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4話 VS悪魔狩り

 異様に広がった大広間の異空間にて。


 私は悪魔狩りを前に戦闘体勢に入る。身体のあちこちに蝙蝠こうもりの翼を出し、目の前の獲物を睨みつける。


「来なよ悪ガキ共、此処に来た事を後悔させてあげる」


 私がそう宣言すると、目の前の悪魔狩り三名は各々で違う反応を見せた。


「悪魔如きが俺達を後悔させるだと……? ハッ、そりゃ楽しみだな!」


 剣を構えた粗暴な男性は、私を馬鹿にするかのように鼻で笑う。


「へぇ〜、それは楽しみだね。その余裕、いつまで持つかな?」


 杖を構えた魔法使いらしき男性は、余裕の笑みで私を軽くあしらう。


「……お前達を相手に、計画なぞ必要ない」


 銃を構えた冷静な男は、眉一つ動かさず吐き捨てるように台詞を放った。



「すごく余裕かましてるけどさ……悪魔の君はもう魔法使えないよ」

「へぇ……あの煙ってそんな効果があったんだ」


 碌に魔法使わない私には関係ないけど。


「相手は凄い悪魔だろうけど、後は余裕でしょ。こっちは強力な武器のお陰で魔法使い放題だし、悪魔の力もあるし……ねっ!」


 余裕そうな魔法使いは、手に持っていた大きな杖の先を床に強く打ち付けた。

 すると、私の足元の床が歪んで大きな鎖に変わり、私の足を雁字搦がんじがらめにしてしまった。


「!」

「あははいい気味! そーれっ!」


 魔法使いは大笑いし、私の足を封じた鎖の端を引き寄せて掴んだ。そして、人とは思えない腕力で鎖を力いっぱい引き寄せてきた。

 私の身体は鎖に引っ張られ、魔法使いの元へと飛んでいく。


「よっしゃ!」

「今だっ!」


 残る二人の悪魔狩りは、これを好機として私に向かって各々の武器を構えて攻撃を仕掛けてくる。


 実に幼稚な攻撃だ。


「相手を碌に知らずににこんな作戦実行するなんて……」

「は?」


 私は鎖に捕まったまま、空中で幾つもの翼を纏い身体を丸め、さながら巨大なプロペラが二つ重なったような形状に変化した。


「はぁ!?」


 二対の巨大なプロペラ状の私は、さながらヨーヨーのように回転しながら鎖を巻き込み、鎖を持つ魔法使いの手元まで迫った。


「ギャッ!?」

「逃げろっ!」


 剣と銃の悪魔狩りは慌てて逃げ出し、魔法使いも急いで鎖を消してその場から回避しようと動く。

 だが、魔法使いは手遅れだった。魔法使いはプロペラの回転を避けきれず、そのまま鋭い翼の螺旋に飲み込まれてしまった。


「うわあっ!? ……あ、あれ?」


 プロペラの攻撃をモロに受けたはずの魔法使いは無傷だった。


 当たり前だが、私は人間は攻撃するつもりはない。

 私は彼の身体を傷付けずに上手くすり抜け、去り際に元の姿に戻りつつ魔法使いから杖を奪い取った。私は杖を手に悪魔狩りから距離を取る。

 

「あっ! 杖が……! 何のつもり!?」

「これ、なーんだ」


 武器を取られて動揺する魔法使いに、私は杖と同時に手に入れたある物体を魔法使いに見せた。


「えっ……ああっ!? 僕のチャーム!」


 姿を変えて魔法使いに急接近した際、私は杖だけでなく魔法使いが身に付けていた謎のアクセサリーも奪い取っていた。

 相手がチャームと呼んだこのアクセサリーからは、悪魔に似た強力な力のようなものを感じた。


「このアクセサリーの中に、悪魔が閉じ込められてるみたいだね」

「だとしても、悪魔であるお前達には使えない物だ」

「へぇ、こうやって閉じ込めた悪魔から力を無理矢理取ってたんだ」


 私は魔法使いから奪った水色のチャームを眺める。見た目は綺麗だが、実態はあまりにも恐ろしい。


「しかもこの杖の素材に天使の羽根使ってるみたいだし……かなりえげつないことするね」

「僕らが狩猟した天使と死神を素材に使った武器だよ! 返して!」


 まさかの原材料。


「くっ……この悪魔は俺達が今まで戦ったどの悪魔よりも強いみたいだ、油断できない……アレを使うぞ!」

「分かってるよ! それっ!」


 銃使いに指示された魔法使いは、鞄から大量の宝石を取り出すと、その辺に宝石をばら撒いた。

 地面に転がった宝石から煙が吹き出す。宝石は煙を纏いながら大きくなり、やがて魔物のような形状に姿を変えた。


 ゴブリンのような化け物、ツノが生えた巨人のような化け物、大きな狼のような化け物など、多種多様な化け物の集団が身構えながら私を取り囲む。


「お前達! あの悪魔をやっつけて!」


 魔法使いが指示を出すと、化け物の群れは一斉に私に突撃してきた。ある者は武器を手に、ある者は鋭い爪や牙を用いて、私に全力で襲いかかってくる。


「そらっ!」


 私は手足から翼を生やし、飛び掛かってきた魔物共を手足の翼で切りつけた。その場で何度も回転して翼に巻き込み、魔物共を切り刻む。

 真っ二つにされた魔物は煙となって姿を消していく。相手は想像以上に弱く脆かった。


「それっ!」


 私はその場で飛び上がり両腕を構え、両腕の翼を大きくして鋭くする。

 そして背中の翼をプロペラ状にして回転させると、魔物を目掛けて高速で突撃した。


 魔物は腕に生える巨大な翼に切られてあっという間に消えていく。私がこんな雑に戦っても、相手は手も足も出せないらしい。

 魔物はあっという間に数を減らし、残りわずかとなった。


「こいつら、大した事ないなぁ……」


 私が停止したところで、粗暴な剣士が動き出した。明らかに人を超えた走りで私に急接近し、大きな剣を振り翳す。


「おらっ!」


 剣士は私の頭を目掛け、全力で剣を振り下ろした。鋭い一撃が私の眼前に迫る。


 私はその剣を左腕の翼で受け流した。剣は翼に受け流されて滑り、私の真横に落ちた。


「ちゃんと狙ったら?」

「は?」


 私はその場で回転蹴りを放った。右足で相手の剣を蹴り割り、更に回転の勢いを増して左足の踵で落ちた剣先を蹴り飛ばした。


「!?」


 私が蹴飛ばした剣先は、銃使いが構えていた銃の上半分を切り落とした。


「なっ……!?」

「死神の刃で作られた剣なら、悪魔の素材で作成された銃も切り落とせるでしょ」

「テメェ……!」


 剣士は顔を真っ赤にして剣をかなぐり捨て、新しい剣をどこからともなく取り出して私に剣を振るう。

 剣は私の身体に見事命中。私の胴体を的確に捉えた剣身にヒビが入り、音を立てて崩れ落ちてしまった。


「あ……?」

「学習しないねぇ……」


 私は剣士に、先程剣士から奪い取った赤いチャームを見せびらかす。


「あっ!? 俺のチャーム! 返せっ!」


 剣士は怒りと焦りから私の持つチャームを奪い取ろうと手を伸ばす。しかし、力を持たない人間はもはや私の足元にも及ばない。

 私は剣士から離れ、別の銃に持ち替えていた銃使いに向かって飛んでいく。


「止まれっ!」


 銃使いは目にも留まらぬ見事な早撃ちで私に銃弾の雨を降らせる。

 弾の一つ一つに水晶の魔法が込められているようで、命中した部分は大きな水晶に覆われてしまうだろう。


「うわっ!?」


 私は咄嗟に翼で弾丸を弾く。弾かれ床に落ちた弾丸は水晶の壁を作り出し、私の周りを半透明の分厚い水晶の壁で覆っていく。

 凄まじい弾丸の雨により次第に身動きが取れなくなり、やがて私の周りは水晶で覆われてしまった。


「へっ! ザマァみやがれ! 散々手こずらせやがって!」

「ようやく止まった……今回は流石に死ぬかと思った……」


 剣士は新しい剣を取り出しながら吠え、魔法使いは予備らしき小さな杖を手にしながら床に力なく座り込んだ。


「相手が油断してくれたお陰で助かった。さて、急いでチャームに封印しなくては……」


 銃使いは色の付いてないチャームを取り出して大きな水晶に近付いていく。



 水晶の中に私の姿は無かった。



「君達が傲慢で本当に助かったよ」


「なっ……!?」


 私はシャンデリアの上から悪魔狩りの三人を見下ろす。私は手から水色と赤色、そして黒色のチャームを覗かせた。

 黒のチャームは銃使いが所持していたチャームだ。これで、三人が持っていた力は全て奪い取れた。


「あっ……! いつの間に……!?」

「水晶に残した魔力を私だと勘違いして油断するなんて……よくそれで今まで悪魔狩りできたよね」


 私はシャンデリアから床に着地し、三人の前に躍り出る。


「マズいな……皆、急いでこの場から逃げるぞ」

「はぁ!? 悪魔にチャーム取られたままだってのにそのまま逃げるのかよ!?」

「力より命が最優先でしょ! ほら、逃げるよ!」


 剣士が悔しそうに吠える中、魔法使いは鞄の中を必死に探って何かを取り出そうとする。


「あ、あれ……? 転移水晶が無い!」

「転移水晶ってこれ?」


 私はポケットから綺麗な水晶の欠片を取り出した。中に水が流れているような不思議で綺麗な石だ。


「何でお前が!?」

「水晶に気を取られてる隙に、鞄から色々と貰っちゃった」

「はぁ!? 何してくれてんの!?」


 三人が大きな水晶に目を奪われているその隙に、私は気配を完全に消して三人の荷物を全て取り出していたのだった。


「本来はこんなことしないんだけど……君達の素行があまりにも最悪だったからね。これ以上変なことをされないように、持ち物は没収させておいてもらったよ」

「どうしよう! この場にまだ魔法封じの紫煙が残ってるから、この杖じゃ碌な魔法が使えないよ! 道具が無いから帰還も、紫煙の解除もできない! 僕達このままじゃ帰れないよ!」

「くっ……!」


 悪魔の力を使えるチャームを取られた上に、荷物まで取られたのは流石に不味かったらしい。

 三人は私を前に焦り、何とかこの場を乗り切ろうと思案しているようだ。


 でも、そんなことは絶対にさせない。


「あ、悪魔……」

「ああ、大丈夫大丈夫。私は君達に用は無いから」

「そ、そうか……なら……」

「私は君達に特に恨みはないけど……この悪魔は、三人に言いたい事が色々とありそうだよね」


 私はニヤリと笑い、三人に水色のチャームを見せびらかした。

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