表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/19

9話 大魔将討伐の準備開始

「巨大ダンジョンの核となる魔石を採取しに、魔王城へと向かいます」


「「は?」」


 ルートの突拍子もない発言に、私とマルは思わず拍子抜けした声を発した。


「ルート……魔王城で何するの?」


「魔王城に向かい魔王を倒します」


 魔王。地球生まれの私でもその存在は知っている。


 魔王はその名の通り「魔物を従える王」であり、実力は最強の筈。

 そんじょそこらの冒険者が立ち向かおうとしてもてんで歯が立たず、あっという間に灰燼に帰すだろう。


 ……よくよく考えてみれば、ルートはこの星を創造した創造者を捕縛していたのを思い出した。彼なら魔王討伐も余裕なのだろう。


「あの……本当にこれから魔王を倒しに行くの?」

「冗談ですよ」

「あぁ、だよね……流石に魔王倒すとか……」

「この世界のパワーバランスを下手に崩したら問題が発生するので……」


 この世界のパワーバランスを崩せる事前提で話が進んでいる。


「それと、すぐにでも巨大ダンジョンの作成に取り掛かりたいので……今回は魔王に従える大魔将一体のみで我慢しましょう」


(創造者を捕獲できる悪魔なら、魔王の命運も簡単に握れるんだろうな……)


「マル……大魔将って強い?」

「ものすごく強いよ! そんなお気軽に倒せる相手じゃないって! 倒せたらとっくに僕が倒してるってば!」


 私の問いかけにマルは全力で答える。


「……ん? 倒せたらとっくに倒してる?」

「うん! 魔王も天使や悪魔にちょっかいかけるからね! あの魔王、最近は地獄を配下に置こうと躍起になってるんだよ!」

「魔王も!?」


(……って、よく考えたら魔神の力を人間が手にしてたんだった。人間への対抗策として魔王側も魔神に手を出すのは当たり前だよね)


 人間だけでなく魔物からも……どうやらこの地上に安息の地は存在しないようだ。


「マル様の言う通りです。現にこの間、私の作成した街に魔王軍の群れが攻めてきましたから」

「魔王軍ここに来たの!?」

「大魔将率いる魔王軍です。彼らは魔王の配下になれとしつこかったので、その場で消し飛ばしました」

「「消し飛ばしたの!?」」


 ルートの返事に私とマルは声を合わせて驚く。


「ど、どうやって倒したの……?」

「魔法でコチョコチョと」


 そのコチョコチョの部分を詳しく教えてほしい。


「まあとりあえず、ルートさえいれば魔王退治も何とかなりそうかな……じゃあ早速、その大魔将とかいう奴を倒しに行こうよ」

「分かりました。では早速、準備をしに行きましょう。失礼します」


 ルートは私とマルのそばに近付き、転移魔法を発動して城から街へと一瞬で移動した。


「おおっ!? 早い!」


 ルートの転移魔法に、マルは分かりやすく驚く。


「今回は事前に断り入れるとか、ルートやるじゃん」

「恐れ入ります。日々の目覚ましい成長に己自身も驚かされる毎日です」

「自己肯定感高いね〜」


 私はルートと冗談を言い合いながら、視界に映る巨大な建物を見つめた。


「あ、ここって……」


 私達が来たのは、私が寝泊まりすると勘違いしていた大きな屋敷の真ん前だった。


 手入れが行き届いた庭には、見たことのない不思議な植物が生い茂る。

 そんな綺麗な庭の中を、陶器製の綺麗なゴーレムがハサミなどの園芸道具を手に歩き回っている。


「かっわい〜!」

「えー! 何この綺麗なゴーレム! すっごくオシャレ!」


 私とマルは庭をうろつくゴーレムに目を奪われる。どうやら異世界育ちのマルも、このゴーレムは見たことがないらしい。


「ルートくん! 僕、あの陶器製の綺麗なゴーレム欲しい!」

「分かりました。後で新しい子をお譲りましょう」

「やったー!」


 ルートと取引が成立したマルは、大喜びでジャンプをした。


「ねえルート、このお屋敷には何があるの?」

「この屋敷の先には、私が作成したダンジョン「ゴーレム工場」があります」

「えっ!? ダンジョン!? ルートくん今ダンジョンって言った!?」

「ゴーレム工場……!」


 どうやらこの先に、ルートの作成したダンジョンがあるらしい。


(やけにゴーレムの量が多いなと思ってたけど……そのゴーレム工場とかいうダンジョンでゴーレムを量産してたんだ)


 辺りをうろつくゴーレムの謎が解けた。


「ではご案内します」


 私とマルは、ルートに案内されて屋敷の奥へと向かった。



 屋敷の中は巨大な工場だった。



「ファンタジーな工場じゃん……!」

「僕、こんな大規模な機械見たことないよ!」


 途方もない広大な部屋内に、地球の工場とはまた違う、妙に丸みを帯びた謎の機械が並んでいる。

 よく見ると、壁や天井にも機械が生えせており、重力を無視して歩く不思議なゴーレムが天井の機械を操作しているのが見えた。


「広過ぎでしょ……」

「ダンジョン内は異空間です」


 そんなゴーレム工場のダンジョン内には、様々な種類のゴーレムが歩き回っている。


 土、石が素材のゴーレム、植物と共生しているゴーレム、金属製のカッコいいゴーレム、奥の方には氷で作成されたゴーレムもいる。


「おぉ〜! この規模のダンジョンは凄いね! この星生まれの僕でもあまり見たことないよ!」

「頑張って作成しました。あと、このダンジョンでは、外から持ち帰った素材を使用してゴーレムの作成ができます」

「えっ!? 素材から魔物作成できるダンジョンなの!?」


 魔物作成はとんでもない技術なのか、マルが声を大にして驚いている。


「ジギさん、マル様、あちらをご覧ください」


 ルートが手で指し示した先を見ると、奥にある巨大なテーブルの上に、ドラゴンの素材らしき物と、ツノや革の素材があるのが確認できた。


「あれは……ドラゴンとミノタウロスの素材かな?」

「その通り」

「……あっ! もしかして、これからあの素材でゴーレム作るの!?」


 自ら入手した素材で魔物作成、テンションが上がらないわけがない。


「つきましては、ジギさんにブルードラゴンの素材の使用許可を頂きたく……」

「勿論いいよ! ドラゴンの素材ならきっといいゴーレムが出来るだろうし! 使っちゃって!」

「ありがとうございます。では……」


 ルートがその辺にいるゴーレムに魔力で指示を出すと、ゴーレムの群れは見事な隊列を組み、巨大テーブルに向かって速やかに歩き出した。


 巨大テーブルに到着したゴーレム達は、テーブルの上に置かれていたドラゴンの素材を持ち上げて運ぶ。

 運んだ先にあったのは、これまた巨大な謎の機械。ゴーレムは扉を開け、そこにドラゴンの素材やその他諸々の素材を入れて扉を閉めた。


 そして、機材が並ぶエリアにいた金ピカの丸いゴーレムが機械を操作すると、謎の機械は作動し始めた。

 洗濯機の稼働音に似た不思議な音が鳴り響き、扉の窓から眩しい光が漏れる。


 やがて機械が停止し、大きな扉から一体の巨大ゴーレムが姿を現した。


「ブルードラゴンナイトゴーレムが完成しました」

「デカっ!?」


 人間より遥かに巨大な、ドラゴンの要素を持つ青いナイトが誕生した。見事なツノが兜を飾り、鱗の素材が光に反射して輝いている。全体的にシュッとしていてとても綺麗だ。


「綺麗なゴーレム! かっこいい!」

「凄いよ! こんな短時間でこんな強力な魔物を生み出せるなんて!」


 私とマルは遠く人間見えるゴーレムに目を輝かせる。マルは特に驚いていた。


「上質な素材のお陰で、素晴らしいゴーレムが完成しました」


 ルートはブルードラゴンナイトゴーレムを眺めて満足そうに頷く。


 そんなナイトゴーレムは、何もない広い場所で武器を取り出し振り回して動作確認をしている。

 見事な剣捌きをお披露目した後、武器を納めたナイトゴーレムはその場で変形し、そこそこ大きなドラゴンになった。

 ドラゴンゴーレムは翼を広げ、ダンジョン内を滑空していく。一部のゴーレムが滑空するドラゴンを見上げている。


「おぉ〜!」

「すっごいねぇ〜!」


 私もマルもテンションが上がる。


「お次はミノタウロスの素材を入れていきます」

「この素材も凄そう!」


 私達が見守る中、ゴーレムは機械にミノタウロスの素材を全て放り込んだ。さらに頑丈そうな金属や綺麗な宝石も放り込み、機械を作動させた。


 しばらくして機械が停止し、扉から巨大なミノタウロスゴーレムが姿を現した。


 ナイトゴーレムよりも大きな身体を動かし、これまた巨大なバトルアックスを手に広場へとノッシノッシと歩いていく。


「サイッコーだね! あんな巨大なゴーレムがいれば、大魔将もきっと倒せるよ!」


 ミノタウロスが巨大なバトルアックスを振り回す様を見ながら、マルは飛び跳ねながら大喜びする。


「今回は彼等も連れて、大魔将の一人であるビーハイブを倒しに向かいましょう」

「蜂の巣……?」


 ルートの言葉に、マルは不思議そうな顔をして首を傾げる。どうやらビーハイブという言葉が変に翻訳されたらしい。


「これからビーハイブのいる荒地へと向かうのですが……ジギさん、悪魔狩りから奪い取ったチャームを私に預けていただけますか?」

「いいよ〜」


 私は大事に持っていた赤と黒のチャームを渡した。


「今のままだと元の姿に戻れなさそうだったから、手元に置いて力を与えてたんだよ」

「ジギさんありがとうございます。後はこちらで力を与えて復元しましょう」

「うん分かった。ルート、お願いね」


 私の言葉にルートは静かに頷き、チャームを豪華な箱の中に収めた。

 箱からは凄まじい力を感じる、これならチャームの中の悪魔はすぐにでも復活するだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ