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お城か旅館かと思うほど長く、白い和風の塀が続いています。
「これ、本当にお家なの?」
「うん、山本さんのお家。本家とか言ってたよ」
なら、倉は山本さんのお家のものなのでしょう。
「お宝がある倉って、この塀の中?」
「ううん、外にあるお手伝いさんの家の横」
「お手伝いさんの……家?」
「家の近くにお手伝いさんを住まわせてたんだって。今はほとんど空き家みたいだけど」
凄く、お金持ちって感じがします。
倉はいかにもな漆喰の壁で、後ろにある竹林と並べるととても絵になりました。
「鍵とかはかかってないの?」
「かかってるよ。でも、こっち来て」
和兎くんが倉の裏側へ進みます。裏側には簡易的に物を置く為の屋根付きの置き場がありました。木の箱が無造作に置かれています。
「実はここに秘密の入り口があるんだ」
和兎くんが木製の床に触れると、そこがキィィと音を立てて開きました。開いた先は二メートルくらいの深さの穴になっていて、はしごが固定されていました。
「凄い! 忍者屋敷みたい」
しぃちゃんが我先にとはしごを下りて行きました。危なっかしくてヒヤヒヤします。
「奥まで続いてるよー。でも真っ暗だよー」
「右側の壁にスイッチがあるはずだよ」
パッと穴の中が明るくなりました。それと同時に、しぃちゃんの足音が奥へと進んで行きます。
「一人で進んだら危ないって」
私もはしごを下ります。しぃちゃんを追いかける前にふと入り口を見上げると、和兎くんの様子が少し変です、
「ごめん、ちょっと気持ち悪くなっちゃったから、ここで待ってる。中ごちゃごちゃしてて危ないから気をつけて」
心配ですが、先に進んでしまったしぃちゃんも心配です。
「早めに戻るから」
しぃちゃんを追いかけて穴の先へ進みます。突き当たりには上り階段がありました。そこを上がると、物がギチギチに置かれた部屋がありました。近くにあったスイッチを点けると、部屋の中もパッと明るくなります。
大きい箱、小さい箱、タンス、布のかけられているもの……色んな物がほこりを被ってそこにあります。箱の中には綺麗な皿や高そうな花瓶、金ピカの何かの道具などなど本当にお宝みたいなものが入っていました。子供が出入り自由なセキュリティーで大丈夫なのでしょうか?
「本みたいなのもあったよー、ふぇっくしょん」
しぃちゃんが、本を開いた時に舞い上がったほこりでくしゃみをします。そのままふらついて、後ろにあった棚にぶつかりました。箱をたくさん載せた棚が、ぐらりと揺らぎます。
「危ない!」
ガタン、ドサドサッ。棚が壊れました。
「何の音! どうしたの、ねぇ!」
遠くから和兎くんの叫び声が聞こえます。
「棚が壊れて、私達は大丈夫だけど……けほけほっ」
ほこりが舞い上がって何も見えません。私はしぃちゃんの手を離さないように床を這いながら、来た道を戻ります。
「芽生ちゃん、しぃちゃん、良かった無事……だけど、凄いね」
私もしぃちゃんも、ほこりまみれ泥まみれです。凄く気持ち悪いです。
「取り敢えずお風呂借りてこう」
和兎くんに連れられて山本家の塀の中に入ります。庭園みたいな庭でした。
「勝手に入っちゃって大丈夫? 立派過ぎて怖い」
「大丈夫だよ。たとえ壊しちゃっても気づいたら元に戻ってたりするから。さっきの倉の棚だって、もう元通りかもしれないし」
やっぱりここは変な世界です。
お風呂は旅館にありそうな岩風呂でした。他にも屋敷内に色んなお風呂があるそうですが、とにかく早く綺麗になりたいので一番最初に見つけたこのお風呂にします。
「じゃあ僕はサイズの合いそうな服探してくる」
「ありがとう」
湯船には丁度良い湯加減のお湯が既に入っていました。風呂桶にお湯を汲んで、ザバッと被ればすっきりです。
髪と体を洗い、ちゃんと洗えているように見えなかったしぃちゃんを手伝います。
「あれ、日焼けした?」
「そう?」
しぃちゃんの肌に、うっすら服の跡があります。私もちょっと日焼けしていました。
お風呂から出て、和兎くんが見つけてきた服に着替えます。
「ブカブカだね」
「丁度良いサイズのは見つからなくて。服屋さんに行って新しいの探してきた方がいいんじゃないかな」
「服屋さんから勝手に持っていっちゃうの?」
「だってここは僕達しか居ないし、今までもここに来た色んな人と勝手に食べたり使ったり持っていっちゃったりしても何もなかったよ。時間が経てばお店も元通りだし」
何で夢のような世界なんだろうと思いましたが、そういえば夢でした。
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