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フルーツサンドは、テレビやネットで見かけるような見栄えのする凄くボリューミーなものでした。とても美味しかったですが、量が多いです。
「じゃ、これであんたとの用は終わりだな」
「うん。何か分かったら姫に連絡欲しい」
「わーったよ。じゃ行くか」
フルーツサンド店を出ると、日差しはぐっと強くなっていました。
「どっか行きたい場所あるか?」
「それならお化け屋敷の近くのおばさんの所に行きたい。もしまだキーホルダー探してたら悪いから、謝りたい」
「分かった」
ショッピングモール付近の賑やかな場所から移動して、人も車も少ない道まで来ました。日差しを、所々にある影で避けながら進みます。
「別にあんたはもう帰ってもいいんだけど」
振り返ると、姫ちゃんが数歩後ろを歩いていました。
「だって気になるし、それに」
急に走り寄ってきて、私と山田さんを抱え込むように抱きつきました。
「つけられてるよ」
姫ちゃんがカーブミラーを指差しました。カーブミラーには、私達の後ろの塀に隠れてこちらを見ている小さな子供が映っていました。お化けかと思ってびっくりしましたが、生きてる子供のようです。
「知ってる子?」
「いや、知らねぇ」
「私も分からない」
つけてきている子は真顔で、何のつもりなのか何を考えているのかさっぱり読めません。
「誰を狙ってるのか分からないけど、気味悪いから今は一人になりたくないの」
「でも、どうする?」
「まぁ、いいだろ。ストーカーがどれだけ根性あるか確かめてやろう」
「そういえば二人ともどこ向かってるの?」
「お化け屋敷」
「えっ」
次を曲がったらお化け屋敷という所まで来ると、跡をつけてきた子供の姿は消えていました。
角を曲がってお化け屋敷が見えた時、予想もしていなかったパトカーがどんと停まっていて、私達三人はびっくりして足を止めました。他にも車があって、大人が数人うろうろしています。
「あ、坂本」
振り返ったのは警察の坂本さんでした。
「お嬢ちゃん、だから人には丁寧に……って、まあいい。佐倉さん、丁度良かった。あの空き家にキーホルダー落としたっていうのは君で間違いない?」
「えっ、は、はい」
「それはどんなキーホルダーか教えてくれないかな」
「えっ? えっと、えっと」
一体何があったのでしょうか。私のキーホルダーが何かとんでもないことになってしまったのでしょうか?
山田さんが私と坂本さんの間に割り込みます。
「いや、何だよ。何があったんだよ」
「……いや、詳しくは話せないけど怪しいものが見つかって、それが何なのか調べてるんだ。だから近くに落ちてたりした物が関係するかどうかを知るために一応な。全くの間違いの可能性もあるから、ここでのことは秘密だぞ」
取り敢えずスマホで画像検索をして、見つけたキーホルダーの画像を坂本さんに見せます。画像を確認した坂本さんは「ありがとう」と言って、忙しそうに離れていきました。
他の人もみんな忙しそうでした。おばさんの家も近寄れる雰囲気ではなかったので、私達はその場から離れて何となく山田さんの家に行きました。姫ちゃんも付いてきました。姫ちゃんも山田さんの家に驚いていました。
「折角だし、知念グループのこと話せよ」
何気なく山田さんが言いました。
「え、聞きたい? 聞きたい?」
姫ちゃんの目が輝きました。それからは、ずっと姫ちゃんの独演会でした。
「みかっちって髪、茶髪じゃん。生まれつきなのに髪染めるなーって言ってくる頭おかしい人がいてさ。何度説明しても「そんな訳ない」って。はぁー? ってなるじゃん。そしたら、れおれお自分でブリーチ剤買ってきて、自分で金髪にしちゃってさ。最初の頃はすっごいまだらだったんだよね。で、変なこと言ってくるじじばばには「だから何」だけで返してたら、あいつら何も言わなくなってさ」
「やだ、イケメン」
気がついたらアミラさんも交じっていて、ノリノリで話を聞いていました。一方、話を振った山田さんはぐったりしています。
姫ちゃんの話はほとんどが恋バナでした。本当の恋愛がうんぬんということではなくて、少女マンガに出てきそうなシチュエーションで一喜一憂している感じでした。
それと姫ちゃんは自分の話はせずにグループのみんなの、主に三日月さんと知念くんの話ばかりしています。姫ちゃんはこの二人のことが、とても好きなようでした。
「いっぱい話せて楽しかった。バイバイ」
散々喋った後に姫ちゃんが帰ります。夕方まで喋り続けても声の枯れない姫ちゃんは凄いです。
「あんたもそろそろ帰るか? 送るよ」
「うん」
帰り道、ぼんやりと町内放送が聞こえます。何だか少し寂しいです。暑さのせいか雑草もボサボサで花一つなく、元気がありません。
「これ、花むしられてねぇか?」
「え」
良く見ると雑草は、無理矢理引き千切られていました。
「草刈りのつもり?」
「にしては雑過ぎるだろ」
何だか奇妙です。




