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5-12


「ねぇ」


 月曜日の朝、誰かに呼ばれて振り返ると茶髪の女の子が立っていました。知念くんのグループの、髪飾りをたくさん付けた三日月さんです。


「佐倉芽生って、あなただよね」

「そうだけど」


 普段あまり……いえ、今まで一度も彼女とは話をしたことがありませんでした。彼女はとても暗い顔をしていて、思い詰めているように見えました。


「ううん、何でもない。忘れて」


 それだけ言って、三日月さんは逃げるように何処かへ行ってしまいました。何だったのでしょうか?


 それから三日経ちましたが、三日月さんが何で話しかけてきたのか分からないままです。気になって知念くん達のグループを見るようになりましたが、いつも一塊で行動していたグループが今は二つに分かれています。喧嘩したという雰囲気ではありませんが、何かあったのは間違いないでしょう。


 今日も学校か終わり帰りの会も終わって、みんながランドセルを背負いながら外へと向かいます。そんな中、島倉先生が慌てた様子で教室に入ってきました。迷いなく、私の所へとやって来ます。


「佐倉さん、近所の人から佐倉さんの家の近くに不審者が居るみたいだって連絡があって、確認できるまで家に帰らないで欲しいんだけど……それまで学校に居るかお友達の家に居るか」


 急に言われて驚きます。そんなこと言われても、どうすればいいのでしょう。


「じゃあ、家くる?」


 山田さんがさらっと言いました。


 今日は山田さんの地区の人と一緒に下校しました。何だか凄く居心地が悪かったです。

 山田さんの家にはアミラさんが居ました。アミラさんは家でお仕事をしているらしく、いつも家に居るそうです。


「いらっしゃい、連絡は貰ってるよ。大変だったね」

「はい……」


 大変と言われても、未だに何が起こっているのか良く分かってないので、ピンときません。不審者って誰なのでしょうか? 向かいのおばあちゃんの早とちりなら良いのですが。


 時間が経って、すっかり日が暮れてしまいました。大丈夫になったらお母さんが迎えに来るはずなのですが、連絡すらありません。そわそわしてきます。

 廊下の向こうからアミラさんがスマホ片手にやって来ました。


「芽生ちゃん、何だか時間がかかるみたいだから今日はうちに泊まることになっちゃったけど、必要なものってある?」

「え」


 想像もしていないことになりました。


「泊まるって、家に帰れないってことですか? 誰が来たんですか? お母さんは? お母さん大丈夫なの?」


 不安が急激に押し寄せてきました。こんなこと今まで一度もありません。とんでもないことが起こっているのではないでしょうか?


「危ないとかじゃなくて話し合いが長引きそうみたいなの。私も詳しくは分からないけど、危険が迫ってるとかじゃないから」


 良く分かりません。分からないから心配です。


 三十分くらい経ってからお母さんが来ました。


「お母さん、何があったの? 大丈夫なの?」

「大丈夫よ。ちょっと話し合いが大変だから今日はアミラちゃんの家で良い子にしててね。明日には解決してるはずだから」


 お母さんは、着替えや歯磨きセットなどを私に渡すと足早に戻って行きました。小さくなっていくお母さんの後ろ姿を追いかけたかったです。遠くへ行ってしまわないようにギュッて掴んで離したくないです。でも、そんな我が儘できません。


 アミラさんの作った晩ご飯は、家ではあまり出てこないメニューでした。お洒落な食器に盛られていて食べるのに緊張します。きっと美味しかったはずなのですが、味はあまり覚えていません。


「そういえば山田さんの親っていつ帰ってくるの?」

「言ってなかったっけ? うちは今、アミラと二人だよ。父は海外出張、母はいねぇ」


 驚きました。凄く我が儘に育てられたんだろうなと思っていましたが、色々と事情がありそうです。


 お風呂に入ります。山田さんの家のお風呂はとても大きかったです。テレビの豪邸拝見番組で出てきそうなほど立派で、良く分からない機能がたくさん付いていました。シャワーの使い方すら分からなくて、思いっ切り冷水を浴びてしまいました。散々な日です。

 脱衣場には肌触りの良いパジャマが用意されていて、いつも通されていた和室にふかふかの布団が敷かれていました。いつも家で使っているものよりも遥かに寝心地の良い布団です。でも、眠れません。


 一体何が起こっているのでしょうか。不審者って何者なのでしょうか、家に関わりがある人なのでしょうか? お母さんは本当に大丈夫なのでしょうか……今考えたってどうにもならないことは分かってますが、頭が考えるのを止めてくれません。


 朝になりました。かなり早くに布団に入ったのに、結局ほとんど眠れませんでした。昨日持ってきてもらった服に着替えて、学校へ行く準備をします。……理科の教科書とノートが足りません。


「何か必要なものがあったら持ってきて貰おうか?」

「……いえ、大丈夫です」


 教科書やノートを捜されたら父の記事や、松岡くんや山田さんから貰ったコピーが見つかってしまうかもしれません。理科は学校で何とかしましょう。


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