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妖精に愛された亡国の王女、少年として軍に潜む  作者: 月焔 レイ
第一章 (1)【幼少期〜軍属編】
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第五話 焔の中の真実


「どう思った?」


 ベッドに腰掛けたノエルにルークは尋ねた。


「んー。なんとも言えないけど、悪い人たちではなさそう……かな。でも自信ない…」


 案内された部屋は一つしかベッドはなかった。

 病み上がりのノエルがベッドを使い、ルークはソファーで寝ることにした。


 ソファーは、グレイン軍曹が運び入れてくれた物だ。ノックがして扉を開けると、ソファーを担いだグレイン軍曹が立っていた。そして、「これで寝ろ。」と言い放ち、ソファーを置いて出ていった。

 正直、とても驚いたし、少し怖かった。


「軍人ってもっと嫌な奴らばかりだと思ってた。」


 ルークがポツリと呟いた声は、思った以上に部屋に響いた。


 実際、今まで会ってきた軍人はそうだった。あからさまに子供だと見下し、孤児だと分かると蔑まれた。恐らく、彼らは少し変わっているのだろう。

 

「誤魔化すのは無理があるな…」

「そうだね…僕が言っちゃったから…ごめんなさい。」

「ノエルは悪くねぇよ。あの手腕じゃ、遅いか早いかだけの違いだ。」

 

 流石のルークも、知らないふりをするのは無理だと分かっていた。とどめは今日の副官だ。


 彼等はきっと、いくらでも今日の尋問の中で鎌をかけることは出来たのだ。


 それをしなかったのは、彼らの優しさだったのか。

 もしかしたら、ルークたちが話すのを待っていてくれたのかもしれない。

 

「強制してくれた方が、楽なこともあるんだな。」


 ルークはため息を吐いた。


 これから中佐との話し合いがある。


 吉と出るか凶と出るか…


 だが、ルークは負ける気はしなかった。

 いつだってなんとか乗り越えてきたのだ。


 今回だってきっと大丈夫。悪いことにはならない。そんな根拠のない自信があった。


 ⸻⸻


 コンコン


 人の個性はノックにも出るらしい。中佐のノックは、低く落ち着いていた。


「どうぞ。」

「私だ。話をしたい。下のリビングで待っているから兄の方だけ降りてきてくれ。」


 中佐はそう告げると、ゆっくり遠ざかり、階段を降りていった。


 ノエルと顔を見合わせる。


 「行ってくる」 


 ルークはノエルに向かって囁いた。


 「気をつけてね」


 というノエルは消えそうな声を出し、泣きそうな顔をしていた。

 その顔にルークは笑いかける。"大丈夫だ"そう伝えるように。


「取って喰われはしねーよ。

 それなら、とっくに喰われてる」


 ルークはくしゃくしゃっとノエルの頭を撫でた。


「じゃ!行ってくる!」


 元気の良い軽い足取りで、ルークは部屋を出た。

 パタンとドアの音が後ろで響く。ドアにもたれかかり、深呼吸をする。

 1、2、3。パチリと目を開け、気合を入れた。

 行ける、大丈夫。

 

 ──俺らは、負けない。


 ルークは静かに、一歩を踏み出した。


 ⸻⸻


「お待たせしました」

「いや、疲れてるところ悪かったな」


 なぜか中佐にお礼を言われ、拍子抜けする。てっきり魔術のことを詰問されると思って気合を入れていたのに、少し気が抜けた。


 椅子を引き、中佐の対面に座る。木でできた椅子は、少しルークには高かった。


「君たちは、なんで軍が嫌いなんだ?」


 そう中佐に切り出され、ルークは目をパチクリさせた。この人には驚かされてばかりだ。そんなこと聞かれるなんて思わなかった。


「なんで嫌いだと思ったの?」


 ルークがずっと感じていたことだ。中佐はルークたちが軍を嫌いだと夕食の席から決めつけていた。どうして嫌いだと思うのか、不思議だった。

 だって、ルークは一度も嫌いだなんて言っていないのだ。


 その問いに、中佐は苦笑をして答えてくれた。

 

「君たちは、多分、魔法が使えるだろう。

 反応から言って、恐らく、弟の方も使えるんだろうとは思っている。

 そのあたりの機微には聡いつもりだ。


 君は、俺の顔を見た時、『見つかった。』そう唇が動いた。その時は何のことか分からなかったが、きっと魔法を使えることを隠して、軍から逃げていたんだろうと気づいた。

 真っ青な顔をして、こちらを見ないようにしていたからな。分かりやすかった。


 だが、君たちは孤児だ。

 魔術が使えるなら軍にいる方が確実に良い暮らしが出来る。名誉も権力も手に入る。

 知っての通り、マレディア王国で魔術が使える人間は貴重だからな。簡単な魔術が使えるだけでも重宝される。


 それでも、孤児で居続けた理由があったはすだ。

 夕飯を取りながら、理由を考えていたが。軍が嫌だった。そう考えると辻褄が合う。


 私は、軍人だ。だが、君たちを拾ったからには責任を持とう。それが、私の生き方であり、信念だ。


 そのためにも、何故、軍が嫌いかを教えてほしい」


 ここまで馬鹿正直に言われるとはルークも想定外だった。正直やりにくい。ルークは素直にぶつかってこられる方が苦手だ。素直になりたくなるから。


 真正面からぶつかってくる中佐に、ルークも姿勢を正して答えた。


「軍人は…俺らのこと蔑んできたから、嫌いだ。」

「そうか…悪かった。」

「なんで?中佐は関係ないじゃん。中佐はちゃんと話を聞いてくれる。」

「それでも、同じ所属の奴が嫌な気持ちにさせたのだろう。幼い君たちがそこまで嫌がるようになることを。だから、悪かった。」

「いいよ。今は嫌な奴ばっかじゃなくて、軍の中にもそうじゃない人達がいるってことは分かったから。」

「そうか。感謝する。」


 どこまでも対等に向き合ってくれる中佐に、隠している自分のほうが馬鹿らしくなった。

 どうせ知られるなら、こんな人のほうがいいのかもしれない。

 自分が悪く無いとしても、悪かったと言ってくれる、この人なら。


 ルークは一つ深呼吸し、覚悟を決めた。


「もう一つある。軍が嫌いな理由。」

「…なんだ。」


 唇が乾燥してのどが渇きを訴えた。

 浅くなる呼吸を必死で整える。


 言える。


 ⸻言え。


 ノエルは息を吸い込み、言い放つ。

 誰にも告げたことのない秘密を⸻



「俺らは、軍に焼き尽くされた村の生き残りだ」

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