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4-10


『火事で妊婦含む二人死亡、子供含む二人が重軽傷』


— 五日、午後三時ごろ町内にあるサンサンバーベキュー場にある小屋で火災が発生。男性二人女性一人女児一人が病院に搬送されたが、芝原万里(ばんり)さん(24)と佐倉樹生(いつき)さん(25)が死亡、女児(5)が火傷を負う重傷、男性一人が軽い火傷。芝原さんは妊婦していました。火災が発生した当時、バーベキュー場では同窓会で貸切になっていた。警察は小屋にあったドライヤーから何らかの原因で出火したとみて捜査している。


 驚きました。たくさんのことに驚いて、まず何から考えればいいのか分かりません。私は事故としか聞いていませんでしたが、何故か勝手に交通事故だと思い込んでいました。火事で、しかも亡くなったのが父だけではないなんて想像もしていませんでした。


 芝原万里……芝原さんと結婚した後の万里さんでしょう。万里さんと父は同じ火事で亡くなっていました。しかも……妊婦? ええっと、つまり……私と同い年の子供が居たかも知れないってことでしょうか? 頭がこんがらがってきました。


 ふと、夢の中で会った女の子の顔が頭をよぎります。私と同じくらいの年で万里さんの面影のある女の子。自分の心臓の鼓動が早くなっているのが分かりました。


 芝原さんは知っていたのでしょうか? 私が万里さんと一緒に死んだ人の子供だということを。だとしたら私のことをどう思っていたのでしょうか。

 深呼吸をします。他の日にちも確認しますが、続報らしき記事はありません。情報はこれだけのようです。


 サンサンバーベキュー場という名前は聞いたことがありません。もう潰れてしまったのでしょう。火災の原因はドライヤーとありますが、ドライヤーから火が出ることがあるのでしょうか? そもそも何でバーベキュー場でドライヤーなのでしょうか? 私が知らないだけでバーベキューにドライヤーを使うことがあるのでしょうか?

 気になることを調べてすっきりしたかったのに、逆に分からないことが増えて頭がモヤモヤします。もう熱が出てしまいそうなので一旦考えるのを止めます。この記事の部分だけコピーして縮刷版を本棚に戻しました。


 時間はお昼前です。やりたいことは終わってしまいましたが、お母さんが迎えに来るまで帰れません。あてもなく本棚の間をうろつきます。普段行かない場所の本棚には、タイトルを読んでも何の本だかさっぱり分からない本ばかりでした。何冊か手に取ってパラパラとめくってみますが、やっぱり何の本だか分かりません。私にはまだ早いようです。


 人の気配のある場所まで移動して、ようやく分かる本が現れました。その本棚に一人、高い所の本を必死に取ろうとしている子供がいました。知念くんです。少し離れていましたが金髪なのですぐに分かりました。

 知念くんは、はしごに気づいていないようでぴょんぴょんと飛び跳ねていました。苦手な子なので声をかけるかどうか迷っている間に、彼は本に手が届いたらしく足早に去って行きました。読書をするイメージのない知念くんが、一体何の本を読みたがっていたのか気になってその辺りの本棚へ行ってみました。


 そこは魔術や伝承といったオカルトチックな本が集められた本棚でした。意外でしたが、前にこっくりさんをやっていたのでオカルトが好きなのかもしれません。でも、だったら今日はお祓いの方に行っていそうなのですが……不思議です。


 それからはエントランスのベンチでお昼を食べたり、レシピ本とかをペラペラめくっているうちにお母さんが迎えに来ました。


「本借りなくて大丈夫?」

「うん、もう読んじゃったから」


 本を借りたら返しにまた来なくてはいけません。さらに心配性になってしまったお母さんは、きっと返すときにも付いてきてしまいます。これ以上手間を増やす訳にはいきません。


 いつの間にか雨の上がった帰り道は、久し振りに見えた夕日で赤く染まっています。まるで燃えているみたいです。


 ……お母さんは何で父のことを何も教えてくれないのでしょうか。


 月曜日になって学校へ行くと、教室の雰囲気は少しだけ明るくなっていました。すっきり晴れた天気のおかげもあるのでしょうが、お祓いの効果があったようです。


「これプレゼント。お守りだよ」


 ハルちゃんに神社の名前が書かれた袋を渡されました。中には「厄除け」と刺繍されたお守りが入っています。


「みやも貰ったの。お揃いだねー」

「うん、ありがとう。大事にするね」


 ハルちゃんが嬉しそうに笑っています。ハルちゃんが笑っているのを久し振りに見た気がします。ほっとしました。


 学校で黒姫さんが話題にのぼることも少なくなりました。下の学年の子供達はまだ怖がっているようですが、四年生より上になるともう普通の状態に戻っていました。

 町中で見かけていた捜査員らしき人も、あまり見かけなくなりました。このままゆっくり元に戻っていくのでしょう。


 ……芝原さんの時のように、みんな忘れてしまうのかもしれません。


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