序章 第二幕:作戦会議 第7話 前編
それから一週間後。カレンベルク侯爵が手紙に記していた通り、ヴェルナーラ皇国の冒険者用ガイドブックと、探検家組合加入のためのビザ発行用書類一式が、カミーユの別荘に届けられた。ガイドブックはともかく、ビザの書類は手紙と一緒に送ってくれてもよかったのではと、皆が口々に言っていた。けれど、届いた封筒の厚みと、書類の枚数を目にした瞬間、侯爵がわざわざ日を改めた理由が、なんとなく察せられた気がした。
探検家組合への加入に必要なビザ発行書類は、予想を遥かに上回る量だった。
氏名や出身地、年齢、種族、職業などの基本情報を記入する個人識別書。
過去の探検歴や所属ギルド、取得称号などを記す冒険者経歴証明書。
主な疾病歴から魔物感染症や呪詛耐性、精神安定度などを含む診断結果を記載する健康診断書。
貴族や高位冒険者からの推薦状。
皇国法および探検家組合規約の遵守を誓うための誓約書。
魔法使用者に求められる魔力適性証明書。
所持している武器・防具・魔道具の一覧を記入する装備申告書。
探検予定地や活動目的を明記する目的地申請書。
万が一の事故や失踪時に備えた緊急連絡先登録書。
そして、魔法写影による顔写真。
それぞれの書類に、細かな記入欄と注意事項がびっしりと並び、封筒の厚みがその煩雑さを物語っていた。けれど、カレンベルク侯爵はその煩雑さを見越していたのだろう。書類の束に彼の手による丁寧な手書きのメモが添えられていた。
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・写真はモン・ルミエールの北東部の御用邸の近くにある<写影亭リデル モン・ルミエール支店>で撮れます。写真とは絵ではなく、魔力で定着させた瞬間の記録です。<写影亭リデル モン・ルミエール支店>は予約が必須なのでなるべく早めに予約をするのをお勧めします。
・私の推薦状は、皇国の印章局にて正式に登録済みです。書類の中にある「推薦状確認票」は、提出時に添付してください。なお、他の推薦者がいる場合は重複しても問題ありません。
・皇国法と探検家組合規約はしっかり読んでください。内容をしっかり把握してないと思わぬ不利益を被ります。
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そんな一言一言に侯爵の誠実さと細やかな気遣いが滲んでいた。
一同はなるべく早く書類を書き終えようと手を動かし始めた。ふと、クララは書く手をとめて呟いた。
「そういえば、そもそも探検家組合って……何?」
その言葉に全員が書類に向かっていた手を止めた。カミーユは目を細めて封筒の中から紙を取り出す。
「多分、これが探検家組合に関する基本情報です」
彼女は声に出して読み上げる。
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探検家組合とは500年以上の歴史を持つ由緒ある組織であり、皇国内の探検家や冒険者を支援するために設立されたものです。組合に所属することで、皇国全土の地図、安全なルート、危険地の最新情報などを得ることができます。また、治療師・鍛冶屋・宿屋などと連携しており、組合員は割引や優先サービスを受けることが可能です。 一部の地域では、探検には組合員であることが必須条件となります。
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読み終えたカミーユが顔を上げると、皆が静かにうなずいていた。 書類の束はまだ分厚いままだったが、その意味が少しずつ見えてきたようだった。




