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30話 第一試練結果発表

 私達の発言により皆が押し黙ったところで、森を模したスタジオ内にMCの音声が響き渡った。


『第一試練の結果を発表します! 合格者は七名! そして残った治療師ユースさんは、残念ながらここで敗退となります!』


「くそっ……」


 森のセットの中で私のアナウンスを聞いた挑戦者は、暗い顔をして押し黙ったり、悔しがったりと、様々な反応を見せた。


『えー、脱落者が出たので、脱落者のユースさんに罰ゲームが発生します!』


「!?」


 私の罰ゲーム発言に、挑戦者達の一部は目を見開く。


「そうだった……!」


「あれ? 一部はすっごく驚いてるみたいだけど……僕最初に言ったよね? ゲームに失敗した挑戦者には罰を与えるって」


「と、言うわけで……皆様! こちらをご覧ください!」


 私が手で挑戦者達の前を指し示すと、挑戦者達の前に大きなモニターが降りてきた。

 モニターに電源が入ると、画面には先程敗退となった治療師のユースが映し出された。


「ユース!」


 挑戦者達は一斉にモニターに視線を向ける。ユースは薄暗いダンジョン内の片隅で、不安そうに辺りを見回している。

 私は挑戦者達を気にせず話を続ける。


「因みに、モニターに映し出された治療師ユースさんは、わざわざ墓地に出向き、魂を容赦なく回収して回った恐ろしい違反者でございます!」


「うわぁ! なんて恐ろしい人間なんだ!」


「魔神装備を修復する為だけに、何の罪のない魂をさらってはビンに封じ込め、装備の修復素材として消費したそうです!」


「なんてことを……! じゃあ、彼には魂から叫び出したくなるほどの罰ゲームを発動させないとね!」

「と、言うわけで……スタッフさん、よろしくお願いします!」


 私がスタッフに指示を出すと、モニターにこの星の言語で『罰ゲーム発動!』と表示され、治療師のいるダンジョンに凄まじい轟音が響き渡った。


『うわっ!? 何!?』


 モニターの向こうの治療師が驚く中、木造ダンジョン内部の廊下に変化が現れた。


『何何!? 何やってんの!?』


 木の床のあちこちが急に盛り上がる。どうやら床下にいる何かが床を蹴破って上へと飛び出そうとしているようだ。


 やがて木の床は派手に破壊され、木材をぶちまけて何者かが地上に現れた。



 『ケタケタ』と奇妙な音を鳴らしながら現れたのは、薄汚いスケルトンだった。



 しかもあちこちの床から幾つも這い出してくる。


『ス、スケルトンくらいなら……!』


 スケルトン程度ならどうにでもなると思ったのか、治療師は杖を手に近くのスケルトンに殴りかかった。


『おわあっ!?』


 しかし、治療師の攻撃はスケルトンの身体を貫通してしまった。


「残念! その魔物はファントムスケルトンという、人の恨みが集まり生まれた実態の無いスケルトンです! 特殊な道具が無ければ攻撃は一切届きません!」

「まさかそんなことも知らずに攻撃したのぉ? あの人、本当に冒険者なのかなぁ?」


 私とマルがモニターの映像に茶々を入れている間に、攻撃されたファントムスケルトンが治療師に向かって細い手を勢いよく振り下げて反撃をした。


『うぐっ!?』


 ファントムスケルトンの細く鋭い指先は、治療師の厚手の衣装を容易に引きちぎり、治療師の身体に綺麗な切り傷を刻みつけた。


『う、嘘でしょ……!?』


 モニターの向こうにいる治療師ユースは、弱小と馬鹿にしていたスケルトンに呆気なく攻撃を喰らってしまった。

 何とか避けたにも関わらず、治療師は腕に傷を負った。もしまともに喰らっていたら、彼の腕はどうなっていたのだろうか。


『くっ! ここは一旦……っ!?』


 治療師が冷静にファントムスケルトンから距離を取ろうとしたが、目の前にいたファントムスケルトンが突然、凄まじい速度で駆けて治療師の眼前で停止した。


『なっ……!?』


 治療師が目の前の出来事を理解するより前に、ファントムスケルトンの素早い腕振り攻撃が炸裂。治療師の胸元は最も簡単に引き裂かれた。


『うぐっ……! な、なんでこんな……!?』


 暗くてよく見えないが、治療師は相当酷い深傷を負ってしまったようだ。


『……っ!』


 まともな武器を持たない上に、予想以上に酷い反撃を貰って動揺したのだろうか。治療師は唐突にファントムスケルトンに背を向けて全力逃走を始めた。


 しかし、ファントムスケルトンは道ゆく先々で次から次へと床から飛び出していく。飛び出したファントムスケルトンはゆっくりと歩いて治療師を追いかけていく。


『ぐっ……! このっ! このおっ!』


 治療師は傷でまともに動けないものの、それでも杖を振り回しながら逃げ回る。しかし相手に攻撃は一切通じない。そんなことをしている間も、ファントムスケルトンの数は順調に増えていく。


『うわあっ!?』


 だが、全力疾走していた治療師は途中で転倒。


『うぐっ……! な、何だ……!?』


 どうやら床から飛び出したスケルトンの腕に掴まれ、動けなくなってしまったようだ。


『くそっ! 離せっ!』


 治療師は足首を掴んでくる華奢な腕を必死に離そうとするが、スケルトンの腕は全く外れる様子がない。


『離せ! 離せって!』


 そんなことをしている間に、治療師の元におびただしい量のファントムスケルトンが迫る。


 ファントムスケルトンはあっという間に治療師を取り囲み、治療師に向かって両手を振り下ろした。



『うわあぁぁぁぁぁああああああ!!』



 治療師の叫びを最後に、モニターはは砂嵐に切り替わった。

 治療師が攻撃を喰らう瞬間は映らなかったが、恐らくモニターの向こうは凄惨な現場が広がっていたことだろう。


「ユース!」


 弓使いは慌ててモニターに駆け寄るが、モニターは砂嵐以外に何も映さない。




 一方、舞台裏では……




「此処から出してよっ!」


 現場から回収され、小さな牢屋に入れられた治療師のユースは、悪魔達に運ばれて敗者の部屋へと運ばれていた。


「僕の傷を治したと思ったら、後で本格的に罰を受けさせるって……」


 治療師ユースは一旦部屋に放置し、後から来た敗者もまとめて地獄に送り、罪に応じた罰を受けることになっている。


「ユース様、お疲れ様でした」


 そんな治療師ユースが収められた檻の側にはルートの姿もあった。彼は相変わらず表情一つ変えず、涼しい顔でユースに言葉を述べる。


「罰が終われば再び地上へと戻されますから、暫しの辛抱です」

「罰って……お前達悪魔の考える規則に違反したから、その規則に従って罰を受けるって事だよね」

「まあ簡単に言えばそうなりますね。ですがご安心を、ユース様はまだ生存していますから、罰を受けた後は生きて地上に帰還できます」


 ルートはそう告げるも、治療師ユースの表情は晴れない。


「……魔力無しでどう生活しろっていうのかな」

「ユース様、ご心配なく。例え魔力が無くなろうとも、何不自由なく生きていけるようサポートいたします」

「……」

「本当です。我々は人間憎しでこの企画を実行に移したわけではございませんから」


 そんな会話をしている間に、敗者の部屋の前へと到着した。

 ルートは檻を運ぶ悪魔に何か指示を出してから治療師ユースに向き直り、懐から一封の封筒を取り出した。


「ユース様、こちらの手紙をお受け取りください」

「?」


 ユースは差し出された封筒を素直に受け取る。


「大したものではございません。部屋に移動してからご開封を」

「……?」


 ルートは治療師ユースにそう一言告げると、この場から音もなく立ち去った。


 ルートが立ち去った後、治療師ユースは何の家具も置かれていない敗者の部屋に檻ごと放置された。


「何だったんだあの悪魔……」


 治療師ユースはぶつぶつと文句を垂れながらも封筒を開けて中に折りたたまれていた手紙を広げた。


 手紙には丁寧な筆跡で以下のように綴られていた。



[私は四十八次元から来ました。]



「四十八次元!?」


 予想を遥かに超えた文頭に、治療師ユースは思わず声を大にして叫んだのだった。




 その頃、治療師ユースが消えた森のスタジオ内では……



「ば、罰ゲームって……! こんなの、もはや処刑だろ……!」

「ユースは生きてるの!? ねぇ!?」

「いや、あの様子ではもう……」


 モニターの向こうの凄惨な様子を目の当たりにした挑戦者達は、一様に顔を青くしている。


「…………」


 特に、ゲームを辞退するようユースに勧めたアッシュは相当後悔しているのか、口を固く閉ざして俯いている。


 しかし、アッシュの行為を咎める者は誰一人としていない。

 下手に騒げば槍玉に挙げられ、次の犠牲者になるかもしれないからだ。


「さて、罰ゲームも済んだ事ですし、次のゲームに進みましょう! ……と言っても、既に始まってるんですけどね」


「……は?」


 私の発言に顔を上げる挑戦者達。それと同時に、挑戦者達の立つ床が一人でに動き出した。


 挑戦者達は棒立ちのまま、私達から少しずつ離れていく。第二試練開始の合図だ。

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