6-14
病院へ着いて一旦、みやちゃんと車に乗せてくれたみやちゃんのお母さんと別れます。
お母さんは、ちゃんと部屋っぽい病室に移動していました。何だか怖いガチャガチャした機械もありません。
「お母さん、一応昔のスマホ持ってきたけど使える?」
「うん、ここは良いみたいだから助かるわ」
これでお母さんと連絡を取り合えます。一安心です。
その後は、図書館でみんなと本を選んだことやイベントで人が多かったことなど時間いっぱい話しました。不思議です。前より一緒に居られる時間は短いのに、前よりもいっぱい話をしている気がします。
「じゃあまた来るね」
「気をつけてね」
病室から出て、みやちゃん達との待ち合わせ場所に向かいます。これからはスマホのアプリで連絡を取れるから寂しくないです。
待ち合わせ場所には既にみやちゃんとそのお母さんが居ました。
「お待たせしました」
「いいのよ、お母さん元気だった?」
「はい、元気になってました」
「それは良かった」
病院の外へ出ます。相変わらず気温は高いままです。
「車回してくるから日陰で待ってて」
みやちゃんのお母さんが駐車場へと歩いて行きました。
「ねぇ、芽生ちゃん」
「うん?」
みやちゃんの声は少し落ち着いていました。
「にいなママが、山本沙那ちゃんのお母さんの友達って言ってたよね、さっき」
「うん」
「頭おかしいって思ってたけどさ、友達の子供が行方不明になっちゃったら自分の子供もって思っちゃったのかな。頭がおかしくなるど怖かったのかな」
「かもしれないね」
「だとしても、やって良いことと悪いことあるけど、何か……難しいね」
「うん、難しい」
みんな考えていることがバラバラです。何に怖いと思うのかもバラバラです。みんな一人一人違う恐怖に怯えています。
誰かが分からないことを黒姫さんのせいにして、ハルちゃんが黒姫さんに怯えて、みやちゃんは変わってしまったハルちゃんに混乱して、連鎖的に広がっています。凄くややこしくて難しいです。
みやちゃんのお母さんが運転する車が来ました。
「山田さんの家へ行けば良いんだよね。道案内お願いね」
「はい」
車が発進します。遠くからサイレンが聞こえて、病院が見えなくなった頃に救急車とすれ違いました。
山田さんの家に辿り着くと、やっぱり家の大きさにみやちゃん達が驚いていました。お礼を言って車を降ります。
「ただいま」
「おー戻ったか」
和室に入り、鞄の中身を整理します。そんな私を、山田さんは畳に寝そべりながら見ています。
「お母さんどうだった?」
「元気だったよ。怪我の治りも順調だって」
「良かったな」
「そっちはどうだったの?」
「まぁ、色々と話は繫がった、のかな」
卒業アルバムに写っていた葉月さんは、やっぱり山本沙那さんのお母さんの友達で、三日月さんの今のお母さんでした。
「旧姓とかややこしくなるから全部ママ呼びでいいか」
「沙那ママの友達、全員子供いるの?」
「……分かってない大場佐里菜だけ大場……いや、結婚して名字変わってるかもしれないから佐里菜呼びの方がいい? にいなママ、沙那ママ、三日月ママ、佐里菜。面倒くせぇな、何で結婚したら名字変えんだよ」
「それは偉い人に訊いてよ」
「あー後、姫からこんな話も聞いてさ」
姫ちゃんの弟さんから聞いた話では、最初に黒姫さんのことを騒ぎ立てていたのは、にいなちゃんだったそうです。母親が言っていたことをそのまま話していたとのことです。
「つまりは、沙那ママとにいなママは祟りなり黒姫さんなりを恐れている。三日月ママも誰かを殺した……ってのは確実じゃねぇけど三日月が不審に思うくらいの何かがあった。最後の一人は分からんが、この三人には何かやましいことがあったんじゃねぇかって、松岡が」
「そっか、三日月ママが変になったっていうのは沙那ちゃんの行方不明よりずーっと前だもんね。子供が消えたのは結果かもしれないんだ。子供が消えたからおかしくなったんじゃなくて、何かいけないことがあったせいで子供が消えた」
「あ、確かに」
「え」
そういう話じゃなかったのでしょうか?
「まあ、でも怪しい奴はぐっと絞れたし、黒姫さんの騒ぎが大きくなった原因も大体分かった。取り敢えず姫にあの六年生達の連絡先は教えたし、話すみたいだったから、少なくとも黒姫さんの方は何とかなるんじゃねぇか?」
「やっぱり話し合いって大事だね。みんなが持ってる情報を集めるだけでちゃんと進むんだね」
「……そうだな」
一瞬、山田さんの様子がちょっと違う気がしました。でもすぐにお菓子をねだりに和室から元気良く出ていったので、多分気のせいです。




