表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女巡礼録 追放された聖女は敵国を旅することにした  作者: 深雪
序章 祈りの果て、旅の始まり
4/66

序章 第一幕: 見捨てられた聖女 第2話 中編

女騎士は焚火のそばからマリーを連れ出し、少し離れた場所にいる仲間の女騎士の元へ歩き出した。彼女たちはマリーを見て少し驚いたようだったが、敵意は感じられなかった。

騎士団の野営地(こんなところ)にいたらモン・ルミエール(王国)のお偉いさんたちに怒られるだろ? 飯だけ渡すから、どっかで食べとけ」

そう言って、マリーの手にライ麦のパンと缶詰を押し込んだ。ライ麦のパンは王国で主流な小麦のパンと異なり、少し硬く、重く、見たこともない色をしていた。また、缶詰には見慣れない文字が刻まれている。ヴェルナーラ皇国の保存食だろうか。

他の女騎士たちも無言でマリーに物を渡していく。毛布、ドライフルーツ、古びた水筒、そして、歩きやすそうな靴。誰も多くは語らない。ただ、焚火の光の中でマリーの姿を優しく見つめていた。

その背後から、天籟騎士団(てんらいきしだん)の男たちの笑い声と祝杯の音が響いていた。木樽から麦酒(ビール)を汲み、金属のカップを打ち鳴らしている。

「また、侵攻を防いだぞ!」

「乾杯だ、野郎ども!」

モン・ルミエール(王国)が俺らに勝つのなんか千年早い!」

その声は風に乗ってマリーの耳を打った。肩が震えて、指先が冷たくなっていく。それはただの祝杯の声ではなかった。

千数百年もの間、マリーの祖国(王国)はヴェルナーラ皇国に「異教は穢れている」という理由で何度も攻め入り、そして敗れ続けていた。

歴史書の中で嘲笑され、聖女たちの祈りは届かず、民の命は風のように散っていった。

そのすべてが今、この祝杯の音に凝縮されている。

勝者の笑い、敗者の沈黙。

マリーは喉の奥が張り付くのを感じた。

渡されたライ麦のパンと缶詰の重さが、まるで祖国の敗北の重さのように思えた。

女騎士たちは何も言わず、マリーを見つめていた。

その沈黙だけが、彼女をこの場にとどめていた。


次で2話は最後です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まあ女騎士が概ね優しいのは、相手が異教徒と言え神職なのと、勝ち戦だからか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ