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目を覚まして、そのままスマホで地図を見ます。あの公園はありましたが、遊具がだいぶ違っていました。あれは昔の公園だったようです。
「起きてるかー、朝メシだぞー」
ふすまの外から山田さんの声がしました。
「今起きたところ。ちょっと待って」
朝ご飯を食べて、その後どうしようかと考えます。他人の家は緊張してしまいます。
「お見舞いって行っても良いのかな」
「確か午後だった気が、ちょっと調べるわ」
お見舞いに行っていいのは午後の二時から五時までの間でした。それも長居はできないみたいです。
「じゃ、それまでゲームしようぜ」
「宿題もちゃんとやるんだよ」
「何言ってんだよ、夏休みは始まったばっかだぞ。今から焦る必要ねぇだろ」
八月三十日過ぎに焦る山田さんの姿が目に浮かびます。
午後になって、アミラさんに送ってもらってお母さんのお見舞いに行きました。山田さんはお留守番です。
「お母さん、スマホ壊れちゃったって聞いたから、前に使ってたやつ持ってこようか? アプリは使えるみたいだし」
「ありがとう。でも、この部屋じゃ使えないから。もう少ししたら使える部屋に移動できるみたいだけど」
短い時間はあっという間に過ぎて、帰る時間です。バイバイをしてお母さんと別れます。また明日も会いたいですが、流石に毎日アミラさんに送ってもらう訳にもいきません。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
アミラさんがトイレマークの矢印の先へと行って、姿が見えなくなりました。迂闊に動くと迷子になってしまいそうなので、じっとしています。
「あれ、佐倉ちゃん」
振り返ると、お化け屋敷の管理をしているおばさんが居ました。
「どうしたの? 具合が悪いとか?」
「いえ、お見舞いに来たんです。おばさんは?」
「私はぎっくり腰の付き添いよ。それより聞いてるかしら、キーホルダーちょっと捜せなくなっちゃったのよ。警察の人が見つけてくれるかもしれないんだけど、戻ってくるまで時間がかかっちゃうみたいで。ごめんね」
「あ」
ドキッとしました。きっとこのまま誤魔化すこともできると思います。でも、それは嫌でした。あの自分勝手な大人みたいになりたくありません。
震えます。息を、強く吸います。
「ごめんなさい、実はあれ、あれは嘘……嘘じゃないけど、怒られてる山田さんから気を逸らせようとわざとやって、まさか捜してもらえるなんて思ってなくて、ごめんなさい」
深く頭を下げました。怖くておばさんの顔が見れなくて、頭を上げられません。人の歩く音、病院のアナウンス、うるさいくらい頭に響きます。
「……良かった」
びっくりして顔を上げてしまいました。おばさんは、笑っていました。
「宝物見つからなかったらどうしようかと思ってたのよ……あら、どうしたのよ。おばさん怒ってないから泣かないで」
私にも分かりませんが、涙が、止まりませんでした。泣いたら困らせてしまうのに、止まりません。おばさんがくしゃくしゃって頭を撫でます。
「じゃあ、これからは悪いことはしない。もし、してもちゃんと謝る。ね」
「はい」
時報の音がします。少し落ち着いてきました。
「もう大丈夫かな。そろそろ行かないと」
「はい。あ、あの、一つ訊いてもいいですか」
「何かな」
「……秘密基地、写真で見たんですけど、芝原さんとかが遊んでた秘密基地ってどこにあったんですか?」
記憶をたぐり寄せるように、おばさんは目を閉じました。
「懐かしいわね……私も詳しくは知らないんだけど『やすらぎの村』ってあるでしょ。ギャラリーとか陶芸教室とかがある。あの近くにある誰かの家の土地にあったらしいのよね。道路側からは子供しか通れない木のトンネルがあったとか……流石にもうないと思うけどね」
「ありがとうございます」
おばさんと別れました。そして、凄く丁度いいタイミングでアミラさんが戻ってきました。
「おまたせー」
「……見てました?」
「なっ、何のことかなー」
車に乗ると急に眠くなってきて、山田さんの家に着いた頃にはもう眠たくて眠たくて、今日は早々に寝てしまいました。




