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4-9

 クラスの希望者がお祓いへ行くと言っていた日曜日になりました。私はお母さんと一緒に、図書館のある複合施設へ行きました。


「仕事が終わったら迎えに行くから一人で外に出ちゃ駄目よ」

「分かってるよ。行ってらっしゃい」


 お母さんと別れて一人になった私は、目的の図書館へ向かう前に施設内を散策します。

 施設は、特に何もない田舎町には似合わないほど立派な外見のものでした。お芝居や映画の上映などがされるホールは一番近い映画館よりも広いですが、イベントの時しか使われていません。


 奥の方には、コインを入れると動く遊具が大量に置かれているだけの広い空間もあります。昔は何か別の用途があったようですが空き空間になってしまい、ぽつぽつと遊具が増えていったようです。

 年配の大人が「色々あって建ってしまった負の遺産」と言っていましたが、私には難しくて良く分かりません。


 入口から入ってすぐの吹き抜けエントランスには、本物の木が生えています。お洒落なベンチやオブジェなども置かれていますが、今日は雨の日の日曜日のせいか学校に通う年じゃない子供が多く大騒ぎをしているので雰囲気も何もありません。


 先の方にあるフードコートには、さらに多くの幼児とその家族がひしめき合っています。お昼になったらフードコートで食べようと思っていたのですが、席があるのか今から不安になってきました。

 散策を終えて図書館へと向かいます。自動ドアを通った先は、急に静かになって雰囲気が全然違います。


 人はそれなりに居ますが、エントランスとは比べものにならないほど静かです。入口近くの案内板を見て目的のものは何処にあるのか調べます。図書館には何度も来たことがありますが、今回探すものは今まで見ようと思ったこともなかったので何処にあるのかさっぱり分かりません。

 多分ここだろうという場所を目指して歩きます。そこは大きめなこの図書館の奥の方にあって、今までに入ったことのない場所でした。気づくとぱったり人の気配がなくなって、私以外誰も居ません。


 もしかして入ってはいけない所に入ってしまったのではないかと不安になってきました。背の高い本棚は整然と並んでいるのに、まるで迷路に迷い込んだかのような気分になってきます。合ってるはずだと自分に言い聞かせながら進みます。

 目当ての本棚に着いて、目的のものを探します。それは私が想像していたものと違っていたので、見つけるのに苦労しました。


 百科事典のようなずっしりとした佇まいの本でした。新聞の縮刷版、つまりは新聞を縮小コピーしてまとめて製本したものみたいです。私はてっきり新聞はそのまま保存されているものと思っていましたが、考えてみれば数十年分の新聞をそのまま集めていたらそれだけで図書館が埋まってしまいます。


 この図書館にある縮刷版は全国紙の二社と地方紙の一社のものです。探しているのは十年前の五月の記事、父の事故について書かれているものです。インターネットで検索しても見つけられませんでしたが、地方紙ならちょっとくらい書いてあるかもしれません。


 私が父の死について知ってることは、事故死であることと私が生まれる三日前に亡くなったということくらいです。生まれる三日前というのはたまたまではなくて、お母さんがショックで早産してしまったらしいと、誰かが誰かに話していました。

 他のことは知りません。何故か誰も教えてくれませんでした。父のことを知るには自分で調べるしかありません。父のことを知れば芝原さんや万里さんのことも分かるかもしれません。


 十年前の新聞の縮刷版は本棚の上の方にありました。はしごを使って登り、その本を本棚から引っこ抜くと思っていたよりも重かったので、危うく落としてしまいそうになりました。


「大丈夫?」


 いつの間にか同じクラスの松岡くんがはしごの下に居ました。


「うん、大丈夫。松岡くんも調べもの?」

「ううん、昔の新聞を見るのが好きなだけだから」


 新聞を読むのが趣味な子供が居るなんて初めて知りました。

 本を落とさないようにしっかり抱えながら、はしごを下ります。松岡くんに「じゃあ」と軽い別れの挨拶をして、一番近いテーブル席を目指します。


「待って」


 松岡くんに呼び止められました。


「堂本くんのこと何か知らない?」

「堂本くん?」


 確かに堂本くんはここ最近元気がありません。でもそれは、山田さん以外のクラスメイト全員にも言えることでした。お調子者の星くんですら理科室の一件以来、大人しくなっていました。


「分からないけど、何かあったの?」

「気のせいかもしれないけど、ちょっと様子が変だったから。ううん、何でもない。ありがとう」


 そういうと松岡くんは、はしごを持って何処かへ行ってしまいました。


 結構遠かったテーブル席に辿り着き、重たい縮刷版の本を開きます。ただでさえ小さい新聞の文字がさらにギューっと小さくなっていてクラクラします。

 私の住んでいる町で起こった事故……普段新聞を読まないので、どこにどんな風に書かれているのかすら分かりません。中々それらしいのが見つからず、見落としがないか何度も読み返します。


 ……ありました。小さな記事ですが、とてもインパクトのある見出しです。


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