5-15
学校の休み時間、何故か六年生から呼び出されました。心当たりもなくて不安だったので、みやちゃんとゆりあさんに付いてきてもらいます。喧嘩する気満々だった山田さんは置いてきました。
呼ばれた場所には六年生が三人居ました。
「そんなに怖がらないで、私達は味方だから」
六年生の一人、活発そうな女の子が名刺サイズの紙を何枚か渡してきました。紙には連絡先が書かれています。
「大人が信用できないから私達で自警団を作ったの。お化けでも不審者でもその他何でも、大人に相談できないことがあったら頼って欲しい。君達も。困ってる人が居たらこれ渡して」
みやちゃんとゆりあさんにも連絡先をいくつも渡しています。
「それで、私達は情報を集めてるの。不審者のことなんだけど、分かる範囲でいいから教えて欲しいんだ」
戸惑いましたが、お母さんが話してくれた程度のことだけ話しました。
「分かった、ありがとう。他にも何か情報があったら教えて欲しい。様子のおかしい子とかも居たら知らせて」
「様子のおかしい子?」
すると後ろに居た男子が話し始めました。
「……実は三年生の数人がネットにあった怪しい除霊術? みたいなのを鵜呑みにして、やって、事故ったんだよ。幸い大したことはなかったんだけど、一歩間違えてたら取り返しがつかなかった……俺の弟がそれで怪我してさ、同じようなことをやらかしそうな奴が居たら教えて欲しいんだ」
六年生が去って行きました。
「三年生の、誰かが言ってたけど本当だったんだ」
心なしか、みやちゃんの声から元気が消えました。ゆりあさんは渡された紙をじっと見ています。
「そろそろ戻りましょうか」
教室へ戻る間、考えます。大人に相談できないことなら、いっぱいあります。でもそれは子供にも相談できないことです。
一学期最後の日の朝になりました。明日からは長い夏休みです。喜んでいる人が大半でしたが、私は少し寂しくなりました。
これから中々会いにくくなるみんなと、あれこれ話をします。……何か、忘れているような気がします。
「あ、そうだ。堂本くん」
キーホルダーのことを堂本くんに話すのを忘れていました。
「キーホルダーがお化け屋敷に?」
「近くの人が預かってるんだけど、もし捜してる人が居たら教えてあげて」
「……分かった。ありがとう」
堂本くんは怪訝そうな顔をしていました。お化け屋敷に落ちてたなんて聞いたら、そんな反応になってしまうのも無理はないでしょう。
「あれ、ゆりあさん居ないね」
何処からか、そんな声がしました。確かにゆりあさんが居ません。ゆりあさんのことですから遅刻ではないでしょう。お休みでしょうか? いつも皆勤賞な人なのに珍しいです。
チャイムが鳴って島倉先生が入ってきました。みんな慌ただしく席につきますが浮足立った雰囲気のまま、ざわついています。
ですが、先生の暗い顔が見えた瞬間、教室が静まり返りました。
「瀬戸内ゆりあさんが、事故に遭いました」
しんと静まってから数秒後、一気にざわめきました。
「命に別状はないそうですが、まだ詳しいことは分かりません」
教室中が混乱しています。誰かのすすり泣く声も聞こえます。
「何で、お祓いしたのに」
震える声で、誰かが言います。
「これからの夏休み、みんなも十分注意して危険のないように過ごして下さい」
一学期がとんでもない空気のまま終わり、夏休みに突入してしまいました。




