第二十話 不穏の前の平穏
本日、双子のサイドストーリー(短編)を更新しました。
お楽しみいただけたら嬉しいです。
ゆらゆらと揺れる感覚に目を開ける。目の前でアッシュの白髪が揺れていた
どうやらあのまま俺は寝てしまったらしい。
今は皆で帰る途中らしい。
「最初は中佐がおぶって帰るって聞かなかったんだけどさ。『自分の立場を考えてください』ってヴァイスさんに怒られてたぜ。」
「愛されてんなー。」というアッシュの軽い声に、「ちげーよ。」とルークは返す。
……そうだったら、よかったんだけどな。
現実はなかなか厳しい。
ふと、街の人々の視線が嫌に集まっているのに気づいた。
「なぁ、なんか注目されてね?」
「ん?そりゃそうだろ。フェルンベルクでもアルグレイ隊はめちゃくちゃ有名だし、人気だぜ?何と言ってもタイプの違った美形揃い。誰を選んでも出世することに間違いなし。その割に全員身持ちが固くて浮いた噂の一つもない。
どんな人が口説いても、優しく躱されるって噂だぜ?
だから俺、そんな人たちに入り込んだお前ら兄弟に興味持ったんだから」
「蓋を開けてみたら、普通におもしろいやつだったけどな」とアッシュは笑っている。
話し声が聞こえたのか、渦中の人物たちがこちらを振り向いた。…確かに美形揃いだ。
「あれ?起きた?起きたなら歩きなさーい」
ほろ酔いのリア先輩がチョップを入れてきた。
それもそうだ。
アッシュにお礼を言い、ルークは背中から飛び降りる。
「起きたなら今度は僕をおぶって。眠い。」
ウィル先輩が後ろから抱きつき、体重をかけてきた。
潰されそうになっているルークを見かね、ヴァイスさんが助けてくれる。
「こら、ちゃんと歩け。明日の新聞に載るぞ」
「こんなんで記事になるなら平和な街ってことでいいじゃないですか。」
「お前、ご婦人方が悲鳴をあげるぞ。自分の人気を考えろ」
「先輩方って自分の人気分かってらしたんですね」
「そりゃ……新聞でランキングまで出されたらな?」
「そんなのあったんですか?」
「ルーク、知らないの?毎年あるんだよ。ちなみに、しっかりルークもランクインしてたよ。」
ミア先輩の言葉に目を見開く。何に入っていたかを恐る恐る聞くと…
「弟にしたいランキングと、今後が楽しみな子ランキングだったかな?
ノエルも入ってたからお揃いだね」
とミア先輩は楽しそうに笑っている。
「そんなのあるんですか…」
「今年の発表されたら、見せてあげるね」
「いりません。」
ワイワイ話す帰り道は、あっという間だった。
楽しい時間もおしまいで、あとは部屋に帰るだけ。
官舎の前で、アッシュとリオと別れた。
二人はグレインさんが送ってくれるらしい。優しさがありがたい。
「それじゃ、おやすみ。よく寝てね、ルーク、ノエル」
「ありがとうございました」
「ごちそうさまでした」
お礼を言って部屋に入る。
「おいでー。ミア、シルフィー。」
手のひらに金平糖を出してルークは二人を呼ぶ。
ひらりと舞い降りた二人をぎゅうぎゅう抱きしめ、ベッドにごろんと寝転がると、きゃあきゃあ胸元で騒ぐ声がした。
「ねぇ兄さん。そろそろ、誤魔化すのも限界なんじゃ?と僕は思うんですけど、どうでしょう?」
ノエルは自分のベッドに腰かけ、じとっとした目でルークを見ている。
「なにが?」
「何がって分かってるでしょ。性別。最近、少し成長してるし、そろそろ隠すの限界じゃない?
それに、好きな人できたでしょ?」
「…は??いや、いないけど?」
「嘘つけ。恋する乙女、って顔してるときあるよ。中佐見てるとき。」
僕を欺けると思うな。と睨む視線は誤魔化せそうにもない。
「いや、まじでそんな顔はしてないと思うんだけど、誤魔化すのはまぁ…厳しい…ときもあるかもしれない。」
ルークももう14歳だ。そろそろ身体的な特徴もごまかせなくなるし、限界が近づいていることは悟ってはいた。
「…もう少し、平気だろ。」
ルークは問題を棚上げにして、先送りにした。
「ちゃんと相談するんだよ。バレてからじゃ、協力してくれた中佐にも迷惑かかるんだからね。」
その一言が、無駄に胸に刺さった。
最近、刺さる棘はなかなか抜けてくれなくて困る。
ルークはベッドに突っ伏し、そのまま目を閉じた。
目が覚めた時、全部なかったことになっていればいいのにと願いながら。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ブックマークやいいねしていただけると励みになります!よろしくお願いします。
毎日朝6時40分に投稿しています。
更新頑張りますので、応援よろしくおねがいします。




