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28話 第一試練『狙って! ターゲットクラッシャー』

「ではとりあえず、もっと広い施設をご用意しましょう! 制限時間を追加し、広さはダンジョンサイズ、そして的の数は四十!」


 木造建ての異空間内にて。冒険者の違反者八名の前で私がルールの追加をアナウンスすると、私達のいる木造建ての室内は一瞬で広がりだした。


 天上が上がり、壁は一瞬で遠のいた。照明はまばらになり、あんなに明るかった室内は薄暗く不気味な世界へと変貌を遂げた。まるでホラーゲームの舞台のようだ。


「果てしなく広がる施設内をくまなく探して、的を五つ破壊して出口に出ればゲームクリアです!」


「まだ簡単な範囲だけど……ま、いっか! 皆んな! 的は色んな場所に隠れてるから、しっかり探して、しっかり狙って破壊してってねぇ〜!」


「それでは始めましょう! 準備は宜しいでしょうか!? よーい……開始!」


 私が高らかに開始の合図を出すと、違反者の周りを覆っていた透明な壁が全て消え、私達はルートの魔法により現場から姿を消した。

 現場には違反者八名が残されたのだった。




『さあ、第一試練がついに始まりました!』


 私達が飛んだ先は華やかな撮影スタジオ。悪魔で埋め尽くされた広い観客席、中央には違反者を映した巨大なモニターが配置されている。


『さながら円形闘技場のようなスタジオから、違反者もとい挑戦者の様子を観戦していきます! MCはこの私、死神のバランでお送りしていきます!』


 ルートが他所から連れて来た、真面目そうな見た目をした男性型の死神がノリノリで実況を務める。

 冒険者テストセンターの制服を身につけた彼は、満面の笑みで目の前のモニターの状況を実況を続ける。


『さて今現在、第一試練の現場には気まずい空気が漂っております。仲間の一人が何気なく発した一言のせいでゲームの難易度が上昇してしまったのが原因でしょうか。さて、ここからどう挽回するのでしょう』


 モニターの向こうの挑戦者達は、無言でダンジョンサイズの建物内を歩いている。


『何とか前進している様子ですが、その足取りは非常に重たい。その間も制限時間は刻一刻と迫っております』


 MCバランは状況を実況し、スタジオの観客は熱心にモニターを見つめる。




 一方、ダンジョンサイズの施設内に取り残された違反者の挑戦者達は……


「皆んな、とりあえず二人一組になって別れよう。別々で捜索して的を見つけた方がすぐに終わるだろう」

「そうね。近接武器と遠距離武器を持つ人で組んで回りましょう」


 全員がゆっくり施設内を歩く中、アッシュとミリアはリーダーらしく作戦を投ずる。

 仲間達は無言で作戦に耳を傾けつつ、辺りを見回して目当ての的を探す。


「じゃあ剣を持つ俺と……」

「アッシュ、一つ宜しいか」


 そんな中、剣士が一つの質問を投げかけた。


「何だ」

「発見した的は誰が優先して破壊する? まさか考えもなしに適当に破壊するわけではあるまいな」

「ああ、とりあえずは遠くの的は遠距離武器を持つ者が積極的に……」

「おい」


 アッシュは真面目に質問に答えるが、質問を遮るように声を飛ばす者が。黄色を基調とした衣装を身につけた、弓使いのチャラい男だ。


「こら、アッシュが応答中だ。口を挟むな」

「お前……前から思ってたけどよぉ……」


 剣士が弓使いを制するが、弓使いは口を閉ざす気配はない。弓使いは不機嫌そうに剣士に顔を向けた。


「変なプライドだか何かで意地張って、周りを巻き込むのやめろよ。前々からそれで割を食ってんのは俺達なんだよ」


 弓使いは若干キレ気味に剣士に詰め寄る。対する剣士は何食わぬ顔で弓使いに向き合った。


「これは意地ではない。貴族として当然の……」

「何が貴族だ! さっきの「誰が先に的を破壊するか」って質問だって、貴族とか偉い奴優先で的を破壊しないかって提案するつもりだったんだろ!?」

「当然だ。貴族と庶民とでは知識も経験も何もかもが段違いだ。生命の価値が高い方を優先するのは当然のことだろう」

「何が当然だよ! じゃあなんだ!? 俺達庶民は貴族を優先して動けってのか!?」

「当たり前だ。そもそも、お前は先導者無しで庶民がまともに動くとでも思ったか?」

「んだと!?」


 弓使いは剣士の胸倉を掴もうとするが、アッシュの介入により強引に止められた。


「よせエレキ! ここで言い争いをしても奴らが喜ぶだけだ!」

「けどよぉアッシュ! そもそもコイツのせいでゲームの難易度上げられてんだぞ! それなのに謝るどころか優先して助けろとか抜かすんだぞ!」

「俺達が何も言わなくても、ゲームの難易度は上げられていただろう。だが確かに、フォレスの傲慢な態度は目に余るものがあるな」


 アッシュは弓使いのエレキから剣士のフォレスに顔を向ける。


「フォレス。君の貴族の称号は、庶民を萎縮させ強引に従わせる為にあるものなのか?」

「なっ……!? いえ、決してそんなことはございません!」


 アッシュが纏う雰囲気が少し変わり、その雰囲気に剣士は突然慌てだし、即座に態度を改めた。


「ならば、身の振り方を今一度考え直せ。そんな傲慢な振る舞いでは、いつか仲間からも、市民からも愛想を尽かされるぞ」

「……分かりました」


 アッシュの言葉に剣士は大人しく引き下がった。弓使いはまだ納得いかない様子だったが、何も言わず剣士から目を逸らした。


「さて……ここはとにかく、奴らの言うゲームをこなすのが先だ。ここで二組に別れよう」


 アッシュとミリアが軽く話し合った結果、アッシュと弓使い、剣士と男性魔法使い、ミリアと治療特化魔法使い女性、男性治療師と攻撃特化魔法使い女性でペアを組むこととなった。


『挑戦者はひと段落ついたのか、ようやく動き出す模様です! しかし、この一連の話し合いで残り時間は結構削れている! 果たしてここから挽回なるか!?』


 二人組に分かれたところで、この現場にMCの声が響き渡った。挑戦者にとってそこそこ意味のある発言は、現場にいる挑戦者達の頭に届く仕組みになっている。


「何だよこの声……」

「どこまでも僕達を馬鹿にする気なんだね……あっ、あれって……」


 男性治療師は声の正体を突き止めようと辺りに視線を向けると、天井に妙な物体を発見した。


「あっ! あの天井のって的じゃねーか!?」

「だが、だいぶ遠いな……じゃあ、あの的を先に発見したユースが破壊してくれ」

「分かった!」

「しっかり狙うんだ」

「分かってるよ」


 治療師のユースは杖に込められた魔力を使い、天井に向かって一筋の魔力弾を放った。だが、使い慣れない杖だったからか、弾は的の中心から逸れてしまった。


「あっ!?」


 魔力弾を喰らった的はヒビが入り、三つに砕けてしまった。的は天井から落下し、治療師の前に転がる。


「おいユース、何してんだ!」

「ごめんごめん。次は中心を……」


『あーっと! 攻撃が的の中心からズレてしまったようです!』


 治療師ユースが的を一つにしようと取り上げたところで、再び死神バレンの実況が頭に響いた。


『的はど真ん中で割らなければ破壊できません! 残念ですが、的は割れたらゼロポイント、つまりポイント無効となってしまいます!』


「何?」


『彼らはベテラン冒険者、これくらいは厳しく審査しなければなりませんからね! これで残る的の数は三十九、この試練では確実に一人は失格となってしまいます!』


「!?」


 そう、的は破壊しなければポイントとして加算されない上に、割れた的はその時点で的としての効果を失ってしまう。


「割った的は駄目になるのかよ!? 聞いてねぇぞ!」


 つまり全員無事に第一試練を突破するには、的の中心を確実にど真ん中で仕留めなければならなかったわけだ。


 そもそも的はダンジョンサイズの施設内にランダムで配置されているので何処にあるかは分からない。


 時間制限もあるので、探索中に時間切れとなり脱落する可能性もある。このゲームでは挑戦者のスムーズな探索力と、慣れない武器を正確に扱う技術が肝となってくるのだ。

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