プロローグ
私立平安学園――それは、名門私立校。
中高一貫で、有名人も多く輩出している。
今年度、その中等部に、天才と呼ばれる生徒たちが入学したようだ。
一年一組の教室内は、賑やかなしゃべり声に包まれていた。
その中でひときわ輝くのは、艶やかな黒髪を腰のあたりまで伸ばした女子だ。
たくさんの人に囲まれ、入学したばかりだというのにもうクラスの中心のようだった。
「ねえねえ定子さん、これ、どう思います?」
「まあ、素敵」
そんな光景を、離れたところでじっと見ている者がいた。
くせっ毛を高い位置で結んだ知的な瞳の女子だ。
「定子さまを困らせるんじゃないわよ……。そんなに多くの方に話しかけられたら、さすがの藤原定子さまもきっとお困りでしょうし……」
彼女がブツブツと呟いていると、
「納言さんも、こちらへ来ない?」
定子が手招きをする。
「よっ、よろしいのですか? で、では……」
あからさまに明るい笑顔になった彼女の名は、納言諾。
この学園で、やがて天才と呼ばれるようになる生徒の、一人である。
一方、一年二組。
おっとりとした女子が周りから話しかけられていた。
「彰子さんは、どこの小学校だったの?」
「あ、あの……。ええっと……」
困ったように笑う彼女は、藤原彰子。
「彰子さん、苗字は藤原よね? 定子さんと一緒だわ。ご親戚なの?」
何を言われても困り眉で何も言えない彼女に飽きたのか、その女子たちは去っていってしまう。
それを遠巻きに見ていた地味な眼鏡の女子は、ポツリと呟いた。
「彰子さまは、私と同じ小学校でした。定子さんとは、親戚ですよ」
暗い顔は前に持った本であまり見えないが、この女子こそがもう一人の天才。
名を、式部香といった。
二人の天才が同じ学年に揃ってしまった。
彼女たちの学園生活は、一筋縄ではいかなそうだ。
厄介ごとは、今も彼女たちの周りにあるのだった――。




