第八話 納言さんと委員会の翌日
委員会の翌日、土曜日の昼。
私は、定子さまのお宅に来ていた。
「お邪魔しまーす!」
「いらっしゃい、納言さん」
定子さまは、今日も美しいいでたちでいらっしゃる。
私たちはいつものように定子さまのお部屋に向かい、筆記用具などを準備した。
ふと定子さまの方を見ると、ニヤニヤした笑みを浮かべている。
こ、この笑み、どこかで……?
あっ、昨日世尊寺と帰っているときも、同じ表情をなさっていたっけ。
ということは……。
「納言さん〜? 昨日、世尊寺くんと帰っていたわよね? あれ、どういうこと〜?」
やっぱり、これか。
定子さま、自分の恋愛に関しては深く語らないのに、他人にはよく聞くのよね。
「世尊寺とは委員会が同じなんです。だから、流れで一緒に帰ることになって」
「へえ? ふ〜ん?」
「本当になにもないですよ。定子さまの方こそ、一条さんとお帰りになったんですよね?」
よし、仕返しだ。
私はニヤリと笑った。
定子さまは、頬を赤くしてこう言った。
「さすがは納言さんね……。懐仁、本当に優しいの。まるで王子さまみたい」
ああ、恋をしている乙女の顔だ。
フフフ、ちょっと揶揄ってみよう。
「えー? いいですねぇ彼氏持ちは。ちょっと妬いちゃうな……」
「やっ、懐仁は納言さんであっても渡さないからね⁉︎」
慌てたような定子さまを見て、私は目を細める。
そんな姿もおかわいらしい。
「違いますよ。一条さんのことではなく。私は、定子さま一筋ですから!」
「ええっ?」
私はフフンと胸を張った。
定子さまは、驚いているようだった。
「もう、納言さんったら!」
定子さまはプクッと頬を膨らませると、シャーペンを手に取った。
そうだ、いつまでも揶揄っていないで、勉強しなければ。
私も教科書を取り出す。
「さあ、始めましょうか」
―――
一方、その頃。
世尊寺行成は、秋月斉信の家にいた。
他にも、一年三組の四条公任がいる。
そう、先日世尊寺が話していた、元気な友人たちだ。
その友人二人は、世尊寺がやってくるなりニヤニヤしだし、彼を壁に追い詰めた。
「昨日、納言さんと帰っていたみたいだな」
四条が、世尊寺を壁ドンして尋ねる。
「どういう関係なんだよ」
秋月も、口の端を緩ませながら問いかけた。
世尊寺は耳まで真っ赤になってしまう。
その間にも、四条と秋月の気持ちの悪い笑みは増していくばかりだ。
世尊寺は、下を向きながら言った。
「納言さんとは委員会が同じなんです。だから、流れでそうなったというか……」
恥じらう世尊寺がそう言うと、四条と秋月は目を合わせた。
そして、
「ホントにそれだけか?」
「付き合ってるんじゃないのかよ!」
さらに詰めた。
世尊寺は顔を赤くしつつ、ため息をついた。
彼の友人たちは、いつもこうだ。
そのため、世尊寺はいつも苦労している。
ただ、二人は浮ついた話がない世尊寺を気にかけているのだ。
顔はいいのに、なぜ、と。
まあ、二人ともなんとなく理由はわかっている。
真面目すぎて、近寄りがたいのだろう。
世尊寺自身も、もっと四条や秋月のように明るく話しやすかったら、と考えてしまうのだった。
世尊寺は、こっそりとため息をついた。




