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聖女巡礼録 追放された聖女は敵国を旅することにした  作者: 深雪
序章 祈りの果て、旅の始まり
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序章 第二幕:作戦会議 第11話 前編

部屋の空気が少しだけ緩んだ。 誰もすぐには立ち上がらず、しばらくの間、窓の外の丘陵を眺めていた。風が木々を揺らし、遠くの空に白い雲が流れていく。

「……行こうか」

カミーユの声に、他の四人が静かに頷いた。椅子の音が控えめに響き、誰も余計な言葉を挟まなかった。


クララが扉を押すと、外の空気がふわりと流れ込んだ。午後の光は柔らかく、石畳に落ちる影が長く伸びていた。イザークはカウンター越しに目を上げ、短く言った。

「気をつけて」

それだけだったが、言葉の奥に、旅の先を見据える静かな祈りがあった。一行は店を後にし、風の向く方へと歩き出した。 扉が閉まる音が、静かに店内に響いた。


小一時間ほどかけて、ボンパドゥール伯爵家の別荘に戻った。午後の光が傾き始め、窓辺のカーテンが風に揺れている。写真撮影を終えたばかりの一行は、少し疲れた表情でリビングに集まっていた。

クララはソファに身を沈め、髪をほどきながら言った。

「撮られるって、こんなに神経使うものだったんだね……」

アンリはテーブルに肘をつきながら、地図を広げる。

「でも、旅の準備は待ってくれない。イザークの話、もう一回整理しよう」

リュカが湯を沸かしながら、静かに頷いた。

「三つのルート、それぞれに難点がある。どれを選ぶかは、目的と体力次第だ」

カミーユは窓辺に立ち、外の丘陵を見つめていた。

「フリューゲル経由なら、道は穏やか。でも距離がある。補給も計画的にしないと」

彼女の声には、撮影の疲れと旅への緊張が滲んでいた。

クララが地図を覗き込みながら言う。

「でも、セレリス山脈の霧、見てみたいな。金色に染まるって、本当なのかな」

アンリは肩をすくめる。

「道が穏やかでも、退屈だったら意味ないだろ。湖のルートの方が面白そうだ」

リュカは湯を注ぎながら、静かに言った。

「面白さより、確実性だよ。今の時期、ラック・ド・ブリュム湖は水位が不安定だってば」

カミーユは振り返り、テーブルに戻ってきた。

「じゃあ、こうしましょう。三つのルート、それぞれの利点と問題点を整理して、明日までに決める。今日は、まず情報をまとめるだけ」

クララが微笑む。

「作戦会議ってちょっと楽しいね。疲れてるけど、こういう時間は好き」

アンリが地図にペンを走らせる。

「よし、じゃあ俺がまとめ役やる。異論は……あるだろうけど、聞かない」

リュカが笑いながら言う。

「それ、まとめ役じゃなくて独裁者って言うんだよ」

窓の外では、風が草を撫でていた。その音が、彼らの選択を静かに促しているようだった。


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