24話 違反者の取り締まり
ゴーレム育成から次の日……
「人間をボコボコにします」
早朝、巨城の中にて。広々とした豪華絢爛な大広間に集まった私とマルを前に、ルートは唐突に人間ボコボコ宣言をした。
「……ルート、詳しく話をしてくれる?」
「皆様、ついに待ちに待った人間狩りシーズンの到来です」
「そんなシーズン無いよ」
ルートの言わんとしていることは何となく分かる。昨日、ルートが教えてくれた人間への規制融和の件だろう。
「確か、違反した人間は僕ら悪魔でも殴れるようになったんだよねぇ」
「その通りでございますマル様」
可愛らしいフリフリ衣装を着たマルに、ルートは顔を向ける。
「あの地獄の取り決めは、今日の早朝に説明しようとしたのです。しかし、近くに都合良く悪魔狩りの反応があったので……」
「昨日の悪魔狩りはわざと入れたんだね……」
そして私はルートの思惑通りに冒険者をボコボコにした、というわけだ。
「なので、これからは人間に反撃ができるようになりました」
「やった! しかも、こっちから違反者の元に飛んでボコボコにすることもできるんだよね?」
更に、捕まえた違反者の罪に応じて賞金まで送られるらしい。至れり尽くせりである。
しかし、無実の人間への攻撃は前と同様に禁止されているため、勢い余って無関係の人間を攻撃しないよう注意が必要だ。
「さらに、最優先でボコボコにする人間リストが地獄から送られるようになりました。この資料を参考に人間界に殴り込みに行きましょう」
「その資料、もっとしっかりした名前でしょ。ちゃんと名前言ってあげなって」
「指名手配リスト様」
無機物にも敬称をつける悪魔の鏡。
「つまり、これからは違反者相手に好きに暴れられるってことだよね!」
「人間がある程度大人しくなるまで規則は緩いままらしいから、僕達悪魔は冒険者に復讐し放題だよ!」
「やったね!」
「……まあ、冒険者に立ち向かえるほどの力があればの話だけどね」
この世界の悪魔は、冒険者に太刀打ちできるほどの実力を持つ相手は少ないらしい。かなり強いマルですら、捕獲されてしまうのだから油断ならない。
「マナ宝石は基本的に冒険者から逃げる為の道具らしいから、実力が無い悪魔は人間をそそのかして魂奪う感じになるのかな?」
「それでも、力の無い悪魔はリスクを恐れて外には出ないかと。人間を倒しに行ける悪魔はごく僅かでしょう」
「ふーん……じゃあ、他の悪魔と違反者の取り合いになることはあまり無さそうかな?」
とりあえず、人間に対抗できる手段ができて本当に良かった。
「ねえルート! 朝食を食べ終えたら早速、違反者を捕まえに出かけない?」
「いいですね。網とカゴを準備しなければ」
「カブトムシでも取りに行くつもり?」
ルートなら適当な装備でも簡単に人間を捕まえられそうだ。
「とりあえず、本日は外に出て適当に違反者の確保をしましょう」
「楽しそう! じゃあ今すぐ朝食食べて出発しようよ!」
「そうしましょう。では食堂に移動しましょうか」
「はーい! 食堂へ続く扉は……こっちだったかな?」
私はとりあえず移動の為に、近くの豪華な扉に手をかけた。
「待ちなさい。そちらは……」
「えっ?」
ルートは慌てて私を止めるが、時既に遅し。私は目の前の扉を力いっぱいこじ開けてしまった。
開けた先にいたのは、顔も知らない謎の冒険者。それもかなりの量が積まれていた。
「ギャーッ!?!?」
魂の反応が無かった先に突然現れた人間に、私は思わずその場で絶叫してしまった。
「ルート! これ何!?」
「どれも魂が抜けてるみたいだね。もしかして、ルートくんが捕まえたのぉ?」
「はい。昨日、試しに捕獲した違反者です」
「もうこんなに捕まえたの!?」
捕まえたのなら先に報告してほしかった。
「たった十二名です。そこまで驚かなくても……」
「驚くよ! こんな生気のない人間が雑に積まれてたら! しかも目があっちゃったよ! もう!」
「お可哀想に……後で人間から引き抜いた歯を差し上げますから機嫌を直してください」
「私にそんなもの集まる趣味はないよ! そもそもその歯は何かしらの罰で引き抜いたやつでしょ!」
巨城の中は今日も賑やか。
改めて食堂に集まった私達は、三人で仲良く豪華な朝食を堪能した。
「……さて。朝食も食べ終えたことですし、違反者狩りに向かうとしましょう」
「「はーい!」」
これまた広々とした食堂で優雅な朝食を食べ終えた後。ルートの一声に、私達は元気よく返事をする。
「ねえルートくん! 今日は何処に行くのぉ?」
「今回、我々が向かうのは……」
ルートが行き先を告げようとしたその時、外から複数人の人の気配を観察した。
人間は真っ直ぐ巨城に向かって移動してくる。
「ルート、この気配って……」
「冒険者が八名ほど来たようです。しかも全員、悪魔狩りの経験がある違反者です」
「また悪魔狩りが来たの……?」
「懲りないねぇ……」
冒険者は来たが、今の私達は反撃ができる。例え装備が優れていようが、その辺の冒険者を相手に戦いる勝利を掴むのは実に容易だ。
「さて、とりあえずサクッと倒しとく?」
「いえ、彼らは生け捕りにしましょう。違反者を探す手間が省けました」
「手間?」
どうやらルートは、初めから違反者を生け捕りにする算段だったようだ。
「ルート、違反者を捕獲して何するつもり?」
「彼らを利用してバラエティ番組を作成します」
「「バラエティ番組?」」
ルートの突拍子もない提案に、私とマルは口を揃えて声を出す。
「バラエティ番組って……テレビでよくやってるあの?」
「ええ、そのバラエティ番組です。あの違反者達を利用して、ちょっとしたゲームを開催します」




