23話 ゴーレム育成終了、からの……
ルート操るゴーレムの超能力により、私達は草原地帯から溶岩地帯へと移動した。
「すごい力……ゴーレムって超能力とか使えるんだ……」
『この力さえあれば、運搬も魂の迎えも楽勝です』
「自力で運搬するより遥かにいいじゃん……」
瞬間移動さえあれば、冒険者に狙われる心配も格段に減るだろう。
「それにしても……さっきの草原とはだいぶ様子が変わったね」
荒れた岩肌に溶岩が流れている。灼熱地獄よりかは穏やかでだいぶ静かだ。
「で、リリさんのゴーレムはどこにいるの?」
『あちらです』
ルートのゴーレムはその場から少し飛んで視線の誘導をする。
視線の先には、この地帯で掘り出したであろう鉱石を運ぶゴーレムの群れが。
「可愛い〜!」
丸いゴーレムが、重量のありそうな鉱石を荷台に運び込んでいる。そんなゴーレムの群れの中に、妙なゴーレムを一体発見した。
『運搬、運搬、運搬、運搬、運搬、運搬、運搬、運搬、運搬、運搬、運搬、運搬……』
同じ単語をしきりに繰り返し、延々と運ばれてくる鉱石を荷台に積み込んでいくゴーレムが。
「あのゴーレムって……」
『あちらがリリ様の操るゴーレムです』
魂の運搬を目的として作成された死神は自我が薄く、与えられた作業を延々とこなすと聞いたことはある。実際にこの目で見るのは初めてだ。
「リリさんってまさか……ゴーレムに混じってずっとあの作業をしてたの!?」
『その通り。そのお陰か、リリ様の操るゴーレムは腕力がだいぶ上昇しました』
「運搬には適してるだろうけども……」
用途は限られてくるだろうが、それでも力仕事はしっかりこなせそうだ。
『……さて、そろそろ良い頃合いでしょう。一旦ゴーレム育成を中断し、カラオケ本店へと戻りましょうか』
(カラオケってハッキリ言った……)
『「では戻ります。そーれっ』
「合図ダサ」
ルートが謎の掛け声を出した途端、視界が暗転。
気がついたらあっという間にカラオケルームに移動、そして私の身体はゴーレムから元の姿へと戻っていた。
『ジギ様、お帰りなさいませ! お出口はあちらです!』
スタッフゴーレムに出迎えられた私は、そのままカラオケルームの外へと移動した。
「いやぁ〜楽しかった」
「楽しんでいただけて良かった」
外に出た先の廊下でルートと落ち合う。
「以外と難しかったねぇ、ブレットくん」
「俺、歩いてたら突然現れた変なゴーレムに殴られて吹き飛ばされた」
「僕は始まってすぐに、森の中を走ってた大きなゴーレムに丸呑みされちゃった」
ルートの隣で、悪魔のマルと死神のブレットがゴーレム育成の反省会をしていた。
「……もっとゴーレムでいたかった」
しばらくして、死神のリリも後ろ髪を引かれながらもこの場に現れた。
「では改めて……皆様、ゴーレム育成はいかがでしたか?」
「とっても楽しかった!」
「僕も! ゴーレム体験なんで滅多にできないから新鮮で面白かったよ!」
ルートの問いかけに、私とマルは笑顔て答える。
「もっと遊びたかった」
「これは遊びじゃないぞ、リリ。でも、このゴーレムを操作できる技術があれば、初心者死神でも安心して魂の回収ができそうだな」
死神二人の意見は違うものの、ゴーレム育成の技術にはかなり好意的だった。
(それにしても……)
「さっきのゴーレムを操作する力って、既に存在するゴーレムを操ることもできるの?」
「可能です。瞬間移動を使用できるゴーレムを使用すれば……」
「安全に魂の回収ができる!」
ゴーレムを操作する力が魂の回収にも使えるとは。かなり便利だ。
「それにしても、わざわざここまでしないと安全に魂の回収もできないとはな……」
「ブレット様、そう気負わずに」
「別にそこまで気を張ってるわげじゃないけど……」
それを言うなら「そう落ち込まずに」だと思う。
「ご安心を。私は一部の仲間と連携し、魔神装備に代わる新たな装備の開発や、スキルを簡単に着脱できるチャームの開発も進めています」
「装備やチャームを……わざわざ人間用の装備作ってるのか?」
「ええ。魔神装備が廃れれば、天使も悪魔も死神も安心して外を歩けますから」
「あ、そっか。悪魔狩りより効率的に強化したり金銭稼げたりできる道を作るんだな?」
「その通りです」
「それはいいな!」
ルートの説明をすぐに理解したブレットは嬉しそうに頷いた。
「……ですが、仮に装備やスキルを開発したとしても、我々悪魔や死神がこの星で生活するのはとても厳しいものです」
「ルート、何か案はあるの?」
「勿論ございます。それは……」
………
「ええっ!? ついに!?」
「ルート! それホントなの!?」
「へぇ、まさかそんな許可が下りるなんてね……」
「やった」
ルートのとんでもない朗報を聞き終えた私達は声を上げて喜んだ。
大歓喜する私達をよそに、ルートは相変わらず冷静に話を続ける。
「いつか相手と対峙した時、私の話が真実だと分かると思います」
「へぇ、そんな分かりやすいんだぁ」
「ならさ、今からでも……」
「ちょっとごめんよ」
私が試しに遊びに行こうと提案しようとしたその時。この場の誰者でもない声が廊下に響いた。
「……あれ?」
そして、前方の景色がカラオケ屋から一瞬で謎の大部屋に変わる。殺風景で何もないが、地面には悪魔の一部と思われる物体が転がっている。
「あれっ!? ルート!? マル!?」
辺りを見回して声を上げるも、仲間の姿どころは気配すら感じられない。
「ま、まさか……」
どうやら私だけ、何処か別の空間に飛ばされてしまったらしい。
「こんなあっさりと捕まるとはな。強い悪魔を呼び寄せようとした筈だが……」
何処からともなく突然現れ、私に歩み寄って来たのは冒険者らしき男性。姿を現すまで存在を認識できなかった、相手は相当強いようだ。
「……おじさん誰なの?」
「今日からお前の主人となる者だ」
「えっ!? ちょっ!?」
魔神装備に身を包んだ謎の冒険者は鋭く輝く剣を構え、私に向かって全力で突撃してきた。突然の襲撃に私は驚き、慌ててその場から飛び去る。
「逃がさん」
「うわっ!?」
だが、相手も私に負けず劣らずの速度でその場から飛び立ち、空を飛ぶ私の眼前に迫る。
「ちょっと! やめてよ!」
私は必死に声を張り上げるが、相手は止まる気配は一切無い。
無機質な薄暗い室内に、切り刻む音や重い打撃音が無情にも響き渡ったのだった。
一時間後……
「やめてって言ったのに……」
ある程度時間が経過したところで私は攻撃の手を止めた。私の猛攻を受けてボロボロになった冒険者は呆気なく地面に転がった。
「何だったんだろうね、コレ」
「ジギちゃん、せめて相手から情報を取れる程度にボロボロにすれば良かったのに」
「加減というものを知りなさい。全く……」
この場にいつの間にかやって来たマルとルートが、暴れた私に苦言を呈す。いやはや、全くもってその通りである。
「まさか、相手が喋れなくなるまでボコボコにするなんて……」
「ごめん、襲撃なんて心躍るイベントが飛び込んできたからつい……」
私は床に転がる相手を呑気に眺め、マルは呆れた様子で私を見つめていた。
「でもさ、そんなに言うならもっと早く止めてくれても良かったんじゃないの?」
「止めました」
「ルートくんがずーっと止めてたよ! でもジギちゃんは全然止まらなかったんでしょ」
「そうなんだ……」
「なんで他人事なのさ……」
本当に申し訳ない。
「彼は力のある悪魔狩りでしょうね、実力は申し分ない人間でした」
「まあ雑魚だったけどね」
「な、何故……だ……!?」
「ん?」
私達が好き勝手に述べていると、床で伸びていた冒険者は意識を取り戻したのか、顔を私達に向けてボソボソと何やら喋り始めた。
「貴様達、悪魔は……人間を攻撃出来ない筈だ!」
「まあ例外はあるけどねぇ……今回ははっきりした理由があるんだよねぇ」
「理由だとぉ……!?」
叫ぶ冒険者を前に、マルは楽しそうに答える。
「今までは、ルール違反をした人間に罰則を科するまで時間が掛かり、かつ魔神装備で身を包んだ冒険者を成敗をできるほどの強い悪魔は少なかったそうです」
ルートは冒険者に顔を向けて解説を続ける。
「しかし、魔神装備の影響で違反者が大幅に増えたので、身勝手な動機で悪魔を討伐した者は問答無用で討伐できるよう調整されたのです」
「何だと……?」
「そして外から来た我々悪魔も、あの世で指名手配された人間を討伐できる権利を得られたのですよ」
権利はそれだけに留まらない。
「最低でも魔神装備を着用している方でも、悪魔は対象をボコボコに殴れるようになったのです」
「!?」
「おじさんは魔神装備を着てたし、私を捕まえようとしてたからね。完全にアウトってわけ」
ついに我々悪魔も人間に対抗できるように
なった。




