたプロジェクト名。
【Project LUCIFER(ルシファー計画)】
マイケル「場所は、アリゾナ州フェニックス郊外。向こうには“お仲間”が待ってる」
東條は、ファイルを閉じてマイケルを見る。
東條「……なぜ俺にこれを渡す?」
マイケルは肩をすくめた。
マイケル「俺たち、裏切り者には優しいんだよ。 公式に動けない連中の“手”ってのはな、 いつだって外道上等なんだ」
沈黙。 だが、そこにはもう敵意はなかった。
あるのは、 “それでも、やるか?”という無言の問い。
東條は立ち上がった。
東條「一つだけ、覚えておけ。 俺は誰の駒にもならない」
マイケルは、ニヤリと笑った。
マイケル「上等だ、坊ちゃん。 俺もそうさ」
ふたりは、カフェを出た。 夜のロサンゼルスの街に、冷たい風が吹いていた。
【コンタクト成立】 【次指令地:アリゾナ・フェニックス】




